なぜ「所得税」減税を今国会で処理しないのか「理解できない」 高橋洋一が言及
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年11月8日 17時40分
数量政策学者の高橋洋一が11月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2023年度の補正予算案について解説した。
政府、11月10日に補正予算案を閣議決定へ ~賃上げなどに13兆1000億円
松野官房長官は11月7日の記者会見で、経済対策の裏付けとなる令和5年度補正予算案を10日に閣議決定する見通しだと明らかにした。賃上げや国内投資の促進を目指す総合経済対策の裏付けとなる補正予算で、一般会計で13兆1000億円ほどを計上する。
飯田)この予算案は20日をめどに臨時国会に提出され、11月下旬以降の成立を目指す方針です。13兆1000億円という規模の数字が出ていますが、どうご覧になりますか?
「真水で10兆円」は少ない ~需給ギャップは20兆円
高橋)まず「真水でどのくらいか」を見なければいけませんが、わかりにくいですね。真水というのは、GDPの押し上げに期するものですが、既存経費を振り替えていると思うので、そこは引かないといけません。そうすると10兆円ぐらいだと思います。
飯田)振り替えた既存経費を差し引くと。
高橋)GDPギャップを見ると、政府は「ギャップはない」と言っていましたが、過去にも2%ぐらい需要超過になったけれど物価が上がらなかったことがあります。最近のGDPの改定などを含めて考えると、おそらく3%以上あると思います。
飯田)3%以上。
高橋)17兆円ぐらいあるはずです。4~6月期で見るとそのぐらいの数字ですが、7~9月期はもう少し下がっているから、多分20兆円ぐらいだと思います。20兆円の需給ギャップがあって、10兆円レベルの真水だと考えると、少ないですよね。
今国会で処理すれば12月に所得税減税が行われるはず ~なぜ、2024年6月にずらすのか理解できない
高橋)タイミングもあります。「なぜこんなに少ないのか」と思いますが、来年(2024年)度に所得税減税をするという話は、「所得税減税が来年度になってしまった」ということです。6月になってしまった。年末には間に合わないという形になっていますが、よくわからないですね。今国会で全部処理してしまえば、実は12月に所得税減税が間に合うはずなのです。おそらく、わざとずらしているのだと思います。需給ギャップをわざわざつくって、(所得税減税を)後ろにずらすというのは、経済政策としてよくわかりません。
飯田)少し前までは、「所得税の減税も含めて17兆円」などと言われていましたが。
高橋)一気に出ればいいのだけれど、それを2つに分けてしまうということです。
所得税減税が2024年6月になったのは、「税制調査会があるから」という理由は国民にはわからない
高橋)税制の話は「税制調査会があるから」という、国民にとっては訳のわからない理由なのですが、それであと回しにして、来年の6月なってしまうわけです。12月に行うものと、6月に行うものを合わせて17兆円という説明ですが、2つに分けることに関しては説明がありません。
飯田)なぜ分けるのか。
高橋)こういうときは「12月にいくらやる」というスケジュールを先に決めるのですが、新聞を読んでもよくわかりません。もし私だったら単純に、「12月までにいくらやる」と言って終わりです。12月までにいくらやるかを考えるとき、先ほどの需給ギャップの話と、7~9月期のGDPの伸び悩みを加味して、20兆円レベルだと思うわけです。「20兆円レベルをどれだけ埋めるか」という数字がポイントですが、そう考えると10兆円ぐらいです。「17兆円」と言っていますが、「あとで来る」というのはおかしいですね。
飯田)すぐに来るかと思ったら、来年6月になってしまった。
所信表明で「減税」が出てこないということは、「来年度の予算送りになる」ということ
高橋)税制の話については、岸田さんが所信表明で「税制調査会に」と言ったから、悪い予感がしたのです。税制調査会というと、来年度の通常国会に合わせて出すので、臨時国会には出てきません。臨時国会に出てこないのだから、所信表明のときに税制の話ができなかったのです。記者会見などで触れただけでしょう。もし所信表明で言っていたら「では今回出すのか」と思うけれど、わざと言わなかったのでしょうね。
飯田)所信表明の文言を見ると、減税という言葉は出てこない。
高橋)経済対策では出てくるけれど、「所信表明で出てこないということは、来年度の予算送りだな」と思いましたが、その通りでした。だから経済対策を打ち出したときに、みんな誤解したのです。「今国会で終わるのではないか」とみんな勘違いするのですが、それは違います。
飯田)税制の話は前倒しできなかったのでしょうか?
高橋)それをやるのが政治なので、12月に区切り、「12月に補正予算の補助金支出と減税をやれ」と指示すればいいのです。しかし、指示しなかったということでしょう。
所得税減税を含めて12月に対策を打たなければいけないのだが ~税制調査会が「YES」と言わない
飯田)9月の家計調査によると、2人以上の世帯の実質消費支出は前年同月比2.8%減と、7ヵ月連続で減少しています。当然、財布の紐は固くなりますよね。
高橋)7~9月期のGDPはあまりよくないと思います。少し下がるのではないかな。GDPギャップも広がって、20兆円ぐらいを想定しながら、12月に対策を打たなければいけないという答えが出てきます。
飯田)12月に。
高橋)しかし、そうなっていません。経済政策としては、いいタイミングを逃してしまっています。どうせ打つなら前に打つべきです。税制調査会が「YES」と言わなかったと言うのだけれど、税制調査会は自民党内の機関でしょう? 総裁ならば「YES」と言わせられるのではないかと思いますが。
飯田)総理は自民党総裁も兼ねていますからね。
高橋)安倍さんも税制調査会の扱いにはいつも困っていました。税制調査会の会長は岸田さんのいとこですからね。
飯田)宮沢洋一さん。
1回だけの所得税減税 ~1回だけならば今国会で処理する方がいい
飯田)所得税減税は1回だけなのですか?
高橋)1回だけですよ。1回だけなのであれば、「この臨時国会で終わらせてしまえ」という話です。なぜ通常国会に回すのか、理解できません。税制改正の内容も簡単なのに。1回だけなら、臨時国会で処理する方がいいのです。
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