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ヨーロッパで「アナログ盤」のニーズがあるのには理由がある 久石譲

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月7日 11時20分

ヨーロッパで「アナログ盤」のニーズがあるのには理由がある 久石譲

黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(11月30日放送)に作曲家・指揮者・ピアニストの久石譲が出演。映画音楽の制作について語った。

※画像はイメージです

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。11月27日(月)~12月1日(金)のゲストは作曲家・指揮者・ピアニストの久石譲。4日目は、米ビルボードで1位を獲得したアルバム『A Symphonic Celebration』について—

黒木)今年(2023年)、アルバム『A Symphonic Celebration』がリリースされました。

久石)黒いジャケットに黄色いマークのついた「ドイツ・グラモフォン」というクラシックレーベルの名門がありますが、そこと専属契約しまして、第1弾として発売したのが『A Symphonic Celebration』というアルバムです。これが世界中で売れていて、米ビルボードのランキングで1位になったのです。

黒木)2部門で1位を獲得したということです。

久石)それから数ヵ月経って、アナログ盤が出ました。アナログのLP盤を同じ内容で出したのですが、ヨーロッパでは根強いアナログ盤のニーズがあるのですよ。

黒木)そうなのですね。

久石)この数年は世界的にアナログ盤に戻ってきていますね。おそらくアナログ盤の音の暖かさに再び惹かれ出したのだと思います。映画もそうですよね。ある時期ハリウッド映画でも、CGで凄まじいアクションシーンを普通にやっていました。ところが最近、やはり「人間が実際にやらないとダメだよね」と変わってきている。同じようなことが音楽でも起きているのかなと感じます。

黒木)音楽の温もりをアナログ盤から感じるということですよね。

久石譲

久石譲

久石)物理的にも正解なのです。デジタルは周波数がギザギザなのですよ。でも、アナログはギザギザがない。上から下まで一直線です。「音の肌触りが違う」というのはムードで言っているだけではなく、現実にそういうところがあるのです。

黒木)CDからLP盤まで、ぜひ聴かせていただきたいと思います。指揮者としても活躍なさっており、2021年には日本センチュリー交響楽団・首席客演指揮者に就任されました。2025年4月からは音楽監督に就任するそうですが、これは「いろいろな分野を」ということですか?

久石)私は作曲家なので、「プロの指揮者ではない」とずっと思っているのです。

黒木)職業の指揮者ではないということですね。

久石)長い間オーケストラと仕事をしていると、一生に1度くらい、全責任を負う立場でオーケストラと付き合ってもいいかなと思ったのです。難しいのは、いまのような首席客演指揮者だと、音楽だけを考えていればいいのですよ。でも音楽監督になると、オーケストラのメンバーからいろいろな決定事項にも触れる必要があるから、組織としてのオーケストラ自体にも踏み込まなければならない。だからヨーロッパのミュージックディレクター・音楽監督はスポンサーへの接待で、パーティーにも必ず出なければいけないのです。

黒木)仕事が多岐に渡るのですね。

久石)そういうことが苦手なので、嫌だなと思いながらやっています。

黒木)他の方の曲を聴くより、自分で作曲していた方が楽だとおっしゃっていましたが。

久石)例えば、来月はストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」を振るとします。「春の祭典」、「火の鳥」、「ペトルーシュカ」で三大バレエです。でも、「春の祭典」よりも「ペトルーシュカ」の方が演奏が難しいのですよ。これをやるとなると、数ヵ月前から相当、勉強しないといけないのです。その暇があったら同じくらいの長さの曲が書ける。「なぜ人の曲をこんなに勉強しなければいけないのだ」と思いながらやっています。

黒木)でも、インプットですよね。

久石)そうです。前向きに捉えています。

久石譲

久石譲

久石譲(ひさいし・じょう)/作曲家・指揮者・ピアニスト

■1950年・長野県出身。
■幼少のころから音楽や楽器に触れ、国立音楽大学在学中から現代音楽の作曲家として活動。
■1981年、初のプロデュースアルバム『MKWAJU(ムクワジュ)』を発表。
■1982年、ファーストソロアルバム『INFORMATION』を発表し、ジャンルにとらわれない独特のスタイルを確立。
■1984年の映画『風の谷のナウシカ』以降、宮崎駿監督作品の音楽を担当する他、北野武監督作品など、数多くの映画音楽を手掛け、3年連続で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。2009年には紫綬褒章を受章した。
■演奏活動においても、ソロピアノやオーケストラなどさまざまなスタイルを披露。2004年7月には新日本フィルハーモニー交響楽団と「新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ(W.D.O)」を結成し、音楽監督に就任。
■またクラシックの指揮者としても活躍し、世界の主要オーケストラとコンサートを開催。大成功を収めている。
■2019年には「フューチャー・オーケストラ・クラシックス」をスタートさせ、同年『久石譲ベートーヴェン:交響曲全集』をリリース。第57回レコード・アカデミー賞特別部門特別賞を受賞した。
■国立音楽大学招聘教授。2020年9月より新日本フィルハーモニー交響楽団Composer in Residence & Music Partnerに就任。また2021年4月より日本センチュリー交響楽団首席客演指揮者に就任。
■クラシックレーベルの名門ドイツ・グラモフォンとアーティスト契約。2023年6月30日に第1弾のCD『A Symphonic Celebration』をリリースし、7月に全米ビルボード・クラシックチャート1位を獲得。10月にLP版で再び1位を獲得。46年振りの快挙。
■2025年4月から日本センチュリー交響楽団・音楽監督への就任が発表された。

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