所得・住民税の定額減税 現役人口が減少するなかで「高福祉・低負担」は無理がある
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年10月29日 11時40分
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が10月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理が与党幹部らに指示した所得税と住民税の定額減税について解説した。
岸田総理が所得税と住民税の定額減税を指示、2024年6月に1人4万円
岸田総理大臣は10月26日、税収増の国民への還元策として、来年度の税制改正で所得税と個人住民税の定額減税を実施するよう、与党幹部らに指示した。具体的には2024年6月に1人につき4万円の減税を行いたい考えを示した。
飯田)住民税非課税世帯には一世帯あたり合わせて10万円。現行で配っていた3万円に加え、7万円を目安に支援を行うと述べています。経済対策は11月2日をめどに取りまとめる考えも示したようです。
現役人口が減少するなかでの「高福祉・低負担」は無理がある
宮家)一般論として言えば、税収が増え、ある程度余裕ができたから国民に還元する。それは当然の判断だと思います。他方で、確かに短期的には増収なのですが、よく考えると、実は今も大きな借金があるわけです。
飯田)そうですね。
宮家)選挙もあるし、政治家ですから、人気を取らなければいけない。与野党ともばら撒き的な部分があるのは辛いところです。私は増税論者ではありませんが、よく問題の本質を考えると、(家庭に例えるなら)我が家でも収入はときどき増えるけれど、あまり増えない時もある。
飯田)収入は。
宮家)しかし支出は増えていく。大家族であり、おじいさん、おばあさんも子どもたちもいますから。となると、やはりお金が掛かります。しかし、収入はそこそこでも、支出は増えてしまっている。その上借金をしている。……これはどこかで何とかしないといけないのです。もちろん国家の財政、特に日本の経済状況を考えたとき、そうではないのだという議論があるのも知っています。
飯田)日本の経済状況を考えたときには。
宮家)私は経済の専門家ではないから、無責任なことを言うつもりはないけれど、一般的に高福祉は高負担で行うものです。ヨーロッパがそうです。
飯田)北欧はそうですね。
宮家)アメリカの場合は、低福祉だから低負担で済むわけです。しかし、日本のサービスはヨーロッパ並みですが、負担はアメリカ並みにする、となるとこれは難しい。
飯田)現役の人口が多かった時代はそれで賄えたけれど。
宮家)当時は何とか賄えましたが、人口が増えず、むしろ減るとなればピラミッドは逆三角形になるわけで、やはりどこかで無理が出てきます。
世代観をすり合わせるのは政治の仕事
飯田)国民民主党の玉木さんや維新の会はそういう話をしようとするけれど、政権与党となると、大票田は逆三角形のピラミッドにおける上の人たちです。
宮家)しかも彼らは投票しますからね。現実的な若い人が育ってこないと、この傾向は変わらないと思います。実は先日、私も70歳になったのです。
飯田)おめでとうございます。
宮家)あと5年したら後期高齢者です。自分の問題として、若い人たちにもお金を回さなければいけないと思うときもあるのですが、そうは言っても、食えない人も居るわけですから。それは何とかして欲しいという気持ちもあり、心は揺れ動いています。
飯田)子や孫の世代を思うと、考えが変わるところもあります。「こうしたらいいのではないか」という政策のメニューがたくさんあるなかで、結局、世代観をすり合わせるのは政治の仕事なのですよね。
宮家)政治にしかできないのです。役人にはできません。法律の制度や予算の使い方を変えなくてはいけないのだから。役人は、法律に基づいて案はつくれるけれど、法律自体を作るのは立法者です。……と言いながらも、なかなかね。
飯田)目先の選挙というよりは、先を考えて欲しい。
宮家)これは理想論なのかも知れませんが。
支持率を気にする岸田政権
飯田)その辺りについて、建前でもいいから青写真を見せるのが演説の機会なのですが。
宮家)選挙演説で財政赤字のことを言うと嫌われてしまい、「勝てなかったらどうするのだ」と言われてしまうから、政治家は辛いと思います。
飯田)岸田政権は「支持率を気にしている」というような報道も出ますが、その部分を感じるところがあるのですね。
宮家)岸田総理はよくやっていると思うのです。特に外交は素晴らしいですよね。安全保障は素晴らしいけれど、どうも国内政策に関しては、与野党間でコンセンサスができそうもないですね。
飯田)防衛費の増額や安保3文書の改定などは、昔であればマスコミも含めて袋叩きにされていたような案件ですよね。
宮家)私も防衛費を2%にするという流れには驚きましたよ。
飯田)防衛費を国内総生産(GDP)比2%にすると。
宮家)2%への言及なんて、昔なら夢のような話だったのだから。
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