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大西卓哉宇宙飛行士、月面探査スペシャリストとしての期待

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年11月21日 17時20分

大西卓哉宇宙飛行士、月面探査スペシャリストとしての期待

「報道部畑中デスクの独り言」(第347回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、宇宙長期滞在が決まった大西卓哉宇宙飛行士について—

ガッツポーズの大西さん(オンライン画面から)

ガッツポーズの大西さん(オンライン画面から)

小生のいまの仕事は、科学技術、防災、経済、政治の担当記者として現場を走り回る一方、ニュースデスクとして現場から本社に上がってくる情報をまとめ、放送に反映させる業務を行っています。

本社では原稿の執筆・構成、現場からの音声の編集をし、スタジオに入り、自分の言葉でニュースを伝えます。現場では取材に加えて音声収録・編集・送信も行います。

その他、以前は2年半ほど番組のディレクターを務めたこともあります。いわば「一人何役」もこなしているわけですが、規模の小さいラジオ局のフットワークと言えるかも知れません。僭越ながらこれらの経験で、放送に臨むにあたり、複眼的な見方が養われたと思います。

宇宙飛行士もそんな思いを持つのでしょうか。JAXA宇宙飛行士の大西卓哉さんが再来年(2025年)ごろ、宇宙に長期滞在することがこのほど発表されました。

「私たち宇宙飛行士にとって、宇宙というのはいちばんの現場。そこに戻れることを大変うれしく思っている」

日本時間11月15日、アメリカ・ヒューストンとオンラインで結んだ記者会見で、大西さんは率直な心境を語りました。大西さんは2009年に宇宙飛行士候補者として選抜され、7年の訓練を経て2016年に初の宇宙長期滞在に臨みました。そのときに感じたことがフライトディレクターの重要さだと言います。

「宇宙飛行士という仕事とフライトディレクターという仕事が、車の両輪というか、息を合わせて回ることで、初めて国際宇宙ステーションという車が前にまっすぐ進めることを感じた」

長期滞在から帰還後、大西さんはフライトディレクターとして数年間過ごしました。宇宙飛行士から見える景色とは違います。経験で大西さんが得た“財産”は何だったのか……。

「地上の動きがしっかりわかっていること。宇宙飛行士が国際宇宙ステーションで担当している作業は、運用全体から見るとほんのひと握りの作業で、その裏でどれだけの作業が地上で計画され、行われているかを肌で感じている」

まさに、ラジオでいうところのパーソナリティとディレクターの関係のようです。

記者会見する大西卓哉宇宙飛行士(オンライン画面から)

記者会見する大西卓哉宇宙飛行士(オンライン画面から)

さらに今年(2023年)9月、大西さんはヨーロッパで「パンゲア訓練」なるものにも参加しました。大西さんによれば、月面探査を模擬したような訓練で、地質学者と連絡を取りながら撮影した写真を転送し、学者が分析や指示を出し、宇宙飛行士が探査を実行するというものです。

そこには多くの岩石サンプルを観察したあと、実際に峡谷で採取された岩石を観察し、識別する訓練、地質学の専門用語の習得などが含まれます。「脳みそフル回転」の訓練だそうです。そして、こうした岩石による地層を口頭で描写し、その情報を基にスケッチする訓練も行われました。

「(月面では)目の前にある岩石、地形を目にしているのは私たちしかいない。いかにポイントをつかんで地上の研究者に伝えられるか。まずは自分たちが地質学的な、基本的な素養を身につけておかないと発見ができない」

こちらも妙な親近感を感じました。目の前のものをその場にいない人にどう伝えるか……ラジオの中継でも求められるスキルだからです。

数々の経験を経た大西さん。今回の滞在でこだわりを見せるのは、前回経験しなかった船外活動です。

「この先、月面での活動となると、必須になってくるのが船外活動のスキル。今回の長期滞在でぜひチャンスを獲得して経験を積みたい」

これまでも滞在前に船外活動に意欲を示す日本人宇宙飛行士はいましたが、記憶の限り、ここまで明確に将来の月面探査を見据えた発言はなかったと思います。

「月面着陸にすごくあこがれていた1人として、私自身、月面というものに興味を持っている。機会があれば狙ってみたい」

フライトディレクターやパンゲア訓練という経験に裏打ちされた大西さんの発言には、ただの意欲だけではない、目標に向かって突き進む「本気度」を感じます。

記者会見の最後に、宇宙飛行士訓練生から初飛行までの7年間、帰還から今回の2回目の宇宙滞在決定までの7年間の違いを聞きました。

「(最初の7年間は)目の前に一本の“訓練”というレールが敷かれていた。敷かれたレールに乗っかって進んでいるうちに、気づいたら初飛行のときが来ていた」

「(その後の7年間は)訓練を地道に積んできた。いい意味ですごく自分の肩の力が抜けているように思う。どこに力を入れ、集中してやっていかなくてはいけないかが見えた状態で訓練に臨むのは大きなアドバンテージ」

現在47歳の大西さんは、「7」という数字に縁があるのでしょうか。ぜひ、ラッキーナンバーであることを祈ります。そして、足掛け14年に及ぶ期間は、大西さんが1つ上のステージに成長するに十分な期間だったようです。それは、将来の月面探査スペシャリストへの期待とも言えます。(了)

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