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中国の経済不況 まるで「バブル崩壊時」の日本を見ているよう

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年11月28日 17時30分

中国の経済不況 まるで「バブル崩壊時」の日本を見ているよう

中国の習近平国家主席(中国・北京)

元日本銀行政策委員会審議委員でPwCコンサルティング合同会社チーフエコノミストの片岡剛士が11月28日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。停滞する中国経済の今後について解説した。

中国の習近平国家主席(中国・北京)=2023年4月6日 AFP=時事 写真提供:時事通信

中国の習近平国家主席(中国・北京)=2023年4月6日 AFP=時事 写真提供:時事通信

中国人民銀行が金融機関に「貸し渋り」防止を通知

中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は11月27日、金融機関に対し民間企業の資金需要に応じずに融資を停止したり、抑制したりする「貸し渋り」をしないよう求める通知を出した。中国では不動産大手が相次いで経営不振に陥っており、資金繰りの悪化を防止するのが狙い。

飯田)「貸し渋り」あるいは「貸し剥がし」という言葉も、かつてこの国にはありましたね。

片岡)日本の1990年代のバブル崩壊から、銀行の金融危機、デフレという流れに至る道筋を、中国のいまの経済で見ているような雰囲気に陥ります。

消費せず、貯蓄する動きが進み、企業の資金需要も弱い ~その上に金融機関が貸し渋り

片岡)中国では「お金を借りよう」という動きが進まなくなってきています。住宅ローンなどもそうですが、お金を借りて何かを消費したり、ものを買う、あるいは投資するなどの動きが抑制され、お金をそのまま貯蓄する動きが進んでしまっている。こうした話と軌を一にして、企業の資金需要も弱いという状況が起こっており、しかも輪をかけるように中国の金融機関が貸し渋りをしています。

飯田)金融機関が。

片岡)例えば、不動産部門や不動産会社にお金を貸した分が、不動産バブルが崩壊したことにより焦げ付いているため、銀行としては「危ないところには貸せない」となり、貸し渋ってしまう。これに対して当局が「あまりやり過ぎるとよくない。是正しろ」と言っているわけです。率直に言うと、あまり意味がある対策とは思えません。

金融緩和も財政出動も不十分

片岡)日本の経験からすると金融政策という意味では、1つに大胆な金融緩和を行う必要があります。財政出動に関しても、住宅バブルの崩壊を食い止めるための政策を、いろいろな形で打っていく必要がある。しかし、いまの中国は両方とも不十分なため、こういう流れが起こっているのでしょうね。

中国企業が海外に進出し、デフレを輸出する流れも

飯田)貸し渋りなどで資金需要もなくなる。日本の例で言えば、企業は内部留保を分厚くして資金を投資しなくなり、ますます経済が回らず、デフレになっていく……。中国の経済規模でデフレに陥ると、その歪みや影響はかなり大きくなりますよね?

片岡)大きいですね。デフレを海外に輸出する流れも想定されるわけです。一部自動車メーカーなどで起こっていますが、国内の需要が減少すると、中国企業がヨーロッパなどに対して自分の製品を売り出す。そうなると、電気自動車などで欧州の企業と競合することになります。これまでは中国が一大消費地であり、周りの国々が中国に対して輸出するという流れで、それを消費という形で引き寄せていました。しかし、今度は中国企業が海外にどんどん展開していき、海外の需要を食っていくことになる。それも安い値段で。そのような流れになると、本当にデフレを輸出することになるわけです。

価格が大きく減少しているものは損切りし、金融緩和しながら全体を底上げする

飯田)少し前に鉄をつくり過ぎたので、海外に輸出したところダンピングが起こり、先進国の鉄鋼メーカーが影響を受けて大批判されました。あのような状況が各分野で起こる可能性があるのでしょうか?

片岡)そうならないためには、住宅バブルの影響をできる限り早いタイミングで止めないといけません。価格が大きく減少しているものは早急に損切りし、影響が拡大するのを防ぐなかで、金融緩和しながら全体を底上げしていくことが大事だと思います。

飯田)地方政府がその土地の使用権を売ってファイナンスを行ってきたがために、そこも損切りしなくてはいけないとなると、金融機関だけの話ではなくなりますよね?

片岡)地方政府の財政問題にも絡んできます。この辺りが中国の住宅バブル問題の難しさなのです。

飯田)経済的には損切りしたいけれど、政治的には厳しい場合ですね。

損切りをしない限り停滞が長引く

片岡)ただ日本の経験からすると、損切りしないと停滞が長引くことになります。私はやるべきだと思います。

飯田)日本も結局、損切りするのが遅れた部分がありました。公的資金の注入が遅れた分だけ損失は大きくなったわけですものね。

片岡)それと同時に金融緩和も遅れたのですよね。

実体経済を回復するための政策も遅れたために停滞が固定されてしまった日本

片岡)本来は大規模に金利をゼロまで引き下げ、早く量的緩和を行うべきだったのですが、それをやらなかったのです。少し景気がよくなったら、すぐ緩和をストップしてブレーキを掛けてしまい、消費税増税をして停滞が長引いてしまった。金融機関の問題も是正が遅れたのですが、実体経済を回復するための政策も遅れてしまったため、ダブルパンチで停滞が固定化されてしまったのです。

飯田)なるほど。

片岡)この固定化が問題ですね。中国の場合は日本以上に少子高齢化が進んでいます。さらに社会保障等の制度なども、日本に比べて十分ではないのです。デフレや経済停滞が進むとなると、中国の財政はさらに悪影響が重なります。日本以上に酷いことになる可能性はゼロではないと思います。

飯田)デフレになっていくと、いまお金を持っている人は、それがそのまま「あればあるだけいい」ということですね。

片岡)お金を持っていれば持っているほど価値がある。「投資すればするほどいい」という話とは逆になるのですね。

飯田)階層の固定化につながり、若い人たちには本当に不利な環境になります。

停滞が長期化すると供給力の停滞にもつながり、生産を拡大しようと思っても対応できなくなる

片岡)若年層の失業率が20%を超えています。職を諦めた方を含めて考えると、40%超の失業率だとも言われます。いまの状況はある意味、若年層の犠牲の上にそれ以上の年代、30~40代以上の方の雇用が守られているということです。いまは大した問題ではないかも知れませんが、20代の方が30~40代になっていくと、生産性など成長力のような部分の問題にも若年層の失業率の高まりが影響し、将来的な中国経済の成長率にも影響すると思います。需要の停滞は一時的ですが、これが長期化すると供給力の停滞にもつながる。いまの日本のように、さまざまないい追い風が起こって何かの生産を拡大しようと思っても、すぐに対応できなくなってしまいます。

飯田)停滞が長期化すると。

片岡)そこが長期停滞の大きな問題だと思います。

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