北朝鮮「ミサイル発射」 「最高度の表現」で非難を繰り返しても抑止することはできない
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年11月22日 17時55分
18、19の両日、戦術核運用部隊の核反撃を想定した総合戦術訓練を視察する金正恩朝鮮労働党総書記ら※右端の人物には提供時からモザイク処理がしてあります
元航空自衛官で評論家の潮匡人氏が11月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北朝鮮のミサイル発射について解説した。
北朝鮮がミサイルを発射
日本政府は北朝鮮が北西部沿岸地域の東倉里地区から11月21日夜10時43分ごろ、弾道ミサイル技術を使用した発射を強行したと発表した。「現時点では地球周回軌道への衛星の投入は確認されていない」としている。政府は沖縄県に対して全国瞬時警報システム(Jアラート)、地方自治体や報道機関に対して緊急情報ネットワークシステム(エムネット)で発射や通過の情報を発信した。
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飯田)今回のミサイル発射は、予告していた11月22日午前0時から、1時間あまり前倒した形です。
潮)振り返ってみると、これまでも北朝鮮は「6月に」と言いつつ、5月の段階で打ち上げを強行したこともありました。過去、政府高官の発言として「事前に通告する必要はない」という強弁も語ってきた国ではあるのですが、敢えて今回、自ら設定した予告時間から1時間強の前倒しを行ったのは、何らかの北朝鮮なりの理由があったのだと思います。
飯田)現時点で情報は限られますが、どういった理由が考えられますか?
潮)北朝鮮としては、日米韓の今回の連携があり、特にそれぞれの防衛当局の準備など、いわば裏をかいて「まさかこの時間に撃つと思ってはいないだろう」と考えている節があると思います。それ以外にも天候・気象条件も影響しているとすれば、例えば「あと1時間ほど待っていると強い風が吹く」など、打ち上げには適さない天候になることをおそれた可能性もあると思います。
軍事偵察衛星としての打ち上げは失敗だが、「事実上の弾道ミサイル」としては成功と評価できる
飯田)日本政府の発表によれば、軌道への衛星投入は確認されていないそうです。これを持って失敗と言えるのかどうか。その辺りの評価はいかがですか?
潮)彼らが主張する通り、軍事偵察衛星の打ち上げという側面から見れば失敗だったと思います。少なくとも衛星軌道に乗っていないので、成功したとは到底言えません。しかし、特に日本メディアでは「事実上の弾道ミサイル」という表現が多用されますが、その側面から見ると、必ずしも失敗とは評価できない。むしろ成功したと評価してもよい、というような飛行経路だったと思います。
飯田)これによって、弾道ミサイル技術は相当なものを獲得したと見た方がいいですか?
潮)特に今回、彼らが主張する人工衛星の発射という側面からみても、今年(2023年)の2回、エンジン部分の不具合だと彼らが発表した問題自体は解消された可能性があります。技術としては進展していると考えるべきです。
飯田)アメリカ本土、特に東海岸まで届くものなど、そういった技術を完全に獲得したと見ていいですか?
潮)彼らが特に人工衛星とは言わず、ICBMだと認めてきた火星シリーズについても、既に米本土全域をカバーする能力を獲得していると考えるべきです。
飯田)より精度が上がったという見方もできますか?
潮)今回どこまでの支援があったのかはわかりませんが、ロシアから一定の軍事的・技術的支援があったと考えられています。それらも含め、これまでよりは技術的に進展しているのだと思います。
国連の常任理事国であるロシアが支援しているのであれば、看過できない
飯田)日本も韓国も批判していますが、アメリカも国家安全保障会議のワトソン報道官が「国連安保理決議違反だ」と強く非難しています。今後はどんな動きが考えられますか?
潮)もちろん日米韓の3ヵ国はこの事態を深刻に受け止め、さらに連携を深める必要があります。具体的には、こういった事案が起きるたびにリアルタイムで情報を共有する。そのシステムも当局で詰めているようなので、早晩、体制が確立されると思います。いずれにせよ国連安保理決議に違反しているので、仮に国連の常任理事国であるロシアが何らかの支援を行っているとすれば、重大な責任を帯びた理事国による行為ということになり、我々としては看過できないと思います。
飯田)もし安保理常任理事国が技術まで支援していたことになれば、それ自体が決議違反ですよね。
潮)そう思います。ただ、半分冗談で申し上げれば、2022年のウクライナ侵攻を思い出すと、いまさら彼らにそんなことを言っても仕方がないと自嘲的につぶやきたくもなりますが。
最高度の表現で非難を繰り返しても北朝鮮の行為を抑止することはできない
飯田)当然ながら、国連安保理は機能しないということですか?
潮)そうですね。
飯田)となると、この先は違うルートでプレッシャーを掛けていく必要がありますか?
潮)そうですね。先ほど申し上げた発射情報のリアルタイム共有などは、軍事的にも非常に意味のあることです。一方で、政府がいくら最高度の表現で非難したとしても、これまでも(北朝鮮は)繰り返しているので、非難だけではこういう行為を抑止する力にはなり得ません。
核弾頭が搭載されるという可能性を含めて真剣に対応を考えなければならない
飯田)ミサイル防衛の形で、飛んできたものへの対策は一生懸命やっていますが、それだけで足りるのか。そういう問題になってきますか?
潮)そもそも発射自体を抑止しないといけません。最新版の防衛白書などにも、北朝鮮は我が国を射程範囲に収めるものについて、既に核弾頭を搭載できる能力を獲得していると明記されています。今回のような人工衛星ではなく、核弾頭が搭載される可能性も含め、我々は真剣に考えていくべきだと思います。
核共有の議論 ~韓国に遅れてはならない
飯田)日本と北朝鮮だけで考えれば、バランスは相当に崩れている。何とか引き上げなくてはいけませんね。
潮)直ちに日本が核武装するという意見も、一方ではあると思いますが、少なくとも何らかの形で核抑止力を高めないと、事実上は放置している状態にもなりかねません。さまざまな議論が今後進んでいくことを期待します。
飯田)アメリカの核を念頭に置きながら、日米拡大抑止協議も行われていますが、一歩進んで核共有という話にもなりますか?
潮)そうですね。少なくとも米韓の方が、日米よりもそうした議論が進んでいます。日本としては決して遅れないようにして欲しいです。
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