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李克強氏追悼が政治運動につながることはない

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年11月7日 11時40分

李克強氏追悼が政治運動につながることはない

日中首脳会談 共同記者発表に臨む、中国の李克強首相 =9日、東京・元赤坂の迎賓館 

外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が11月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国の李克強前首相の死去について解説した。

日中首脳会談 共同記者発表に臨む、中国の李克強首相=2018年5月9日、東京・元赤坂の迎賓館 写真提供:産経新聞社

日中首脳会談 共同記者発表に臨む、中国の李克強首相=2018年5月9日、東京・元赤坂の迎賓館 写真提供:産経新聞社

中国の李克強前首相が死去

飯田)宮家さんには先週(10月27日)もご出演いただきましたが、番組のエンディング直後に中国の李克強前首相が死去したという速報が入ってきました。驚きましたね。

宮家)彼は共産主義青年団(共青団)のトップでもあり、総書記になってもおかしくなかった人ですが、経済を中心に活躍しました。しかも経済学博士なので、しっかりとした政策で中国経済を国際水準に近付けました。規制緩和し、自由化するところは自由化して、中国経済を健全なものにしようとしていたことは間違いないと思います。

飯田)経済政策が注目されました。

宮家)習近平政権になって、過去2期10年、彼は首相だったわけです。しかし、中国で経済の政治化はさらに進み、貧富の差が広がり、バブルはいつ弾けるのかわからない。そこで彼がやらなければいけないことは多くあったはずなのですが、恐らく思うようにできなかったのではないでしょうか。

李克強氏の追悼が体制批判の政治運動につながらないよう警戒を強める当局

宮家)それは中国の国民もわかっていると思います。中国の内政は面白くて、まともな人が亡くなると、それ以外の人たちに対する不満が民衆にあった場合、亡くなったまともな人への追悼を機会に、国民の気持ちが爆発するときがあるのです。例えば文革の末期に周恩来さんが亡くなったときも、追悼で大きな動きが起きそうになりました。

飯田)天安門広場に花がたむけられていたという。

宮家)あれが「第1次天安門事件」と言われています。そのあとに胡耀邦さんが亡くなったときも、民衆の気持ちが花束になりました。反政府運動にはなりませんでしたが、権力者からすると不気味な動きだったと思います。また、今回は当時よりも状況が悪い。貧富の差は広がり、成長率も下がってきている。若い人たちの失業率は「4割にまで達するのではないか」と言われていて、しっかりとした社会保障の制度もありません。しかも、せっかく買ったマンションは建たず、値段はどんどん下がっていく。こうなると民衆のガスが溜まるに決まっています。もし李克強さんの告別式で動きがコントロールできずに……。

飯田)人がたくさん集まりますからね。

宮家)このガスが爆発してしまったら大変なことになります。ですので、おそらく大事をとって厳戒態勢を取っているのだと思います。

共青団にも力はなく、李克強氏の追悼が国民の体制批判につながることはない

飯田)北京市内は厳戒態勢で、大学などにも「集まるな」というお触れが出ているそうです。

宮家)とにかく彼らはすぐに集まります。人口が日本の約10倍ですからね。日本なら100人集まるところが、1000人集まることになります。100人と1000人ではコントロールの仕方が違うので、ピリピリする気持ちはわかります。

飯田)そうですよね。

宮家)しかし、火が点くときは、その裏に政権内部上層部で李克強さんに連なるような、よりまともな人たちがいるものです。昔はそうした例がよくあったのですが、いまは全然ないと思います。いまの共青団の人たちには、あまり力がないので、いまのところガスが大爆発するような状況ではないでしょう。

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