iPS細胞研究所名誉所長・山中伸弥 臨床医になろうと決めた際、母の枕元に亡き父が立ち「伸弥に考え直すように」と……
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年10月25日 11時20分
ノーベル医学・生理学賞を受賞し、会見に臨む京大の山中伸弥教授 =8日午後8時58分、京都市左京区
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(10月18日放送)にiPS細胞研究所名誉所長の山中伸弥が出演。研究者になったきっかけについて語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。10月16日(月)~10月20日(金)のゲストはiPS細胞研究所名誉所長の山中伸弥。3日目は、研究者になろうと思ったきっかけと、そこまでの経緯について—
黒木)山中先生は、臨床医というよりは研究者なのですよね?
山中)そうですね。一時は臨床医を目指していたのですが、いろいろな理由でいまは研究者になっています。
黒木)もともとはお父様のご病気がきっかけだそうですね?
山中)私が中学生くらいのころに父親が病気になって、治療法がなく、どんどん悪くなっていきました。それを中学生・高校生のころに見ていたことが、医学を志す大きな理由の1つになったのは間違いありません。
黒木)理系は得意だったのですか?
山中)数学や物理が好きで得意でした。数学などは「解けない問題などない」と思っていましたから。
黒木)なるべくして、ということですね。
山中)ただ、いまは生物なので、数学や物理とはまた違います。いまは生物学にもコンピューターが入ってきているので、数学や物理の知識も大切なのですが。
黒木)それで研修医になられて、そのころにお父様も亡くなられた。やはり研究者というのも、ある意味であまり裕福ではないので……。
山中)そのような意味では、そうですね。
黒木)ですので、臨床医になろうと思ったとき、お母様に相談したら、お父さまが夢枕に出られたそうですね?
山中)科学者の私がこのようなことを言うのも何ですが、父親が亡くなったのをきっかけに、父のような治療法のない病気の治療法をつくりたいと思って研究者になり、そこから10年くらいアメリカに行って研究しました。アメリカに行っている間は上手くいっていたのですが、「医師として雇ってくれる」というありがたい病院があったので、そちらに移ろうと思っていたのです。
黒木)医師として。
山中)そちらの病院は、私が来て人が増えるので、診察室の改装までされていました。しかし、そのときに離れて暮らしている母親から電話が掛かってきて、「昨日、お父ちゃんが夢枕に立ったのだけれど、伸弥に考え直すようにと言っていた」と言うのです。それで少し決心が揺らぎました。
黒木)お父様が夢枕に立たれて。
山中)その間に他の大学から「研究を頑張らないか」という話が舞い込んできて研究を始め、そこから5年くらいでiPS細胞ができました。研究者になったきっかけも父親ですし、あのときに踏み留まらせてくれたのも、ある意味では父親でした。
黒木)運命ですね。
山中)父には本当に感謝しています。
黒木)いまも研究者一筋でやっていらっしゃいますが、iPS細胞を見つけたのも、全然違うがんの細胞を研究なさっていて、それがいい遺伝子ではなく、つまり失敗がどんどんと違うものを見つけていくのですよね?
山中)研究者になったとき、将来自分が再生医療やES細胞、iPS細胞を研究するなどとは、夢にも思っていませんでした。全然違う研究をやっていて、予想外の結果が起き、その結果に引っ張られ、研究の内容を変えて……。そうしたら、また予想外のことが起き、そしてまた研究の内容を変えて、気が付いたら幹細胞や再生医療の研究をし出していて、「iPS細胞ができてしまった」というような感じです。
黒木)iPS細胞ができてしまった。
山中)研究者だけではなく、人生でも直線型でこの道一筋というか、「最初からこれがやりたくてさまざまな困難に打ち勝ってやり遂げる」というような素晴らしい人生もありますが、一方では回旋型の人生もあると思います。まさに私は研究に関しては回旋型でした。
黒木)しかし、その失敗が人生を成功に導いていくのですよね?
山中)iPS細胞だけではなく、研究はすべて「失敗のなかにチャンスがある」と思いますし、どのようなお仕事でも、「失敗だ」と思ったなかに、実はいままで気付かなかったようなすごいヒントがあるのです。逆に「上手くいっていると感じるときは、危険なときだ」と思っています。
黒木)用心しなければいけないということですね。
山中)本当に用心しなければいけないと思っています。
山中伸弥(やまなか・しんや)/iPS細胞研究所名誉所長
■1962年、大阪府東大阪市出身。
■1987年に神戸大学医学部を卒業後、臨床研修医を経て、1993年に大阪市立大学大学院医学研究科博士課程修了(大阪市立大学博士(医学))。
■その後、米国グラッドストーン研究所博士研究員、奈良先端科学技術大学院大学教授、京都大学再生医科学研究所教授などを歴任。
■2006年にマウスの皮膚細胞から、2007年にはヒトの皮膚細胞から人工多能性幹(iPS)細胞の作製に成功し、新しい研究領域を拓く。
■2010年、京都大学iPS細胞研究所・所長に就任。
■2010年に文化功労者として顕彰されたことに続き、2012年には文化勲章を受章。2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
■現在は京都大学iPS細胞研究所・名誉所長・教授を務め、研究室を主宰し若い研究者たちと研究に取り組んでいる。また、公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団の理事長も務めている。
■アメリカ・グラッドストーン研究所でも研究室を持ち、毎月1回は渡米し、研究活動を行っている。
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