中国AI 「プライバシー関係なく」技術を進め、アメリカを抜く可能性も
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年11月1日 18時30分
中国の習近平国家主席(南アフリカのヨハネスブルク)
ジャーナリストの佐々木俊尚が11月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国が提唱する「グローバルAIガバナンス」について解説した。
中国「グローバルAI秩序」提唱、アメリカに対抗
中国の習近平国家主席は10月31日までに、世界各国とAIの秩序ある発展を目指す「グローバルAIガバナンスの提唱」を発表した。中国は国内でAI規制を強めており、提唱を国際社会に浸透させ、アメリカに対抗してAI分野の主導権を握りたい考えとみられる。
飯田)一方でアメリカのバイデン政権は、AIの安全性に関する新基準などを盛り込んだ大統領令を公表しています。この分野でも米中対立になるのでしょうか?
佐々木)ChatGPTのような生成AI、対話するAIをどうつくるかは全部オープンに公開されているので、日本でも生成AIをつくる企業や研究所が出てきています。
飯田)ビジネスに特化したものも出ています。
習近平主席や天安門事件については答えない中国の生成AI
佐々木)基本的にデータを大量に用意し、それを読み込ませるやり方自体は既にわかっているので、誰でもできるのです。中国の企業もたくさんつくっているのですが、いろいろ調べてみると、習近平主席や天安門事件について聞いても答えてくれないそうです。当然でしょうね。
宗教観が影響し、「AI規制論」が浮上するアメリカ
佐々木)「テクノロジーをどこまで進めるのか」は難しい議論になっています。例えば、FacebookやGoogleは個人のパーソナルデータを集めて、広告ビジネスやマーケティングデータなどに活用しています。それに対して、「人を監視して得たデータをもとに経済を回している」と批判する『監視資本主義』という本も出ており、ベストセラーになっています。そういうビッグ・テック企業が批判される流れが、この5年くらいで起きています。
飯田)FacebookやGoogleなどが。
佐々木)その流れのなかで、生成AIも大量に集めたインターネットのデータを読ませているので、どうしてもフェイクニュースなどがそのまま出てしまうという問題があります。特にアメリカなどがそうですが、キリスト教の影響が強いので、「人間そのもの」のようなAIをつくるのはいかがなものかと。「我々は神ではないので、人間そのもののようなAIをつくってはいけないのではないか」という宗教観が影響し、生成AIに対してかなり警戒的になっています。だからアメリカでは、「AI規制論」のようなものが浮上しているのです。
プライバシーに関係なく、AI技術を進める中国 ~将来的には中国に抜かれる可能性のあるアメリカ
佐々木)しかし、中国は基本的にプライバシーデータを気にしません。国を挙げて個人の監視をしている状況ですから、今後も積極的にAI技術を進めていくでしょう。そう考えると、いまはアメリカが圧倒的に強いのですが、AIに関しては将来的に中国に取って代わられる可能性は0ではない。ここ数年、それが懸念されています。
1つの企業だけが先端的にAIを独占してしまうと、圧倒的に強大な力を持ってしまう可能性も
佐々木)何が問題なのかと言うと、生成AIの元になっている「大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)」は、深層学習でAIに大量のデータを読ませるというやり方をしており、それは全部オープンにされています。なぜオープンにするかと言うと、AIの研究者や技術者の間では、AI技術をクローズドにしてしまうと危ないと考えられているのです。
中国だけが強大なAIを持ったらパワーバランスが完全に崩れる
佐々木)1つの国だけ、あるいは1つの企業だけが先端的にAIを独占してしまうと、圧倒的に強大な力を持ってしまう可能性があります。一時、アメリカのヘッジファンドがAIを活用しているという話がありました。ものすごく速いスピードで投資して、株価の上下動に合わせて「パッ」と買うというような。しかし、ヘッジファンド1社が強力なAIを独占してしまうと、そのヘッジファンドだけが株価で大儲けできてしまう。実際に、一時ヘッジファンドがAI技術者をかき集めていた時代があるのです。
飯田)そうなのですね。
佐々木)とても批判されて、いまはそうでもなくなっていると思いますが、「なるべく1社に独占させないようにしよう」というのがAI技術者の間での主要な考え方です。ただ、ChatGPTをつくった米OpenAI社は技術を公開していません。
習近平氏が「グローバルAI秩序を」と言っても乗る国はない
佐々木)一方、Facebook改めMetaがつくっているAIはオープンソースになっており、せめぎ合いが常にあるのです。これをやっておかないと、中国だけが強大なAIを持ったらどうなるのかと考えたら、完全にパワーバランスが崩れる可能性があるので危険です。
飯田)中国だけが。
佐々木)アメリカが中心になり、公開して「オープンソースにするのか、あるいは独占するのか」という議論はあるにしろ、きちんと議論できる土壌をつくっておかないと、アメリカ企業だけ、あるいは中国企業だけが独占するような状況にはなって欲しくない。習近平氏が「グローバルAI秩序を」と言っても、中国のAIが完全に世界を覆い、それを習近平氏がコントロールするような状況はディストピア以外の何物でもないので、これに乗る国はないと思います。そうは言っても、アメリカで規制論が台頭している状況のなか、中国が先を行ってしまう可能性もあるので、相当警戒する必要があります。
ChatGPTのような生成AIを信頼する日本人
飯田)アメリカの大統領令でも、安全保障に関しては政府への通知を義務づけています。それ以外のところは開発を進めて欲しいと、2つに分けるような趣旨です。
佐々木)有名なAI研究者のジェフリー・ヒントン氏さえ、「いまのAIは危険すぎるので、このまま放っておくと危ない」と言っています。一方で、日本人は意外とChatGPTのような生成AIを信頼している人が多いのです。日本はいままで、テックに関して後ろ向きな人が多かった。
飯田)積極的に進める感じではありませんでした。
佐々木)「テクノロジーが怖い」と言って、アメリカや中国に比べるとテクノロジーに乗れないところがあったけれど、今回の対話型AIに関してだけは、世論調査によると日本人はとても前向きです。私は「ドラえもん」と「鉄腕アトム」のおかげなのかなと思います。喋るAIに関して、我々は期待感が高い。
飯田)なるほど。
佐々木)テックに乗り遅れている日本ですが、このノリを上手く活かし、AIの世界では前のめりに進んで「アメリカと肩を並べることができなくもないかな」と、個人的には期待しています。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「AIは予測困難なリスクも」 習近平氏、世界ネット大会で演説
共同通信 / 2024年11月20日 19時59分
-
グローバルサウスへ協力「拡大」 中国・習氏「保護主義に反対」
共同通信 / 2024年11月19日 10時32分
-
APEC首脳会議の習近平主席「トランプ氏再登場」を意識した言動目立つ
RKB毎日放送 / 2024年11月18日 14時57分
-
習近平主席、マレーシアのアンワル首相と会談―中国
Record China / 2024年11月8日 16時50分
-
日本は「華夷(かい)秩序」を重んじる中国にどう向き合うか? 答える人 拓殖大学顧問・渡辺利夫
財界オンライン / 2024年11月7日 18時0分
ランキング
-
1浜名湖で「幻」のメスのウナギ養殖に成功、肉厚ふっくらで脂乗りの良く…新ブランド「でしこ」として初出荷
読売新聞 / 2024年11月30日 7時32分
-
2秋篠宮さま、59歳の誕生日 皇族数の確保策に「生身の人間なので」
毎日新聞 / 2024年11月30日 0時0分
-
3【釈明】自民・田畑議員「不適切な党員登録や党費の支払いは計262人」
KNB北日本放送 / 2024年11月29日 21時33分
-
4スーパーにクマ侵入、従業員1人が顔にけが負い病院に搬送…店内に居座り続ける
読売新聞 / 2024年11月30日 11時49分
-
5野田立民代表、所信表明は今回も「スカスカ」=国民民主は政策実現要求
時事通信 / 2024年11月29日 19時16分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください