インドがロシアを必要とする「日本人が知らない」事情
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年10月29日 11時45分
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が10月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。カナダ向けの一部ビザの発給を再開したインドについて解説した。
インドがカナダ向けの一部ビザの発給を再開へ
在オタワのインド高等弁務官事務所は10月25日、カナダ国民に特定カテゴリーのビザ(査証)発給を始めると明らかにした。カナダで6月に起きたシーク教指導者殺害事件をきっかけに悪化した両国関係が、改善に向かう可能性も示唆された。
宮家)先日インドへ行ってきましたが、この話が大きくなっているかと思ったら、そうでもありませんでした。報道を読む限り、インドの諜報機関もアメリカやカナダのような主要国では、一応ルールがあるらしく、そういうことはしないことになっていた。しかし、今回はやってしまった可能性があるわけです。実際に何をやったかは知りませんが、それを見つけた人もすごいですし、更にこの種の話を公の場で話してしまったのがカナダの首相です。
飯田)トルドーさん。
宮家)こういう話は静かに水面下で行うのであって、公の場で話してしまったら泥沼になります。しかし、今回は実際にそうなってしまったわけです。でも、さすがに「撃ち方止め」の状態ですね。インドとカナダが喧嘩しても仕方ないと思います。
飯田)カナダにはインド系の移民が多いこともありますか?
宮家)多いですよね。カナダはシーク教徒がとても多く、トルドー首相の有力な支持母体の1つです。だから一言言いたい気持ちはわかりますが、一国の首相としてはどうだろうかね、と思います。
インド再訪 ~インドの経済成長は本物
宮家)先日行ってみて、インドはやはり重要な国だなと思いました。久しぶりでしたが、「インドは変わりつつある」と感じました。前回訪れたのは10年近く前ですが、確かに喧騒や混乱だけはいつも通りでしたよ。
飯田)交通渋滞だとか。
宮家)博物館に行ったら、お客さんがみんな展示物に触ろうとするのです。そうすると警備員が「ピピピッ」と笛を吹くのですが、1時間に1回どころではなく、3分に1回ぐらい鳴ります。「おいおい、ここは交差点かよ」と思うくらい。
飯田)普通は静かな博物館が。
宮家)やはり、インドの経済成長は本物だという感じがしました。空港の近くにも、古いインドとはまったく違う、各国と変わらない近代的なビジネス地区をつくっているし、いろいろな意味で「これから伸びる国だな」と思いました。
飯田)行かれたのはニューデリーですか?
宮家)ニューデリーです。若手外交官を各国から集めたセミナーに参加したのですが、変貌したインドを実感しました。
11月にはIT都市のバンガロールを訪問
宮家)来月(11月)にはインドのバンガロールに行こうと思っています。インドの北の方には、ニューデリーは特にそうですけれど、日本のスズキの大きい工場があります。
飯田)マルチ・スズキですね。
宮家)インド子会社はマルチ・スズキと言うのだけれど、素晴らしかったです。バンガロールはITが盛んなようで、これからは中国一辺倒ではなく、投資先を広げてビジネスのリスク管理する時代になるのではないでしょうか。政治的問題を除いたとしても。
確実に変化しているインド
飯田)ビジネス環境で言うと、インド独特の商習慣があると言われますが、その辺りはどうですか?
宮家)インドにはカースト制度も残っていますが、そこには誤解もあります。必ず身分差別があるのかと言うと、実はITや政治の世界ではあまりありません。インドもそこは使い分けているのではないでしょうか。
飯田)ITや政治の世界では。
宮家)モディさんは新しい税制改革など、ビジネスを促進するための改革を行っているようです。もちろん、インドは大きい国ですから時間が掛かると思います。しかし、モディさんの強烈なやり方もあって、着実に効果が出てきていると思います。
飯田)モディさんのやり方で。
宮家)日本企業は、中長期的なインドの可能性については高く評価しながら、「では明日行くか」となると、「うーん」という感じなのだそうです。でも、そろそろ対インド投資の準備を始めてもいいのではないかという印象を持っています。確実に変わっているのは間違いありません。
前途洋々なインド
飯田)確かにモディさんは紙幣を切り替えて、不正蓄財などを全部吐き出させようとするなど、思い切った政策を行っています。
宮家)あれはモディさんでなければできないと思います。「独裁だ」などと言われますが、そのくらいやらないと、あんなに広くて約15億人の人口があり、言葉も違う国をまとめられません。
飯田)そうですよね。
宮家)インドは、インドという国があるのではなく、イギリスが植民地にした地域をたまたま「インド」と呼んだだけなのですよ。しかし、インドには一体性がある程度あって、着実に若い人たちが育っています。人口はピラミッド型だし、これからも前途洋々だと思います。
インドがロシアを必要とする理由 ~インドの武器の多くはロシア製でスペアパーツが必要
飯田)外交に与える影響も大きいのですか?
宮家)インド外交の目的は「強く独立したインドの実現」ですから、日本やアメリカの同盟国になる気はありません。しかし、同様にロシアのお友達ではあるかも知れないけれど、決して同盟国ではない。
飯田)そこも同盟ではない。
宮家)インドにとってロシアは必要な国です。なぜかと言うと、行ってわかったのだけれど、インドの武器の多くはまだロシア製です。インドが中国を抑止するためには、ロシアからスペアパーツを供給してもらう必要がある。
飯田)ロシアから。
宮家)それが途絶えたら中国と戦えないのです。ですから、インドが中国に対峙するためには、どうしてもロシアが必要なのです。この現実をこの間勉強して、「なるほど」と思いました。彼らは時間を掛けて安全保障政策も変えていくと思います。すぐには変わらないでしょうが・・・。
飯田)中国のうしろにロシアがいるから、ロシアとくっつくのかと言うと、それ以前に現実的な問題もあるわけですね。
宮家)そこは、あまり急いでやらせると逆効果になるから、インドのやり方を見るしかないと思います。
イスラエルとの関係がいいインド
飯田)ジワジワと西側の兵器も入っていると聞きます。
宮家)実は今インドとイスラエルとの関係がものすごくいいのです。イスラエルの技術で、ロシア製の飛行機をアップグレードしているのだそうです。
飯田)日本からはわからないネットワークもあるのですね。
宮家)インドはしたたかです。
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