習近平氏がEU首脳と会談 「国際協調」の方向に舵を切る中国
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月8日 17時40分
杭州アジア大会の開会を宣言する中国の習近平国家主席=23日、中国・杭州(共同)
元内閣官房副長官補で同志社大学特別客員教授の兼原信克が12月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国・習近平国家主席とEU首脳らとの会談について解説した。
中国の習近平国家主席がEU首脳らと会談
欧州連合(EU)のミシェル大統領とフォンデアライエン欧州委員長は12月7日、中国の習近平国家主席と北京で会談した。イタリアが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」からの離脱を中国側へ正式に通知したことを踏まえ、習指導部は中国離れが広がらないようヨーロッパをつなぎ止めたい考えとみられる。
ヨーロッパとの関係修復も狙いか
飯田)11月には米中首脳会談もありました。そしてEU首脳との会談があり、最近の習主席は外交でいろいろ出てきますが、どんな狙いがあると分析しますか?
兼原)ヨーロッパは日米欧など、中国以外での経済が大きいのです。中国はこれを分断しないといけないので、一生懸命ヨーロッパを分断しようとしています。しかし、日米は離れないので、ヨーロッパを取りにいく。ヨーロッパはどちらかと言うと経済の方に関心があるので、中国はそこに目をつけていますが、なかなかうまくいっていないと思います。ヨーロッパ側もアメリカと切れるわけにはいきませんし、中国は独裁主義で人権侵害が激しい。経済は大事ですが、「どうなのかな」とヨーロッパは考え始めているのです。中国は弱いところを取りにいくので、東欧の小さい国から取っていく。
飯田)東欧の。
兼原)それがまた「分断しにきた」という話になり、ヨーロッパ側が怒ったのです。上手くいっていないので、それを修復する意味もあると思います。
国際協調の方に舵を切る中国
兼原)中国はいま経済がよくありません。ロックダウンをやりすぎたのです。
飯田)コロナ禍のときの。
兼原)私たちも長い間正座していましたが、足が痛いと言いながらも立ち上がって元気になり、最近は物価も上がって消費が伸びているではないですか。しかし、習近平さんはやりすぎて血が通わなくなり、壊死と言うと言いすぎですが、もはや血が通わないのです。消費が伸びなくなってしまった。だったら自由にすればいいのですが、習近平さんは自由にさせることが嫌いなので、半分締め付けながら進めるため、物価(指数)も0%からマイナスになっている。とにかく経済を何とかしたいのでしょうね。
飯田)経済を立て直したい。
兼原)最近は「一帯一路」もうまくいっていません。先日、首脳会合を開きましたが、以前は三十数ヵ国が来たのです。それが二十数ヵ国くらいに減ってしまった。ヨーロッパはハンガリーくらいで、イタリアもやめてしまいました。アフガニスタンのタリバンを呼ぶなど、「何をやっているのか」という感じです。
飯田)なるほど。
兼原)アメリカに対しても修復に入っているので、「いまは喧嘩するときではない」という方針なのだと思います。中国外交ははっきりしていて、自分が強いときはブイブイやるのです。でも弱くなってくると、突然腰が低くなる人たちなので、いまは国際協調の方に舵を切っているのではないでしょうか。
日本は欧米、ASEANと組み、中国が突っ込んでこないように構え、関係を築いていく
飯田)日中首脳会談では、岸田総理は笑顔を見せませんでした。今後は中国とどう付き合えばいいですか?
兼原)基本的にはいま申し上げたように、対等にきちんと構えていると、敬意を払う人たちなのです。それが崩れると突っ込んできます。日米関係がよくないとき、中国は尖閣に突っ込んできた。弱いと突っ込んでくるのです。水に落ちると叩いてくるような人たちですから、しっかり構えていればいいと思います。1対1では向こうの方が大きいので、欧米とくっつくのです。
飯田)日本は。
兼原)あとは東南アジア諸国連合(ASEAN)の国にくっついて、中国と対等に話す。尖閣や台湾など解決できない問題があるので、そこには突っ込んでこないように、しっかり構える。その上で、関係を積み上げていくことが大事だと思います。
中国はしっかりと構えていれば攻めてくることはない
飯田)環太平洋パートナーシップ(TPP)協定へのイギリス加盟について、参院本会議でも議定書が承認されました。各国の批准手続きが進めば正式加盟となります。こういう連携を1つひとつ積み重ねていくことが大事ですか?
兼原)北大西洋条約機構(NATO)はアメリカ、EU、イギリスがいて、彼らはとても強いのです。しかし、反対側にはアメリカの同盟国である日本・韓国・フィリピン・豪州・タイしかいません。NATOに比べて、これはとても弱い。
飯田)NATOに比べて。
兼原)敵は中国ですから。そうするとイギリスを始め、インドや豪州など、いろいろな国を引き込む必要があります。それでも弱いのですが、コツコツ積み上げていくしかありません。一応、アメリカという大国がうしろに控えているので強いですが、アメリカからすると「俺1人かよ」という話になるので、いろいろな国に並んでもらい、旗を掲げて「攻めてこないでくれ」と見せなければいけないのです。見せるとあの人たち(中国)は動きませんが、見せないと突っ込んでくるのです。
飯田)なるほど。
兼原)安倍さんはよく「中国と仲よくするのはいいのだ」と言っていました。ただ、中国はすぐマウントを取りにくるので、「それは許せない」とも言っていました。
飯田)マウントを取らせないように、こちらは脇を固める必要がある。
兼原)そういうことです。
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