2ナノ開発で日本の「半導体」が“蛙飛び”に
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年11月27日 17時45分
経済アナリストの馬渕磨理子が11月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。政府が事業者への罰則を設けない方向で調整している生成AIの国内向けガイドラインについて解説した。
生成AIの国内向けガイドライン、政府が罰則なしで調整へ
政府がAIの開発や利用について企業や団体に示す国内向けのガイドラインで、事業者への罰則を設けない方向で調整していることがわかった。複数の政府・与党関係者が明らかにした。政府としては人権への配慮やリスク軽減を図りつつ、生成AIの開発や利用を加速させたい考え。
飯田)生成AIの可能性はいろいろと言われています。半導体メーカーなどにも影響が出ていますよね。
罰則を付けてしまうと、守らない企業が勝手に開発を進めてしまう
馬渕)生成AIの誕生によって、半導体世界の進み具合が「グッ」と早まったという印象です。「先端半導体」と言われる、とても微細化された半導体が特に必要とされています。宇宙やセキュリティ、軍事防衛など、すべてに半導体は関わってくるので、この辺りが加速して進んでいます。
飯田)生成AIだけでなく。
馬渕)ガイドラインについて、企業側の倫理観などに任せるのは少し心配かも知れませんが、いまは罰則なしでいいのかなと思います。罰則を付けてしまうと、守らない企業が勝手に開発して先に進んでいくという現状があります。仮想通貨の勃興時期を思い出しますが、攻めるようなところだけが進んでいくのです。この産業がより前に進むためにも、「罰則なし」もありかなと思って見ています。
生成AIの基盤を支え、重要な役割の半導体
飯田)生成AIではChatGPTなどいろいろなものが出ていますが、文書をつくるのにとても便利な一方、「人間の仕事を奪うのではないか」とも言われています。
馬渕)共存できればいちばんいいですけれどね。人にしかできないことは何なのかを考え、煩雑な業務や経費の精算などは全部AIがやってくれたらいいなと思います。
飯田)領収書が電子帳簿になり、全部スキャンしなければいけなくなっても、AIがやってくれたら楽ですよね。1つひとつ仕分けしてくれたり。
馬渕)その技術基盤を支えているのが半導体なので、非常に重要な役割です。
半導体関連投資で盛り上がる九州と北海道
飯田)TSMCが熊本に、ラピダスが北海道に工場をつくるなど、半導体関連投資が盛り上がっています。
馬渕)先日、九州に行ってきたのですが、TSMCの工場が熊本に誘致されているので、オール九州で盛り上がっているのかと思い、経営者の方々に「どうですか?」と聞いてみました。すると、「給料が高いので人材を取られてしまっている。地場産業の一部人材が流出するなど、マイナス部分があることも知っておいて欲しい」とおっしゃっていました。
地場産業からの人材流出というマイナスの部分も
飯田)人材が足りないというのは、半導体と関係のある業界ですか?
馬渕)半導体の周辺領域や、関係がなくても少し技術を持っている方が、半導体関連に転職するという流出も一部あるようです。それくらい半導体業界は人手が足りず、かつ盛り上がっているのは事実ですね。
飯田)例えば、いままで鹿児島で宿泊業をやっていた人が「熊本の方が儲かるかな」と考え、鹿児島からいなくなってしまうような状況が起こるのですか?
馬渕)見えないところではありますが、北九州でも間接的にそのような影響が出ているとおっしゃっていました。とは言え、成長産業が国内にあり、そこで人材の採用や給与が上がっていくこと自体は素晴らしいので、日本全体でより力を入れていくべきだと思います。
蛙飛びが可能な日本の「先端半導体」開発
馬渕)熊本のTSMCと、ラピダスの意味合いは少し違います。ラピダスに関しては「先端半導体」なので、微細化した最先端の半導体をつくる方向に進んでいる。しかし、「日本にできるのか?」という意見も多いのです。
飯田)日本の技術でできるのか。
馬渕)日本は40ナノで技術が止まっているのに、ラピダスはもっとレベルの高い「2ナノ」をつくろうとしています。「そんなに飛躍して大丈夫か?」という意見もあるのですが、半導体業界の方の話を分析すると、技術の積み上げがなかったとしても「スタートラインが別なので、新しく2ナノから始められる」という考え方なのです。新興国の方が飛躍するように、日本も半導体に関しては蛙跳びができそうだと言われています。
飯田)蛙飛びと言うと、電話がない新興国でいきなりみんながスマホを使うような現象などに使われますよね。
馬渕)日本も現在、半導体に関しては積み上げがなく止まっている状態ですが、2ナノの技術に関しては「蛙飛びが可能ではないか」と言われています。このような世界観が面白いですね。
飯田)夢がありますね。一発逆転が可能かも知れない。
馬渕)しかし、5兆円は必要だとも言われます。
付加価値として電力を下げる半導体も注目されている
飯田)半導体は電力やエネルギーも相当使いますが、ここは大丈夫なのですか?
馬渕)それがもう1つの路線で、「モアザンムーア」と言われているところです。
飯田)「ムーアの法則」を超える。
馬渕)そのように突き詰めてきたのが2ナノの世界です。単純に微細化するだけではなく、付加価値として「省エネが可能になるような半導体は価値があるのではないか」と言われています。小さくする以外に付加価値を付ける方向にも向かっている。半導体の素材や後工程の会社などがたくさんあるので、そこは日本が得意とするところです。「負けた」と言われていますが、いろいろなところに目を向ければ、日本が既に勝っているところもありますし、これから勝てるようなところもあります。付加価値として電力を下げるような半導体も、いま注目されています。
民間に任せず、トップ外交で勝つ
飯田)例えばそれをCOP28などで積極的に売り込むといいかも知れませんね。
馬渕)どの業界もそうですが、足りないのはトップ外交です。特に半導体に関しては、国が力を入れて予算を付ける必要があります。そして民間に任せず、トップ外交で勝つ。ここも足りていないところですね。
飯田)昔、韓国で半導体が上がっていったときに、李明博大統領がビジネスマン的に積極的に売り込んだという話もあります。
馬渕)日本は少し控えめなのですが、もはやそのような時代ではないので、トップ外交も行って欲しいと思います。
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