映画は社会を変えられる! 「第36回東京国際映画祭」レポート
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年11月11日 11時30分
【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1145回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
10月23日~11月1日まで開催された「第36回東京国際映画祭」。私は毎年、MCとして映画祭を盛り上げさせていただいています。
コンペティション部門審査委員長にヴィム・ヴェンダース監督を迎えた2023年は、219本の映画を上映。監督やキャストを迎えたイベントやトークセッションは、映画ファンとの交流の場として盛り上がりました。
そこで今回は、八雲ふみねの視点から「第36回東京国際映画祭」を深掘りします。
205名のゲストが参加! 華やかなレッドカーペット
映画祭の幕開けを告げる、レッドカーペットイベント。洗練された雰囲気に包まれた日比谷仲通りに色鮮やかなカーペットが設けられ、国内外から多くのゲストが集結しました。
もちろん、八雲ふみねは今年(2023年)も参戦。ニッポン放送 NEWS ONLINE「Tokyo cinema cloud X」のカメラの前で立ち止まって下さった多くの映画人に、お話を伺いました。
日比谷の街に、ゴジラ降臨。クロージング作品『ゴジラ-1.0』から、浜辺美波さん。
「このチームで映画祭に参加できて嬉しいです」と、とびっきりのスマイル。ゴジラステッカーを配りながら、メディアやファンとの交流を深めていらっしゃいました。
私も、貴重なゴジラステッカーをいただきました! ありがとうございました!!
韓国発の大人気ウェブコミックを実写映画化。Prime Videoにて世界独占配信中の『ナックルガール』。
「チーム一丸となってつくり上げた自信作です!」と語るのは、窪塚洋介さん。そのスタイリッシュな姿は、レッドカーペットでも輝いていましたよ。
複数の作品が上映されるゲストは、その作品の数だけ、レッドカーペットを歩きます。
城定秀夫監督特集「映画の職人 城定秀夫という稀有な才能」で上映された『ビリーバーズ』、そして『正欲』。2つの出演作とともに映画祭への参加となった、磯村勇斗さん。
城定秀夫監督特集チームと『正欲』チーム、それぞれ異なる衣装を着用して登場し、映画ファンの注目を集めていました。
「第80回ヴェネチア国際映画祭」にてNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞。海外の映画祭で高い評価を受けた映画『ほかげ』の塚本晋也監督。
レッドカーペットは慣れていらっしゃる? と思いきや、「ホームとも言える日本・東京でのレッドカーペットは、身が引き締まる思いです」とのこと。
「近年、世の中が“きな臭く”なってきたように感じます。この作品は、祈りの映画。その祈りが少しでも届けば……」と、作品に込めた思いを話して下さいました。
2023年は、小津安二郎監督の生誕120年。それを記念して、初期に発表されたサイレント映画6作をオムニバスドラマとしてリメイクした「連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~」。
私の姿を見つけると、「わぁ、こんにちは!」と、満面の笑顔で足を止めて下さったのは、第3話「非常線の女」に主演した前田敦子さん。「昨年に続いての参加ですが、まだまだ緊張しますね」と言いながらも、映画祭の雰囲気を堪能している様子でした。
原作は、朝井リョウのベストセラー小説。家庭環境、性的指向、容姿など、さまざまな理由で生きづらさを抱える人たちが生き方を模索していく『正欲』。
2022年の『窓辺にて』に続いての映画祭参加となった主演・稲垣吾郎さんは、「再び戻ってくることができて光栄です」とコメント。
稲垣さんの向こう側に見えるのは、シャープなブラックコーデが一際目を引いた新垣結衣さんです。
ポスタービジュアル監修を務めたコシノジュンコさん。そして、今年度の映画祭ポスターで“親子共演”が実現した、フェスティバル・ナビゲーターの安藤桃子監督と奥田瑛二さん。
「3人でファッションショーよ」というコシノジュンコさんの言葉どおり、何ともゴージャスな3ショットです。
「我が家は映画人一家。こうして娘と一緒にレッドカーペットを歩くのは、感慨深いものがありますね」と、奥田さん。そして安藤監督は「映画体験を通じて、多くの人と交流できれば」と、意気込みを語って下さいました。
イベントラストに登場したのは、オープニング作品『PERFECT DAYS』のキャスト・スタッフ、総勢23名。「Hello!」と、チャーミングな笑顔でカメラの前に来て下さったのは、今年度コンペティション審査委員長も務めたヴィム・ヴェンダース監督。
『PERFECT DAYS』は、東京・渋谷を舞台に、公衆トイレ清掃員の日常を映し出したヒューマンドラマ。主演の役所広司さんが「第76回カンヌ国際映画祭」で最優秀男優賞を受賞したことでも話題となった一作です。
「やっと東京に『PERFECT DAYS』を持ってくることができたよ!」と、ご機嫌のヴェンダース監督でした。
八雲ふみねも注目! 厳選シネマ5
連日、さまざまなイベントが開催された「第36回東京国際映画祭」。私も会期中は、映画祭に訪れたゲストの皆さんとご一緒し、映画トークを展開。刺激的な時間を過ごさせていただきました。
そのなかから、八雲ふみねが注目した作品は……。
JFK/新証言 知られざる陰謀【劇場版】
第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディの暗殺事件から60年。新たに解禁された機密文書をもとに、オリヴァー・ストーン監督が事件の真相に迫ったドキュメンタリー映画『JFK/新証言 知られざる陰謀【劇場版】』。
写真は、上映後に行われたトークセッションの様子。右から、映画ジャーナリスト・斉藤博昭さん、朝日新聞記者・藤えりかさん、司会・八雲ふみね。
藤さんはアメリカ・ジャーナリズムの視点から、斉藤さんは映画的な観点から本作を分析。2023年のいま、このドキュメンタリー映画を観るべき意義について語り合いました。
日本では安倍晋三元首相が殺害される事件が起こり、アメリカでは2024年に行われる大統領選挙に、ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏の無所属からの出馬が発表。そうした社会情勢を鑑みても、見逃せない一作です。
『JFK/新証言 知られざる陰謀【劇場版】』は、2023年11月17日(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。
ゴールド・ボーイ
動画サイト「iQIYI(アイチーイー)」で総再生回数20億回超えを記録した人気サスペンスを、日本で実写映画化。狂気に満ちた殺人犯と少年たちの心理戦を描いた『ゴールド・ボーイ』。
映画祭の開催直前に完成したばかりの作品が、世界初上映(ワールド・プレミア)となりました。
写真は、上映前の舞台挨拶にて。左から、前出燿志さん、星乃あんなさん、羽村仁成さん、金子修介監督、白金プロデューサー、企画の許曄さん、司会・八雲ふみね。お揃いの映画オリジナルTシャツに身を包んでの登壇となりました。
主演の岡田将生さんと対決する中学生役を演じた羽村仁成さん、星乃あんなさん、前出燿志さん。彼らの初々しい姿に、観客からは歓声が。
そして「エンターテインメントに国境はない。ボーダレスだということを伝えたくて、この映画をつくりました」という白金プロデューサーの言葉に大きな拍手が巻き起こり、会場は温かい空気に包まれました。
『ゴールド・ボーイ』は2024年春公開予定。
20000種のハチ(仮題)
「第36回東京国際映画祭」で新たに設立された、エシカル・フィルム賞。
本映画祭におけるエシカルの定義は、「人や社会・環境を思いやる考え方・行動」。今年度エントリーされたもののなかから「エシカル」の基本理念に合致する優れた作品に贈られるアワードです。
今回は、スペインで制作された『20000種のハチ(仮題)』が選出されました。
写真は、授賞式に出席したエスティバリス・ウレソラ・ソラグレン監督。本作は、自分の性別に悩みを持つ少年と、彼を見守る家族を優しい眼差しで映し出したヒューマンドラマ。
審査委員を務めた水野誠一さん(a・unエシカル百科店 スーパーバイザー/元西武百貨店社長)、坂口真生さん(a・unエシカル百科店 エシカルプロデューサー)、工藤里紗さん(テレビ東京制作局チーフ・プロデューサー)、渡辺一正さん(住友商事執行役員・メディア事業本部長)によるトークショーの終盤には、「何故、ハチをテーマにしたのか」と、審査委員が監督に質問を投げかける場面も。
ソラグレン監督は、「ハチは人を刺すとか怖いイメージを持つ人も多いかと思いますが、実はとても知的な昆虫。自然界のなかでは、多様性のシンボルでもあると感じています。なので、人間にもハチのような多様性が認められればいいなと思ったのです」と回答。審査委員の皆さんも、本作の奥深さに改めて魅了された様子でした。
本作は、邦題を『ミツバチと私』として、2024年1月5日(金)から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。
犯罪者たち
自らが勤める銀行で強盗を働いた男。完全犯罪を実現するために、彼が取った驚くべき行動とは……。
3時間を超える長尺の作品ながら、予測のつかないストーリーテリングで観客を惹きつけるアルゼンチン発のクライム・ムービーです。
写真は、観客とのQ&Aの様子。右からアルベルト・カレロ・ルゴさん(ラテンビート映画祭プログラミング・ディレクター)、エセキエル・ボロビンスキー プロデューサー。
日本から見ると地球の裏側に位置するアルゼンチン・ブエノスアイレスから、30時間かけて来日したボロビンスキーさん。「主人公たちの“その後”が気になります」と、続編を望む観客の声には思わずニッコリ。
「続編が東京国際映画祭で上映されるならば、そのときは、(監督やキャスト)みんなで東京に来たいですね」と、ユーモアたっぷりに答えていらっしゃいました。
違う惑星の変な恋人
サッカーワールドカップの裏で繰り広げられる、ちょっぴり厄介な男女5人による恋愛群像劇『違う惑星の変な恋人』。いま日本映画界で注目の新鋭、木村聡志監督の最新作です。
独自の世界観がクセになる、何とも愛おしい傑作がお目見えしました。
写真は、上映後のQ&Aにて。右から、直井卓俊プロデューサー、木村聡志監督、司会・八雲ふみね。
観客の皆さんからは細かなポイントを突いた質問が次々飛び出し、「え、そんなところまで観てたんですか!?」と、こちらが驚愕するほど。これぞ、木村監督作品マジック! 遅い時間の上映にもかかわらず、最後の最後まで白熱したトークが展開されました。
『違う惑星の変な恋人』は2024年1月26日(金)から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
「観測史上、最も暑い秋」となった2023年。そんな気候に呼応したかのように、例年以上に熱く、ホットな盛り上がりが感じられた「第36回東京国際映画祭」。
コロナ禍を乗り越えての開催となった今年は、海外からの作品ゲストも多数来日。活気が戻ってきた一方で、世界中で起こっている紛争の影を感じずにはいられない出来事も耳にしました。
連日、その情勢がトップニュースとして伝えられているイスラエルから、作品を代表して単身での来日を果たした俳優。プロデューサーと主演俳優は来日したものの、ご本人は兵役の都合で、どうしても来日が叶わなかったイラン国籍の監督。
東京の地に映画を届けることが、自国を知ってもらうことにつながる。ゲストの方々が内に秘めた覚悟と熱量に触れるたびに、私自身も感嘆せずにはいられない10日間でした。
エシカル・フィルム賞の授賞式での、エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン監督の言葉。これこそが、世界中の映画人に共通する信念なのではないでしょうか。
「映画には社会を変える力がある」
■JFK/新証言 知られざる陰謀【劇場版】
2023年11月17日(金)から、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
監督/出演:オリヴァー・ストーン
プロデューサー:ロブ・ウィルソン
脚本:ジェームズ・ディユジニオ
撮影:ロバート・リチャードソン
音楽:ジェフ・ビール
編集:カート・マッティラ
ナレーター:ウーピー・ゴールドバーグ、ドナルド・サザーランド
原題:JFK Revisited: Through the Looking Glass
配給:STAR CHANNEL MOVIES
(C)2021 Camelot Productions, Inc. All rights reserved. Photo: John F. Kennedy Presidential Library, National Archives
■ゴールド・ボーイ
2024年春、公開予定
出演:岡田将生、黒木華、羽村仁成、星乃あんな、前出燿志、松井玲奈、北村一輝、江口洋介
企画:許曄
製作総指揮:白金
原作:
紫金陳(ズー・ジンチェン)
小説「坏小孩」(The Gone Child)
ドラマ「隠秘的角落」(バッド・キッズ)
監督:金子修介
脚本:港岳彦
音楽:谷口尚久
英題:Gold Boy [黄金少年]
製作プロダクション:チームジョイ株式会社
配給:東京テアトル/チームジョイ
(C)2024『ゴールド・ボーイ』製作委員会
■ミツバチと私(TIFF上映タイトル『20000種のハチ(仮題)』)
2024年1月5日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
監督・脚本:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
撮影:ジナ・フェレル・ガルシア
美術:イザスクン・ウルキホ
編集:ラウル・バレラス
出演:ソフィア・オテロ、パトリシア・ロペス・アルナイス、アネ・ガバライン
英題:20000 Species of Bees[20000 Especies de Abejas]
配給:アンプラグド
(C)2023 GARIZA FILMS INICIA FILMS SIRIMIRI FILMS ESPECIES DE ABEJAS AIE
■犯罪者たち
監督:ロドリゴ・モレノ
出演:ダニエル・エリアス、エステバン・ビリャルディ、マルガリータ・モルフィノ
英題:The Delinquents
■違う惑星の変な恋人
2024年1月26日(金)から新宿武蔵野館ほか公開
出演:莉子、筧美和子、中島歩、綱啓永、みらん、村田凪、金野美穂、坂ノ上茜
監督:木村聡志
企画・キャスティング:直井卓俊
主題歌・劇中歌:みらん(NOTT/NiEW)
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
(C)「違う惑星の変な恋人」
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/
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