「補正予算でどれだけの真水ベースの金額が出るか」が今後のポイントに 長期金利が0.845%に上昇
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年10月23日 17時45分
![「補正予算でどれだけの真水ベースの金額が出るか」が今後のポイントに 長期金利が0.845%に上昇](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_471257_0-small.jpg)
ジャーナリストの須田慎一郎が10月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。約10年ぶりに高水準となった長期金利について解説した。
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長期金利が0.845%に上昇、10年3ヵ月ぶりの高水準
10月20日の東京債券市場で日本国債を売る動きが強まり、長期金利の代表的な指標となる新発10年物国債(第372回債)の利回りが一時0.845%に上昇。約10年3ヵ月ぶりの高水準となった。
飯田)国債は売られると価格が下がり、金利が上昇するという関係になっています。少し前まで日銀は長期金利の上限を0.5%程度の変動幅に設定していましたが、それを1%まで容認するという方針にしており、徐々に上がってきていますね。
長期金利は日銀の所管外 ~長期金利はマーケット・メカニズムに委ねるため、イールドが立ち、短期金利も上昇基調に
須田)これはマーケット・メカニズム、需要と供給で決まるものですから、1%近くまでは上がっていくのかなと思います。短期金利は1年未満、基本的な長期金利は10年物なのですが、長期金利に関しては日銀の所管外なのですよ。
飯田)長期金利に関しては。
須田)植田日銀総裁は学者ですから、原理原則を考えてみると、これまでイールドカーブ・コントロール(YCC)という形で長期も短期も日銀がコントロールしてきたというのは、少し違和感を持たれているようで、やはり長期金利についてはマーケット・メカニズムに委ねようと。そうすると、「イールドが立つ」と言いますが、長短金利が不格好な形になってくるわけですから、短期金利も上昇基調になるのではないかという連想ゲームが働いてくるのです。
飯田)短期金利も上昇基調になるのではないかと。
須田)加えて、アメリカの長期金利・10年物国債が5%近くまで上がってきたという状況です。アメリカの長期金利はどのくらいが平均なのかと言うと、過去の推移を見たところ、4%台前半が標準的な長期金利なのです。
飯田)4%台前半が。
須田)いまは少し上がりすぎている。やはりインフレ、物価上昇が激しいから上がっているのでしょう。この物価上昇が収まらない限り、長期金利の上昇はなかなか収まらないと思います。
飯田)高止まりが長期化する。
円安を解消するために来年早々に出口戦略に向かうのではないか
須田)そう考えると、日米金利差の拡大で為替が円安に振れていくだろうと。為替は、いまは需給ではなく、特に日本を中心とした個人的なFXが大きな影響を持ちます。需給で決まっているわけではありませんから、そういう連想ゲームがストレートに為替マーケットに影響を及ぼしてしまうのです。
飯田)連想ゲームが。
須田)日米金利差が拡大していくと、需給ではないところで、やはり円安に触れていく。これを解消するためには、「また金利を上昇させないといけないのではないか」というプレッシャーが日銀に掛かってきて、来年(2024年)早々には出口戦略に向かうのではないかとも言われています。
日本は原材料価格が上がっているための悪いインフレ ~いまの日本は金利を上げられるような状況ではない
飯田)日米金利差の連想ゲームですが、アメリカの方が金利が高ければ、アメリカの国債で運用した方が儲かる。そうすると米ドルを買って円を売ろうという動きになり、円安・ドル高の方向に振れる。そういう連想から実際に円安・ドル高になっていくのですね。
須田)そうですね。
飯田)向こうは「インフレがこれだけ進んでいるから、引き締めを行う」というロジックが立ちますけれど、我々の方はどうなのか。「景気が過熱してインフレになっているのか」と考えると、どうなのでしょうか?
須田)これは「悪いインフレ」と言って、景気の過熱による物価上昇ではなく、輸入価格や原材料価格が上がっているためのものです。輸入価格はエネルギーや原油などが関係しますが、それによる物価上昇ですから、決して景気がいいわけではありません。
国による財政出動が行われれば車の両輪になって景気がよくなる
須田)欧米の場合は、よいインフレなのです。景気が過熱してよくなっているから、物価が上がっている。質が違うので、いまの日本は金利を上げられるような状況ではありません。その辺りは植田日銀総裁もよく理解されていますから、短期金利については、まだしばらく低金利政策、あるいはゼロ金利政策を続けていくでしょう。いまはそういう方向性です。言ってみればリフレ政策、つまり低金利政策、金融緩和政策というのは「チャンス待ち政策」なのです。
「補正予算でどれだけ真水ベースでお金が出てくるのか」 ~出し惜しみして金利が上昇するという最悪の状況になりかねない
須田)それだけで景気をよくすることはできませんから、もう1つ、国による財政出動が行われれば、車の両輪になって景気がよくなっていく。そのチャンスを待つためにやっているのだけれども、「一体いつまで待てばいいのか」という問題になります。
飯田)いい加減、「待ちきれなくなる」という状況にもなりかねない。そんなに時間は残されていないわけですか?
須田)ですから、この臨時国会の補正予算や景気対策の中身は、「補正予算でどれだけ真水ベースでお金が出てくるのか」がポイントになります。チャンスを待っているけれど、出し惜しみしてしまうと、チャンスはまったくやってこない。待ちきれずに、しびれを切らして金利が上昇していくという最悪の状況になりかねません。
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