「20兆円規模の財政出動」を行い、それを呼び水にして民間需要を拡大させるべき
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年9月22日 18時5分
ジャーナリストの須田慎一郎が9月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の日本の経済政策について解説した。
「消費税増税」を口にした途端に消費は冷え込む
飯田)日本の経済政策について、メールやX(旧ツイッター)で、さまざまな意見をいただいています。「大企業を中心とした日本経団連という組織がありますが、その会長が『若者の将来の安定した暮らしのために、消費税を増税するべきだ』ということを言っています。この人たちは利益配分せずに、また取ろうとしている」というような指摘をされている方もいました。
須田)「何を考えているのか」と思いますね。経済をわかっていないのではないでしょうか。たとえ実行に移さなくても、いま「消費税増税を」などと言い出した途端に、消費は冷え込むのです。
飯田)「消費税増税」を口にした途端に。
須田)消費税が持つ意味は、言ってみれば買い物する際、罰金のように取られてしまうものですから、やはり消費を抑制してしまうのです。
飯田)消費を抑制してしまう。
コロナ明けでようやく総需要と総供給が同じレベルに ~景気を回復軌道に乗せるために秋の臨時国会でしっかりとした補正予算を組む
須田)「いま、何をやらなくてはならないのか」を考えると、ようやく日本経済の総需要と総供給が、ほぼ同じぐらいのレベルになってきたと想定されています。
飯田)総需要と総供給がほぼ同じレベルに。
須田)年初は「10兆円くらい需要が少ない」というギャップがあったのですが、コロナ明けで埋まってきた。ここで本格的に景気回復の軌道に乗せるためには、民間需要が弱ければ、公的セクターの需要で埋めていく。そのために何をすべきかと言うと、やはり秋の臨時国会において、しっかりとした補正予算を組んでいくことです。
真水ベースで20兆円規模の財政出動を行い、それを呼び水にして民間需要を拡大させなければならない
須田)世耕参院幹事長が言ったように、最低でも真水ベースで15兆円、場合によっては20兆円くらいの規模感で財政出動を行い、公的セクターが後押しをしていく。
飯田)財政出動をして。
須田)それを呼び水として、民間需要を拡大しなくてはならないのに、冷や水を掛けるようなことを言ってどうするのでしょうか。
異次元の少子化対策の財源確保は「安定的な財源」から ~「消費税増税か」という空気感が景気の足を引っ張っていることを理解するべき
飯田)4~6月期の国内総生産(GDP)が成長したと言われますが、よく見ると輸出入の差し引きでプラスに転じているだけで、むしろ国内の需要は少し冷え込んでいるのではないかという数字が出ています。
須田)年末に向けて、来年度予算、異次元の少子化対策をめぐる3.5兆円の財源をどこから確保するのかが議論になっていますけれど、厚生労働大臣が「安定的な財源」などと、変な匂わせをしているのです。
飯田)そうですね。
須田)そこに、先ほどあった経団連会長の発言を重ね合わせてみると、やはり増税、しかも消費税増税にもっていくのかという空気感が出てしまう。「この空気感そのものが景気の足を引っ張っている」ということを、よく理解するべきだと思います。
飯田)景気の動向に左右されない安定財源と言えば、消費税の暗喩のようなものですからね。
大企業は価値に見合った価格を設定して、あるべき部品単価や手間賃・工賃を払うべき
須田)消費税を引き上げることによって、法人税を下げてきたわけではないですか。中小零細企業の経営の足を引っ張ることになるので、私は法人税を上げることに必ずしも賛成ではありません。
飯田)法人税を上げることが。
須田)「大企業に対する法人税の引き上げ」と言いたいのですが、そうではなく、「あなたが利益を上げて、しっかり下請け企業や取引企業に利益配分しなさい。それが義務だ」ということです。
飯田)下請け企業や取引企業に利益配分する。
須田)要するに、価値に見合った価格を設定して、「あるべき部品単価や手間賃・工賃を払うべきではないか。それが社会的な使命である」ということを、いまの大企業の経営者は考えるべきです。
飯田)大企業が賃上げして「素晴らしい」と言われますが、一方で中小企業の人たちに話を聞くと、「大企業はいいよ、あれだけお金があるのだから。俺たちにはお金が降りてこないから、賃上げしろと言われても困る」と言います。コストも上がっているし、厳しいですよね。
稼いだ利益を貯め込むのではなく、適正な価格でサービスや製品を買うべき ~経済全体が成長しなければ、将来的には大企業の業績も頭打ちになってしまう
須田)「物流の2024年問題」があり、人手不足の状況になると言われています。物流価格が上がっていかないからです。きちんとした利益が上がっていかない。
飯田)物流価格が上がらず。
須田)払わないところがあるわけです。そう考えるとボトルネックになってしまいますから、稼いだ利益を貯め込むのではなく、適正な価格でサービスや製品を買うべきではないかと思います。
飯田)ミクロ的には、企業として利益を出すのが最適解なのでしょうけれど、日本全体で考えると、逆にそれが首を絞めてしまうかも知れないですね。
須田)経済全体が成長しなければ、将来的には大企業の業績も頭打ちになるはずです。
防衛費や異次元の少子化対策への予算は増えるが、景気に対する配慮がほとんど行われていない
飯田)補正予算がどうなっていくのか。岸田総理は帰国してから組んでいくという話ですが、前回の補正も規模としては出たけれど、結局は基金で積んでしまい、使ったのか使っていないのかわからないようなところがありませんでしたか?
須田)うまくしてやられましたね。しかも、来年度予算の骨太の方針を見ると、確かに防衛予算や異次元の少子化対策への予算は増えます。しかし、それ以外の政策経費はほぼ増えていないのです。
飯田)それ以外のところは。
須田)つまり、景気に対する配慮がほとんど行われていないのが、来年度予算なのです。その流れで言うと、今回の補正予算もあまり期待できない。自民党内の議論では、積極財政派の人たちがいますから、ぜひ頑張ってもらいたいと思います。
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