「インボイス制度」 導入するべきだが「“いま”ではない」須田慎一郎が指摘
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年10月2日 17時40分
ジャーナリストの須田慎一郎が10月2日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。10月1日からスタートしたインボイス制度について解説した。
インボイス制度、岸田総理が新たな経済対策での支援策を指示
消費税の納税額の正確な把握を目的とした「インボイス制度」について、岸田総理は9月29日、制度の円滑な導入や定着に向けて新たな経済対策に必要な支援策を盛り込むよう、関係閣僚に指示した。インボイス制度は10月1日から導入された。
10月1日からインボイス制度がスタート
新行)10月から変わることはいろいろとありますが、その1つがインボイス制度の導入になります。
須田)インボイスとは「適格請求書」と言われており、インボイス制度の対象になるのは事業者間の取引だけです。誤解されやすいのですが、事業者と個人消費者の間の商取引は、インボイスの対象になっていません。
新行)事業者と個人消費者の商取引では。
須田)では何をやらなければならないのかと言うと、適格請求書番号を取得し、なおかつ取引する商品1つについて、どれだけの消費税が出ているかを調べるのです。
新行)適格請求書番号を取得して。
須田)消費税というのは免税の部分もあって、8%、10%の2本立てなので、「きちんとパーセンテージを明示し、消費税額を書いた上で請求書を出しなさい」という仕組みになっています。ほとんどのケースではインターネット上でやりとりを行うため、いわゆるデジタル化の一助でもあり、「納税のデジタル化」という意味合いも含んでいます。
納税額を正確に把握するためにインボイス制度が導入されることに
須田)なぜこのような制度が導入されたのかと言うと、一般的な説明では8%、10%の複数税率になってしまったために、なかなか納税額が正確に把握できないからという理由が言われます。一定の周知期間は2019年から数年間ありました。
新行)2019年から軽減税率がスタートしていますね。
須田)このインボイス制度は、そもそも消費税が導入されたときから議論されていたものです。
下請け企業などに対して消費税が明示されずに支払われることが多かった ~インボイス制度が導入されると「貰っていないものを納税しろ」という形になりかねない
須田)当時の事業者間の取引と言うと、元請けがあり、下請けがあって孫請けがあるという状況を考えれば、ものを買う側が強いのです。親会社や最終製品をつくっているメーカーなどの下に、部品メーカーや手間賃・工賃を稼ぐ加工業者がいるので、売る側は弱者、買う側は強者となります。
新行)事業者間の取引においては。
須田)この構図をよく考えていただくと、買う側は力が強いことをもって、消費税が導入されたときに「そのぶんを値引きして欲しい」、あるいは「込み込みでやって欲しい」という形で、適切に消費税が扱われない構造が予想されました。
新行)消費税込みでと。
須田)ですので、下請けや中小零細企業は「消費税を分離してください」と求めていたのですが、放置されてしまっていたのです。そのため今日においては、きちんとした製品価格が示され、それに対して消費税という形で分離されているケースは、ほとんどないと言われています。
新行)消費税が明示されていないケースが多かった。
須田)込み込みであるケースも多いですし、あるいは貰えていないケースもある。ここでインボイス制度が導入されてしまうと、「貰っていないものを納税しろ」という形になりかねないため、いま反対が出ているのです。
免税事業者から買った課税事業者は消費税を負担しなければならないため、場合によっては免税事業者を排除することにもなりかねない ~中小零細事業者をいじめることにもなる
須田)もちろん、年間の売り上げが1000万円以下であれば免税事業者のまま留まることができますが、免税事業者から買った課税事業者は、免税分の消費税については差し引きできないという状況になります。
新行)消費税は買った課税事業者が負担する。
須田)これには6年間の経過措置がありますが、その分を自分たちで負担しなければならず、場合によっては免税事業者を排除することにもなりかねません。
新行)「では、ここと取り引きするのはやめようか」という話になるのですね。
須田)きちんとした税額を把握したり、納税のデジタル化は進めなくてはならないので、やるべきだとは思います。ただ、いまではないと思うのです。
新行)このタイミングではない。
須田)適切な対価が払われているのであれば導入してもいいかも知れませんが、そうではない状況のなかで制度を進めると、中小零細事業者をいじめることにもなります。
誤解が多いインボイス制度
須田)よくこの問題について、預かり金や益税と言われているではないですか。「消費者は納めているのに、なぜきちんと納税しないのだ?」という批判もありますが、このような考え方は誤りです。
新行)益税ではない。
須田)預かり金でもなければ益税でもないという判決が、裁判所で出ています。実体上は製品価格の一部です。ですので、税務署はそのような言い方をするかも知れませんが、その説明は明らかに誤りだということを是非ご理解いただきたいと思います。
新行)仕組み自体をきちんと理解できているかという部分もありますよね。
須田)また、個人の消費者が納めた税金が「事業者の懐に入っているのではないか」という批判も誤りです。個人と事業者の間にインボイス制度はないからです。個人を対象に取引している事業者は、これから先もずっと免税事業者であり、その数は約200万事業者と言われています。そのような誤解がこの制度には多いのです。
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