先のない「一帯一路」を称賛するしかないプーチン大統領
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年10月17日 17時30分
キーワード:習近平国家主席、プーチン大統領、中国、ロシア=2019(令和元)年6月5日、ロシア・モスクワ(ロイター=共同)
ジャーナリストの須田慎一郎と中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が10月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。プーチン大統領の訪中について解説した。
ロシアのプーチン大統領が中国を訪問
ロシア外務省は、プーチン大統領が北京で10月17~18日に開催される経済圏構想「一帯一路」の国際会議に出席し、中国の習近平国家主席と会談すると明らかにした。
先のない「一帯一路」の国際会議にプーチン大統領が出席する意味はあるのか
飯田)これに先立って昨日(16日)、ロシアのラブロフ外相が北京を訪問しました。中国の王毅共産党政治局員兼外相と会談し、最終調整を行ったということです。
須田)もともと「一帯一路」構想とは、アメリカが主導した「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」に対抗する形でつくられたものです。そのTPPに中国が加盟申請するという状況になったことは、「一帯一路」構想の結果的な失敗を意味します。中国のバブルを輸出するだけに過ぎなかった。そこに出席する意味合いがどの程度あるのでしょうか。
イタリアも離脱する方向にあり、国際社会から「一帯一路戦略は失敗」という烙印を押される
飯田)直前の中国中央テレビ(CCTV)のインタビューでは、プーチンさんが習近平さんを「ベタ褒め」していたようです。
野村)「一帯一路」は債務の罠により、ほとんどの国が「ここから融資をもらって国を再建することは無理だ」と、「国を取られるだけだ」とわかってしまったわけですよね。ヨーロッパから参加していた国も、「やめましょう」という話になってきています。
飯田)イタリアですね。
野村)イタリアはもう離脱する方向で、年内に決まると思います。来年(2024年)に持ち越せば自動的に更新されてしまうので、おそらく年内にイタリアは「やめる」と言うでしょう。唯一のG7諸国が加入をやめるとなると、見限られたことになり、国際社会のなかで「一帯一路戦略は失敗」という烙印を押される状況になります。
飯田)一帯一路は。
野村)それがわかっているため、味方のいないプーチンさんが習近平さんを「ベタ褒め」したという話です。
ホタテを「第三国経由で入れて欲しい」と中国ブローカーからの問い合わせが日本の漁業関係に
飯田)プーチン氏はいま、外に出られないですものね。
須田)捕まってしまいますからね。
野村)腹立たしいのは「処理水」の問題についてです。なぜ非科学的な中国の論調に合わせて、ロシアも輸入制限しようとしているのか。本当に許せないですね。
須田)北海道などを取材していると、今月(10月)末をもって中国国内のホタテの在庫がほぼ切れるのだそうです。そのため、中国のブローカーサイドから「第三国経由で輸出してくれないか」と、問い合わせが来ているようです。かつてBSE(牛海綿状脳症)問題で日本産の牛肉が中国で輸入禁止になったことがありました。18年くらい輸入禁止が続いていたのですが、当時は禁止期間でも中国へ行くと、松坂牛、神戸牛、宮崎牛など、何でも買えていました。
飯田)あるのですか?
須田)あるのです。どうやって輸入したのか聞いたら、カンボジア経由で「カンボジア産だ」と言い張って輸入したということです。
飯田)そのような産地偽装があるのですか?
須田)そうなのですよ。
シンガポール産と偽って日本から輸入
飯田)そのルートが残っているのでしょうか?
須田)今回はさすがに、カンボジアでホタテは水揚げされませんので……。
飯田)海はありますが、ホタテは無理ですよね。
須田)それでシンガポール経由が浮上しているのだと思います。
飯田)でも、シンガポールでも獲れないですよね。どういったからくりを使うのでしょうか。
須田)国内に対するプロパガンダなのでしょうね。
悪化する経済状況から国民の目を処理水問題に向けようとする中国政府
野村)不動産バブルがはじけてしまい、中国国内の経済が悪化しています。しかも、もともと経済全体に透明感がないので、陰に隠れた不良債権なども次々と出てきているわけです。中国の経済情勢のなかで、処理水問題を道具に使い、国民の目をそちらに向けようとしている。
飯田)そうですね。
野村)この間、中国の中学生が演劇のようなものをしていましたよね。子どもたちにあそこまでやらせる国です。教育がそういう方へ向かっている状況ですので、裏を返せば、中国は「そこまで追い込まれているのか」という感じはしますね。
飯田)安倍元総理の銃撃事件を題材に、中学校の運動会で寸劇が行われた。さすがにその学校に対しては処分が下ったようですが。
野村)暗殺事件に加え、処理水についての横断幕もあったということです。そういうところまでいってしまうのは、「大国として本当にどうなのか?」という感じはしますよね。
半導体の輸出規制を緩めるためにも米中首脳会談をせざるを得ない中国
飯田)この先、アジア太平洋経済協力(APEC)を機会に、11月にも米中首脳会談が行われるのではないかと言われていますが、できるのでしょうか?
須田)中国としても、半導体の輸出規制が相当効いているので、やらざるを得ないのだと思います。日本に対しても、この部分については「開放するべきだ」というようなプレッシャーを掛けてきています。もちろんアメリカに対してもそうですが、中国も落としどころを探らなくてはならない状況になっています。
飯田)落としどころを。
須田)ただ、先ほどの野村さんの話ではありませんが、大国として、アメリカに対しても強く出ているし、日本に対しても強く出ている。そのイメージを保ちつつ落としどころを探るという、非常に難しい作業をする必要があるのだと思います。
サウジとイランを仲介するも、ハマスを支援するイランを止められない中国
野村)最近のイスラエル問題に関しても、中国は「自分が国際社会のなかで仲介役を果たせるのだ」と示そうとしてきた部分があります。いままでアラブ諸国とイスラエルがうまくいかなかったところを、「自分たちが取り持つことができる」とアピールしていますが、それが結局あだになり、今回のような事態も起きているわけです。
飯田)イスラエルとハマスの戦闘が。
野村)下手にくっつけたことで、今回のように紛争の火種になるところもあるのです。本当に国際社会のなかで今後、リーダーとして動くのであれば、もう少し自分たちの考え方を整理しなければいけません。パフォーマンスが先行してしまっているところがあります。
飯田)中東に関しては、サウジアラビアとイランの外交関係正常化を中国が仲介したとし、自らの存在感をアピールしていました。
野村)それが結局、実態を持っていなかったのでしょうね。イランは結果的にハマスを支援しており、アラブ諸国に大きな紛争を巻き起こすという状況になっているのに、イランを止められてはいません。自分が仲介したイランを止められていないところは、国際社会から見て、「中国はリーダーシップを発揮していない」と判断されるでしょう。
ハマスによるイスラエル攻撃後、動きのない中国を利用するアメリカ
須田)その仲介を逆手に取って、アメリカが中東に対するプレゼンスを高めてきています。中国はそれほど前のめりになっていないのです。中東にどれだけ拠点があるかと言うと、ジブチだけです。さほど中国としては全面的に出て行くつもりはないけれど、アメリカがそれをうまく利用しようとしています。
飯田)利用しようとしている。
須田)「中国の影響力拡大に対抗する」という大義名分も、イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)、あるいはハマスとの間の問題に横たわっているということです。
飯田)ここへきて空母を2隻浮かべたのは、その意図もあるのでしょうか?
須田)対中国という意識も強くあると思います。
自分たちの正当性を確保するために行動する中国とロシア
野村)アメリカはアメリカで大統領選挙を控えているため、イスラエルとの関係を外すわけにはいかないのです。票田ですからね。
飯田)ユダヤ票ですね。
野村)そういう意味では民主党・共和党関係なく、イスラエル寄りなのです。それをうまく利用しながら動いていることも、きちんと見ておく必要があるのは確かです。しかし、中国にだけ、あるいは中国とロシアにだけ光を当てれば、やはり彼らがしていることは自分たちの正当性を確保するための行動にしか見えません。
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