岸田総理 「所得減税は1回」に対し 「今後も税収増は続くのに1回でいいのか」佐々木俊尚が指摘
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年11月1日 17時30分
ジャーナリストの佐々木俊尚が11月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。参議院予算委員会における岸田総理の発言について解説した。
岸田総理、「所得減税1回で終われるよう経済を盛り上げる」と説明
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蓮舫参議院議員)減税の中身がまだ固まっていないのに、公明党や自民党の萩生田政調会長から1回きりでは終わらない発言が出ています。所得税減税は1回より続ける可能性もあるのですか?
岸田総理)1回で終われるように、経済を盛り上げていきたいと思っております。
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岸田総理大臣は10月31日の参議院予算委員会で、立憲民主党の蓮舫氏の質問に答えた。所得税と住民税の定額減税について「1回で終われるように経済を盛り上げていきたい」と述べ、2024年度のみの実施となるよう賃上げなどを促すと説明した。
今後も税収増は続くのに「一律4万円の所得税減税1回」でいいのか
飯田)討論番組などで「1回と決まったわけではない」という萩生田さんなどの発言があり、それを受けて蓮舫さんが質問しました。
佐々木)相変わらず岸田さんは内政、特に経済問題に関しては、何をやりたいのかよくわからないですね。所信表明演説でも「コストカット型経済から変える」と……。
飯田)成長型への姿勢を示しました。
佐々木)それは正しいと思いますし、ここ2年くらい景気がよくなっていて、税収が増えています。だから税収増加分を国民に還元すると言っていて、それも正しい。しかし、それで「一律4万円の所得税減税1回でいい」となるのがよくわかりません。
経済を底上げして回すための減税なのか、所得の少ない層に対する救済のための減税なのか ~住民税非課税世帯へは7万円給付
佐々木)インフレが続き、今後も景気がよくなって、税収は増えていくでしょう。それをどうするのか。また、所得の少ない層にはプラス3万円で、計7万円と言っているけれど。
飯田)住民税非課税世帯。
佐々木)分配はもちろん大事ですが、経済を底上げして回すための減税なのか、所得の少ない層に対する救済のための減税なのかによって、対応が違うと思うのですよ。経済を回すのであれば「一律10万円配る」という方針でいいのではないでしょうか。
景気が回るかどうかはマインド、「減税は1回限り」と宣言してしまえば貯蓄に回してしまう
佐々木)もちろん、減税するのは悪いことではありませんが、景気が回るかどうかはマインドです。4万円を貰って「よし、お金を使うぞ」とみんなが思うかどうか。4万円を貰っても今年(2023年)限りとわかっていたら、「来年はもうないから全部貯蓄に回そう」と思うではないですか。
飯田)今年だけだということでは。
佐々木)今後、毎年減税が進んでいって、税収も増えているから「今後は所得税が少なく済むようになる」という見通しが希望として見えれば、「では財布のひもを緩めようか」となるのではないでしょうか。消費マインド的には、決してお金があるから使うわけではなく、「このお金が来年も再来年もある」という安心感、期待感があるから使うわけです。「1回限り」と宣言してしまったら、みんな使わなくなるでしょう。
飯田)そうですね。
佐々木)当初、根本的な方針で言った「税収増を還元する」という内容と、「4万円を1回限り」という落差は何なのか。岸田さん自身はもっと減税して経済を回していきたい気持ちがあるのかも知れませんが、財務省、あるいは党内の緊縮派がかなり抵抗しているのでしょうか。総論は賛成なのだけれど、各論になると急にトーンが下がってしまう。そういう政治的な問題である気もしなくはない。
飯田)確かに、内政に関しては大きな旗を立てるけれど、「あれ、中身は?」と感じる状況が繰り返されています。
内政の「ちぐはぐさ」が支持率低下につながっている
佐々木)結果的に裏が見えてしまっているので、「大きいことを言っているわりに、やっていることはショボイ」というのが、各世論調査の支持率急落につながっているのではないでしょうか。国民にもわかりますよ。この支持率の低下は、2012年に安倍政権が復活して自民党に政権が戻って以来の低さですね。
飯田)調査によっては30%を切るものも出ています。
佐々木)「選挙まで持たない」と言われ、「岸田下ろし」というような話も出ていますが、それはそれで「どうなのかな」と思います。民主党政権になる前の数年間、1年おきに総理が代わって安定しない時期があったではないですか。対外的にも「1年おきに代わる首相は信用できない」と言われて。
飯田)そうでしたね。
佐々木)その時代には戻りたくないわけです。だから簡単に「岸田下ろし」と騒ぐのもどうかと思うけれど、一方でこの体たらくでは「経済を安定して回していけない」という不安もあり、我々は一体どうすればいいのか。悩ましいですよね。
財務省 2025年以降は「賃金が物価に追いつくから減税しなくていい」ということか
佐々木)岸田さんは安全保障・外交に関して、しっかりと手立てを打ってきているから、そこは評価するべきです。しかし、インフレが進行して経済がなかなか回らない状況のなかでは、信用ならんなと思います。
飯田)安全保障・外交はいいのだけれど。
佐々木)おそらく財務省などが考えているのは、いま実質賃金が下がっている。要するに、物価上昇に賃金が追いついていないのですが、いずれ追いつくと思っているのではないでしょうか。だから1回限りで、再来年(2025年)以降は「おそらく賃金が追いついてくるから減税しなくてもいい」という発想なのだと思います。でも、どうなるかは誰にもわからないわけです。
アジア・中東・ヨーロッパの3ヵ所で戦争が起きてしまう危険性がある状況で「物価高が沈静化する」根拠は何なのか
飯田)日銀の展望レポートを見ても、2024年度に関しては消費者物価指数の見通しが約2.8%とかなり厳しいけれど、2025年になると1%台に戻るという感じです。
佐々木)それもあまり根拠がないですよね。
飯田)7月の見通しと比べると、2024年だけ「ビョーン」と上がったという。
佐々木)世界的な情勢ではウクライナ侵攻があり、ハマスとイスラエルの戦争が始まってしまって、下手をすると台湾侵攻も起こるかも知れないという状況です。アジア・中東・ヨーロッパの3ヵ所で戦争が起きてしまう危険性があり、ますますエネルギーや食料品が値上がりするかも知れない。
飯田)世界的に奪い合うと。
佐々木)この状況で「物価高が沈静化すると考える根拠は一体何なのか」と思います。
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