日本人が気付いていない 中東問題によって起こり得る「厳しい状況」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年11月29日 17時35分
![日本人が気付いていない 中東問題によって起こり得る「厳しい状況」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_480425_0-small.jpg)
地政学・戦略学者の奥山真司が11月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イスラエルとハマスの戦闘休止について解説した。
![イスラエル中部テルアビブの空港に到着し、同国のネタニヤフ首相(左)に出迎えられるバイデン米大統領=2023年10月18日(ロイター=共同)](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2023/10/2023101809619RS.jpg)
イスラエル中部テルアビブの空港に到着し、同国のネタニヤフ首相(左)に出迎えられるバイデン米大統領=2023年10月18日(ロイター=共同)
イスラエルとハマスの戦闘休止、2日間延長で合意
イスラエルとイスラム組織ハマスの仲介を担うカタール政府は11月27日、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘休止を2日間延長することで合意したと発表した。新たな合意が守られれば、戦闘休止は少なくとも29日まで延長されることになる。
飯田)戦闘休止5日目の11月28日、ハマスはイスラエル人10人と外国籍2人の人質を解放。一方、イスラエルも拘束していたパレスチナ人30人を釈放しました。
中東問題が日本に与える影響
奥山)アメリカのブリンケン国務長官が何度も中東を訪れています。アメリカ自身も一応は関与して、「人道に配慮してくれ」とイスラエル側に言っている状況です。我々にとっては「日本にどう関係してくるのか」が肝になります。「中東問題は我々には関係ない」と思う人もいるかも知れませんが、世界の秩序を担うアメリカにとっては非常に大きな問題であり、その余波が日本にも及ぶ可能性があるのです。
飯田)その余波が。
奥山)アメリカは世界に3つの戦略地域を持っていると言われます。3正面と呼ばれることもありますが、西ヨーロッパ・中東・東アジアです。
アメリカは3正面のバランスをどう取るか
奥山)西ヨーロッパは当然ですが、アメリカの先祖でもあります。中東は宗教的な場所であり、エネルギーがある。東アジアは最大のライバルである中国が台頭しており、この「3正面のバランスをどう取るか」を常に考えてきたのがアメリカです。
飯田)3正面のバランスをどうするか。
奥山)しかし、米国務省のリソースが割かれ、ブリンケン国務長官が何度も中東を訪問している。アメリカはいま、「どちらが最終的に国際秩序の中心的な柱になるのか」という最大の挑戦を中国から受けています。我々はそれを忘れてはいけません。
すべてを中国に集中させたいが、対処できていないアメリカ
奥山)本来であれば、いまのバイデン政権はしっかりと中国に対処するため、中東やロシアにリソースを割くことなく、「すべて中国に集中したい」というのが彼らの本音だと思います。実際、ウクライナやイスラエルの話はやめて、「すべてを中国に向けなければ、我々は頂上決戦で負けてしまうのではないか」と言う戦略家の方々もいます。
飯田)中国に向けるべきだと。
奥山)ところが、ウクライナは支援しなければならないし、イスラエルの最大の敵であるイランにも対処しなくてはならず、そちら側にリソースが取られてしまっている。アメリカの全体的なバランスを見ると、東アジアの中国にしっかり対処できない状況なわけです。
飯田)リソースを集中できない。
奥山)今回、中東で大きなトラブルがあり、アメリカが中東にリソースを全部向けているので、西ヨーロッパ正面にあるロシアや、東アジアの中国にとっては有利な状況なのです。アメリカが中東に力を注ぎ、ウクライナからも目をそらしている。ロシアや中国にとってはいいチャンスだと思います。
飯田)一息つけている?
奥山)一息つけている展開です。
アメリカが他にリソースを向けている間に台湾有事が起きた場合、日本は1人で対処できるのか
奥山)アメリカがさらに中東やウクライナへリソースを向けることになったら、日本は中国に対処しなくてはいけなくなる。アメリカは東アジアについては手薄なので、台湾有事があった場合、「日本は1人で対処できるのか」ということが問われてくるのです。
飯田)真正面に立つことになる。
奥山)我々はその危機感が足りないのではないかと思います。大きな戦略で見ると、アメリカは危機的な状況にある。そのなかで日本が「自立できているのか」というところも含めて、最悪の事態を考えるところまで来ていると思います。
厳しい状況にあることを日本人は自覚するべき
飯田)しかも中東情勢に関してはイスラエルがいるので、アメリカもある程度コミットしなければなりません。西ヨーロッパ正面は「ヨーロッパに任せよう」という話が出て、ウクライナ支援への予算がなかなか通らないなど、アメリカが内向きになっています。そのうち、「もう東アジアもいいのではないか」という議論になりかねないですよね。
奥山)既に2015年ごろの時点で「台湾を譲り、沖縄や我々の圏域を守れるように取引してもいいのではないか」と言っていた学者の方もいます。中国側に少し譲って、東アジアの立場をある程度確保するという考え方をしないとも限らない。
飯田)先日の米中首脳会談では、習近平氏の冒頭発言で「地球は米中2ヵ国を抱擁してあまりある」と地球2分割を提案しました。中国が何度も主張していることですが、それをやられたら「間にいる我々はたまったものではない」という話ですよね。
奥山)日本人は危機感が足りないのではないでしょうか。円安で装備品が整えられない、海上自衛隊の人手が足りないなどの問題が出ており、我々は「大きな構図で見ると厳しい状況にある」ことを自覚するべきだと思います。
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