iPS細胞研究所名誉所長・山中伸弥 いまは「iPS細胞」再生医療の実現までの「折り返し地点」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年10月24日 11時20分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(10月17日放送)にiPS細胞研究所名誉所長の山中伸弥が出演。iPS細胞の今後について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。10月16日(月)~10月20日(金)のゲストはiPS細胞研究所名誉所長の山中伸弥。2日目は、これからのiPS細胞の「再生医療」への応用について—
黒木)山中さんは2012年にiPS細胞の研究が評価されて、ノーベル生理学・医学賞を受賞されました。いまはiPS細胞研究所の名誉所長で教授を務められていますが、所長そのものはお辞めになって、再び、ご自分で研究なさっているのですよね?
山中)所長を12年務めましたが、2022年4月に現・高橋淳所長にバトンタッチしました。いまは長年やっている自分の研究に注力しています。
黒木)その研究も、もう何十年もやっていらっしゃるのですよね?
山中)アメリカ留学中の1998年からなので、25年前に始めた研究なのですが、その謎がまだ解けていません。その研究の副産物のような形でできたのがiPS細胞なのですが、iPS細胞も医療応用させたいと思っています。
黒木)iPS細胞について、具体的に教えていただけますか?
山中)iPS細胞は、黒木さんからもつくることができます。採血して、その血液を試験管1本分くらい余計にいただくと、そこからつくれます。
黒木)血液からなのですか?
山中)血液のなかに「リンパ球」という細胞が入っているのですが、そこから私たちが見つけた4つの遺伝子を遺伝子導入すると、血液や皮膚だった細胞の運命が「コロッ」と変わります。初期化と言いますが、0歳の受精卵に近い状態まで戻ってしまいます。そして、まったく違う性質のiPS細胞につくり変えることができるのです。
黒木)それを脳や肝臓など、いろいろなところに応用していくのですか?
山中)次々と増え出して、ほぼ無限に増やすことができます。増やしたあとで、さらに刺激を加えると、脳の神経細胞や肝臓の細胞、心臓を拍動させる細胞などを大量につくり出すことができます。脳の病気の場合は、それを脳に移植させることによって脳の機能を再生できるのではないか。また、心不全になってしまっている方の心臓に移植して、もう1度心臓の機能を再生できるのではないか……。これが「再生医療」と言われている治療です。
黒木)再生医療は、実際に応用されているのですか?
山中)いまは臨床試験という形で、5~10名の少数の人間の患者さんに協力していただき、10個以上の病気や怪我に対する効果と安全性を確かめる段階まできています。
黒木)そこから、いろいろな企業さんたちと組んで、薬になっていくということですね?
山中)いまはまだ5~10名と小規模ですが、今後は製薬企業と協力して、何百人という人に臨床試験を広げていきます。そこで効果と安全性が確認できれば、国から承認していただいて保険診療できるような状態になります。そうなれば日本中、さらには世界中の何万人という方に使っていただける普通の医療になることができます。マラソンで言うと、ちょうど折り返し地点くらいかなと思います。ここまでは順調に来ています。
黒木)折り返し地点と言うと、あと何年くらい掛かるのでしょうか?
山中)5~10年くらいは掛かりますね。通常、基礎研究の成果が実際に患者さんに届くまでは25~30年掛かります。iPSも長期戦になることはわかっているので、ちょうどいま半分です。
黒木)もちろん、見つけるということも大変だったと思いますが、そこから今度は実用化までにも時間が掛かるのですね。
山中)私は基礎研究をしている研究者なので、「iPSを見つける」というところが1つのゴールだったのですが、それはまた、新しい研究開発の始まりでもあったのです。基礎研究、応用研究は両方とも大切なのですが、同じ研究でも、必要な人数も予算も桁違いなので、まったく違う種類のスポーツをやっているような感じですね。
山中伸弥(やまなか・しんや)/iPS細胞研究所名誉所長
■1962年、大阪府東大阪市出身。
■1987年に神戸大学医学部を卒業後、臨床研修医を経て、1993年に大阪市立大学大学院医学研究科博士課程修了(大阪市立大学博士(医学))。
■その後、米国グラッドストーン研究所博士研究員、奈良先端科学技術大学院大学教授、京都大学再生医科学研究所教授などを歴任。
■2006年にマウスの皮膚細胞から、2007年にはヒトの皮膚細胞から人工多能性幹(iPS)細胞の作製に成功し、新しい研究領域を拓く。
■2010年、京都大学iPS細胞研究所・所長に就任。
■2010年に文化功労者として顕彰されたことに続き、2012年には文化勲章を受章。2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
■現在は京都大学iPS細胞研究所・名誉所長・教授を務め、研究室を主宰し若い研究者たちと研究に取り組んでいる。また、公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団の理事長も務めている。
■アメリカ・グラッドストーン研究所でも研究室を持ち、毎月1回は渡米し、研究活動を行っている。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「がん治療」に新たな光も…最新“iPS研究”山中伸弥教授が解説 「my iPS」で拒絶反応と費用の壁解消へ【バンキシャ!】
日テレNEWS NNN / 2024年11月25日 10時57分
-
最新“iPS研究”で「がん治療」に新たな光? 山中伸弥教授が解説【バンキシャ!】
日テレNEWS NNN / 2024年11月24日 21時20分
-
造血幹細胞の発生初期を司るシグナル分子を解明
PR TIMES / 2024年11月19日 14時15分
-
iPS細胞で動物再生医療を推進するVetanic、東証グロース上場企業コージンバイオ株式会社との業務提携基本合意締結のお知らせ
PR TIMES / 2024年11月11日 17時15分
-
「ピンピンコロリ」は決して幸せな死に方ではない…62歳で狭心症になりステントを入れた医師が痛感したこと
プレジデントオンライン / 2024年11月9日 7時15分
ランキング
-
1【読み解く】基本的に初期症状がない病… 糖尿病が「ダイアベティス」に…名称変更なぜ? 背景には 偏見や差別などが…
日本海テレビ / 2024年11月30日 6時44分
-
2DVで転居したのに夫から「住所分かったぞ」…市の担当者のミスで転居届の2日後に漏えい
読売新聞 / 2024年11月30日 13時58分
-
330代でFIREを達成した経営者が「1年後に再び働き始めたワケ」。“虚無感に襲われる日々”との戦い
日刊SPA! / 2024年11月30日 15時52分
-
4すすきのガールズバー爆発「楽しいことするよ」元交際女性の勤務先にガソリンのような液体で…重体の41歳男性「会いたい会いたい」と何度も送信、入院中の女性は「許せない」怒り
北海道放送 / 2024年11月30日 14時26分
-
5羽田発の日本航空旅客機 着陸直後にタイヤがパンク 鹿児島空港
MBC南日本放送 / 2024年11月30日 19時3分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください