米中双方ともに「首脳会談」を望む「それぞれの事情」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年10月26日 17時40分
![米中双方ともに「首脳会談」を望む「それぞれの事情」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_472328_0-small.jpg)
14日、インドネシアのバリ島で、握手する中国の習近平国家主席(左)とバイデン米大統領(ロイター=共同)
慶應義塾大学教授で国際政治学者の細谷雄一が10月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の米中関係について解説した。
![インドネシアのバリ島で、握手する中国の習近平国家主席(左)とバイデン米大統領=2022年11月14日 (ロイター=共同) 写真提供:共同通信社](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2022/11/2022111411874_680.jpg)
インドネシアのバリ島で、握手する中国の習近平国家主席(左)とバイデン米大統領=2022年11月14日 (ロイター=共同) 写真提供:共同通信社
習近平国家主席、首脳会談前にアメリカへの歩み寄り姿勢を示す
中国外務省によると習近平国家主席は10月25日、アメリカの民間団体「米中関係全国委員会」の会合に祝辞を寄せた。その上で「中国はアメリカと協力し、共通の繁栄を推進する用意がある」と述べ、アメリカ側へ歩み寄る姿勢を見せた。
飯田)米中両国は11月のAPEC首脳会議のタイミングで、2国間の首脳会談を模索しています。11月16~18日とも言われていますが、どうなるのでしょうか?
1月からアメリカとの関係改善に動いていた中国 ~気球事件で途絶える
細谷)習近平政権の3期目が成立して、ある程度人事が固まり、中国政府は今年(2023年)の1月からアメリカとの関係改善に動いていたのです。ところが2月に気球事件があり、アメリカが厳しい対応をしたことで途絶えてしまった。
飯田)軍事施設の上空を飛んだということで。
細谷)その後、習近平政権、というよりも習近平主席個人だと思うのですが、ロシアと共同歩調を取るようになりました。それには中国の世論からも違和感を持つような声が聴かれるのですが、習近平主席はプーチン大統領に寄り添う姿勢を見せていた。そうなると、当然ながらアメリカとの関係は悪化します。
対米関係を改善したい中国と、大統領選に向けて米中首脳会談を実現させたいアメリカ
細谷)ところが最近の中国経済は、不動産も含めて厳しい状態が続いています。したがって、従来のようにアメリカやヨーロッパ、あるいは日本を含めて全面的に対立する流れが重荷になっているのです。
飯田)経済が悪化しています。
細谷)だから中国は対米関係を改善したい。一方で、来年(2024年)の大統領選に向けて成果を出したいバイデン政権は、11月のAPEC首脳会議を成功させなければならない。習近平主席に来てもらい、米中首脳会談を実現させて国内で放映したい。そのような政権の意向があるのではないでしょうか。
飯田)米中首脳会談は、9月にインドで行われたG20の際に開催するのではないかと言われていましたが、習近平主席はG20に来ませんでした。
細谷)国境紛争によって、この3年程度、インドと中国は関係が緊張しています。そのインドでアメリカ大統領と首脳会談を行うのは、習近平主席にとってリスクが大きかったのでしょう。そういった意味ではハードルが高いと思いますが、アメリカ側は米中首脳会談の実現に向けて動いていると思います。
民主党左派や共和党のトランプ支持者への対策のためにも中国と連携したいバイデン政権
飯田)最近、マルタ島で王毅政治局員兼外相とサリバン大統領補佐官が会談するなど、急にすり合わせを行っているような感じがしますが。
細谷)来年の大統領選挙を考えたときに、2つ考慮しなければいけないことがあります。1つは、民主党左派の支持を得なくてはいけない。かつてヒラリー・クリントン氏は党内左派の支持を得られず、トランプ氏に大統領選挙で負けてしまいました。
飯田)そうでしたね。
細谷)「左派のアジェンダ」は、基本的に軍事力行使ではなく、気候変動や国内経済対策などです。これらの問題の多くは中国との連携が必要になります。そのためには党内左派に向け、「中国と連携してグローバルな課題に対応している」という姿勢を示したいのです。
飯田)グローバルな課題に対応していることを。
細谷)一方で共和党は現在、下院議長選出で混乱しており、背後にはトランプ氏の支持者の影響があります。具体的に言えば、ウクライナへの資金援助の打ち切りです。そう言った意味では、やはり国際舞台で徹底的に中国・ロシアと対決する路線になれば、財政出動も必要になってきますし、場合によっては中東情勢も含めて軍事紛争に発展するかも知れません。そのような状態を避けるためにも、まずは中国との間で連携したい考えはあると思います。
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