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米中「AIリスク管理」に向けた国際協調で合意も「本音の部分」で譲ることはない

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年11月8日 11時30分

米中「AIリスク管理」に向けた国際協調で合意も「本音の部分」で譲ることはない

バイデン米大統領(右)と中国の習近平国家主席(インドネシア・バリ島)

外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が11月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。英政府主催で行われた「人工知能(AI)安全サミット」について解説した。

バイデン米大統領(右)と中国の習近平国家主席(インドネシア・バリ島)=2022年11月14日 AFP=時事 写真提供:時事通信

バイデン米大統領(右)と中国の習近平国家主席(インドネシア・バリ島)=2022年11月14日 AFP=時事 写真提供:時事通信

アメリカと中国がAIのリスク管理に向けた国際協調で合意

イギリス政府が主催した「人工知能(AI)安全サミット」では、日米中を含む28ヵ国と欧州連合(EU)がAIのリスク管理に向けた国際協調の必要性で合意した。特にAI開発で先行するアメリカと中国が連携に前向きな姿勢を示したことは大きな成果と見られている。

飯田)地元イギリスからはスナク首相、アメリカからはハリス副大統領などが出席しました。岸田総理もオンラインで参加したそうです。

米中が協力できる「小さな一部分」がAI

宮家)イギリス政府はそれなりに一生懸命やったのだと思いますし、一種の成果なのでしょう。しかし、アメリカと中国の問題はAIだけではありません。AIについてはいろいろな議論があり、米中間にはまだ協力の余地はあると思いますが、アメリカ政府が一貫して言っていることは、「中国に対して言うべきことは言う」ということです。

飯田)言うべきことは言う。

宮家)決して対立するのではなく、あくまでも競争する。その上で「協力できる分野があるなら協力しよう」と言っているだけで、その最後の部分が例えばAIなのです。しかし、「最後の部分」がどれくらい大きいのかと言うと、ほんの少しです。真っ暗闇のトンネルのなかで光が「フッ」と見えてきた感じです。そのくらいアメリカと中国の問題はこじれています。

ウクライナ情勢とイスラエル・パレスチナ情勢でアメリカの能力がどのくらい低下しているかをテストする中国

宮家)中東で付いた火が湾岸に波及してしまうと、アメリカは欧州でもウクライナで手一杯、中東の方でも手一杯になってしまいます。そのような状況になれば中国は、「アメリカの能力がどのくらい低下したのか、どのくらいやる気があるのか」を必ずテストします。実際にテストはもう始まっているでしょう。

飯田)既に。

宮家)フィリピン船に中国公船が南シナ海でぶつかっています。流石に台湾へ手を出すのは、少なくとも台湾総統選挙が終わるまでは待つと思いますが、既に南シナ海などでは相手をテストしているのです。アメリカの偵察機に対して約6メートルまで近付き、中国空軍の戦闘機が米側を威嚇したこともありますが、それもテストです。

飯田)中国によるテスト。

宮家)我々は「欧州と中東、インド太平洋地域は連動している」ということを念頭に置かなければなりません。その意味で、アメリカと中国が対話することはけっこうです。対話して、お互いに相手の出方を読み間違えないようにしておかないと、無駄な戦闘が起きてしまいます。それは避けなければいけませんが、AIだけでアメリカと中国の複雑な状況が解決するとは思えません。

AIについて「国際協調で協力する」と言っても、本音の部分で米中が譲ることはない

飯田)一方でアメリカも、AIの安全性に関する大統領令を出しています。中国側も「グローバルな秩序を我々主導でつくっていく」というメッセージを出している。

宮家)中国主導で進めても、活動が自由にはならないから困るのです。その意味ではAIの問題で協力することも重要ですが、本音はアメリカも中国も「AIを安全保障上、どう軍事的に使うのか」という部分で、まだ完璧な応用ができていないので、まさに熾烈な競争をしているところです。

飯田)米中間で。

宮家)「国際協調で協力する」と言っても、本音の部分では絶対に譲らないと思います。それでも相手の意図を読み間違えることがないよう、対話の努力は続けて欲しいと思います。余計な暴発までされたら困りますからね。

アジアの国々にとって、ガザで起きていることは対岸の火事ではない

飯田)日本としては安全保障環境を考えると、三正面のなかでも、アメリカをインド太平洋にきちんと引き付けておかなければいけませんよね。

宮家)日本だけではなく、韓国やフィリピンもみんなそうです。アジアの国々はガザで起きていることを、固唾を呑んで見ておくべきだと思います。決して対岸の火事ではありません。

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