日本の音楽界が無視してきた「ミニマル・ミュージック」の重要性 久石譲
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月5日 11時20分
![日本の音楽界が無視してきた「ミニマル・ミュージック」の重要性 久石譲](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_481845_0-small.jpg)
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(11月28日放送)に作曲家・指揮者・ピアニストの久石譲が出演。映画音楽の制作について語った。
![久石譲](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2023/12/hisaishiRS.jpg)
久石譲
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。11月27日(月)~12月1日(金)のゲストは作曲家・指揮者・ピアニストの久石譲。2日目は、ミニマル・ミュージックについて—
黒木)久石さんに関して、「ミニマル・ミュージックに触れたときの衝動が大きかった。そこからまた音楽の方向性が変わった」という記事を読んだのですが、具体的に教えていただけますか?
久石)ミニマル・ミュージックとは、短いフレーズを何回も繰り返し、それが少しずつずれていく。微細な変化を聴かせていく方法論です。テリー・ライリーさんという伝説的な作曲家がいるのですが、彼やフィリップ・グラスさん、スティーヴ・ライヒさんなどによって、1965年ぐらいにアメリカで始まったものです。ヨーロッパでも同じように、最小限のパターンで音楽をつくる流れが始まっていました。
黒木)ヨーロッパでも。
久石)行き過ぎた不協和音の現代音楽に観客がついていけないと思った時期に、シンプルなものが世界中で始まったのです。それがロックミュージシャンなどにも影響を与えたのですが、残念ながら、日本ではこの流れがほとんどありませんでした。
黒木)どうしてもヨーロッパ音楽の方に目がいって、アメリカの方へ向かなかった。
久石)そうなのです。これだけ世界中の現代の作曲家に影響を与えているのに、日本の音楽界は無視してきたのですよ。そのため、「私がやらなければいけない」という思いで『ミュージック・フューチャー』という、世界の最先端の音楽を紹介するコンサートシリーズを行いました。
黒木)それが久石さんの美しいメロディーになっていくのですね。
![久石譲](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2023/12/Joe-Hisaishi-Credit-Nick-Rutter-22-06-10-1914RS.jpg)
久石譲
久石)映画音楽を担当し、メロディーを書くようになったのですが、メロディーだけを書いていると、ただのエンターテインメントになってしまうのです。しかし、ミニマルの方法と合体させる、あるいは半分混ぜると、幅広く表現できるのです。
黒木)ミニマル・ミュージックと合体させると。
久石)「コンポーザー」は「作曲家」という意味ですが、「コンポジション」という言葉には「構成する」という意味があります。あるフレーズが4~5秒あったり、普通の8小節のメロディーがあるだけでは、音楽になりません。それが4~5分、シンフォニーになると1楽章で15分ぐらいになります。どうやって構成していくか。作曲はロジスティックに考える必要があります。感覚だけで勝負しようとしても上手くいきません。
黒木)久石さんは指揮者も務めていらっしゃいます。ご自分の曲ではないものも担当するわけですが、そこで新しい発見もありますか?
久石)インプットしなければ、アウトプットできないですよね。一生懸命、作曲してアウトプットばかりしても、刺激を受けていないと出てきません。例えばブラームスを指揮する場合、私は作曲家の目線でしか譜面を読まないので、「作曲がここで詰まったな」、「手がなくなったから次にいったぞ」というような読み方をしてしまうのです。
黒木)なるほど。
久石)例えば、ビオラとチェロが3度のハーモニーで綺麗に歌っているけれど、なぜか低い楽器のチェロが上で、ビオラが下を弾いている。チェロのような大きな楽器が高いところを弾くと、音がすごく張るわけです。そうするとメロディーが強くなる。「これはいいな」というような刺激はありますね。そういう小さなヒントから、現代音楽をやると「この使い方は上手いな」と、何らかの刺激があります。
黒木)いろいろなところでインプットなさっているのですね。
久石)好きでやめられないということかな。そういうところはあります。
![久石譲](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2023/12/Joe-Hisaishi-Credit-Nick-Rutter-22-06-10-1914RS.jpg)
久石譲
久石譲(ひさいし・じょう)/作曲家・指揮者・ピアニスト
■1950年・長野県出身。
■幼少のころから音楽や楽器に触れ、国立音楽大学在学中から現代音楽の作曲家として活動。
■1981年、初のプロデュースアルバム『MKWAJU(ムクワジュ)』を発表。
■1982年、ファーストソロアルバム『INFORMATION』を発表し、ジャンルにとらわれない独特のスタイルを確立。
■1984年の映画『風の谷のナウシカ』以降、宮崎駿監督作品の音楽を担当する他、北野武監督作品など、数多くの映画音楽を手掛け、3年連続で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。2009年には紫綬褒章を受章した。
■演奏活動においても、ソロピアノやオーケストラなどさまざまなスタイルを披露。2004年7月には新日本フィルハーモニー交響楽団と「新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ(W.D.O)」を結成し、音楽監督に就任。
■またクラシックの指揮者としても活躍し、世界の主要オーケストラとコンサートを開催。大成功を収めている。
■2019年には「フューチャー・オーケストラ・クラシックス」をスタートさせ、同年『久石譲ベートーヴェン:交響曲全集』をリリース。第57回レコード・アカデミー賞特別部門特別賞を受賞した。
■国立音楽大学招聘教授。2020年9月より新日本フィルハーモニー交響楽団Composer in Residence & Music Partnerに就任。また2021年4月より日本センチュリー交響楽団首席客演指揮者に就任。
■クラシックレーベルの名門ドイツ・グラモフォンとアーティスト契約。2023年6月30日に第1弾のCD『A Symphonic Celebration』をリリースし、7月に全米ビルボード・クラシックチャート1位を獲得。10月にLP版で再び1位を獲得。46年振りの快挙。
■2025年4月から日本センチュリー交響楽団・音楽監督への就任が発表された。
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