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消費税引き下げは「考えていない」 「方向性」が見えない岸田総理

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年10月26日 12時35分

消費税引き下げは「考えていない」 「方向性」が見えない岸田総理

慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一が10月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。衆院本会議での消費税に関する岸田総理の答弁について解説した。

2023年10月23日、衆議院本会議で所信表明演説を行う岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202310/23shu_san_honkaigi.html)

2023年10月23日、衆議院本会議で所信表明演説を行う岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202310/23shu_san_honkaigi.html)

岸田総理、消費税率引き下げについて「考えていない」と述べる

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岸田総理)消費税については、急速な高齢化等に伴い、社会保障給付費が大きく増加するなかで、すべての世代が広く公平に分かち合う観点から社会保障の財源として位置付けられており、その税率を引き下げることは考えておりません。

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飯田)所信表明演説に対する各党代表質問が10月26日まで行われます。岸田総理は「経済、経済、経済」と強調しましたが、どうご覧になりますか?

官邸主導ではなく、各省庁に政策を任せる岸田政権 ~政策の質は高いが「何をしたいのか」が見えない

細谷)自民党の世耕参院幹事長が「リーダーとしての姿が示せていない」と発言していましたが、小泉元総理や安倍元総理がトップダウンで官邸主導の政治を行っていたのに対し、岸田政権は旧来型のボトムアップ、言ってみれば各省庁に政策を任せる形を取っています。

飯田)岸田政権は。

細谷)そういう意味では安定感がありますし、現実の課題に上手く対応するという面も見えます。政策の質は高いと思いますが、逆に言うと、トップダウンとして「何をしたいのか」という方向性が見えない。そして、それぞれの政策省庁の違いを乗り越え、「全体としてどういう哲学があるのか」が見えないわけです。

2つの戦争が起きているなか、G7議長国として外交・安保を無視して「経済、経済、経済」でいいのか ~経済第一ならば防衛費は上げられないはず

細谷)広島サミットでは、岸田総理はG7議長国として優れたリーダーシップを発揮されたと思います。一方で、議長国はまだ続いているわけです。ウクライナをはじめ、世界でこれだけ深刻な課題があるなかで、本当に「経済、経済、経済」で外交・安保を無視していいのかという疑問もあります。

飯田)イスラエル、パレスチナ情勢もあり。

細谷)1年前は安保3文書で大幅に防衛費を上げる方向に動いたわけですから、もしも「経済、経済、経済」であるならば、防衛費は上げられないはずですよね。外交・安保が必要だから、安保3文書で防衛費を上げたわけです。

飯田)そうですね。

細谷)個別的な政策自体は、それぞれ合理性があると思いますが、個別的な政策を超えた政権、あるいは総理の哲学として「どういう国をつくりたいのかが見えない」と多くの人が感じているのではないでしょうか。

飯田)個別ではいいけれど、すべてを合わせて行おうとするとバッティングしてしまい、結局は全部うまくいかない。よく「合成の誤謬」などと言いますが、それが起こっているような状況ですか?

細谷)55年体制の自民党はそういう傾向が強かったと思いますが、2001年に官邸機能を強化し、首相官邸が政策を立案する機能を持ち、企画・立案機能を持った。これを上手く使ったのが小泉政権、安倍政権です。ですので、いまの法制度では、首相官邸が一定程度リーダーシップを発揮できるような形であり、そのために国家安全保障局もつくったわけです。

飯田)そうですね。

細谷)安倍政権はそれを上手く活用し、1年間で40回近く国家安全保障会議を開いていました。しかし、岸田政権は1年間で13回しか開いていないのです。つまり、これだけ危機が連続しながら、国家安全保障会議を十分に開催していない。開くかどうかは、当然ながら総理の関心によるものです。G7議長国として、ウクライナ・中東で2つの戦争が起きていることを考えると、「経済、経済、経済」として外交・防衛を脇に置いていいのか? そういった疑問も出てくると思います。

イスラエル、パレスチナ情勢に関して「日本独自のメッセージ」を出すべきだった

飯田)中東に関しては、G7で日本を除いた6ヵ国が声明を出しました。これが「あえて」日本は参加しないという選択であれば、一定程度の意志も感じるのですが、「スーッ」と過ぎていきましたね。

細谷)ウクライナのときも、多くの国民は「他の国が行っているから行かなければならない」という、子どもが「みんながおもちゃを買ってもらっているから、自分も買ってくれ」というように感じてしまったと思うのです。今回、逆にもしも声明に参加しないのであれば、独自にイスラエルの問題に対して総理・政府としての見解を明白に世界に向けて示す、あるは在京イスラエル大使と会談して総理の思いを伝えるなど、いろいろなアプローチがあったと思います。

飯田)声明に参加しないのであれば。

細谷)それとセットなら、「日本には独自のアプローチがある」と伝えられたはずです。日本はODAも含め、パレスチナに対して人道支援を続けてきました。そう考えると必ずしも日本は、他の国とG7で足並みを揃える必要はないと思います。この問題に対して、日本独自のメッセージを出すべきだったのではないでしょうか。

飯田)総理はパレスチナ情勢について、最初はX(旧ツイッター)でポストしましたが、その後は演説のなかで「イスラエル」という名前は出したけれど、明確なものは出ていません。

細谷)そうなのですよね。やはり政策演説と言われるような、体系的な日本政府の考え方を示す外交演説などを、G7議長国として多くの紛争、対立があるなかで示して欲しいですね。

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