「慧眼」の読み方を知っていますか?
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月11日 11時20分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(12月4日放送)に評論家の宮崎哲弥が出演。『教養としての上級語彙』について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。12月4日(月)~12月8日(金)のゲストは評論家の宮崎哲弥。1日目は、漢字にルビをふることの必要性について—
黒木)宮崎さんは政治・経済・宗教・サブカルチャーなど、さまざまな分野で評論活動をなさっていますが、先日たまたまニッポン放送のラジオを聴いていたら、宮崎さんが漢字のルビの必要性について2週に渡って話していたのですよね。
宮崎)マネックス証券の松本大さんが、私財を投じて「ルビ財団」を設立しました。もっとルビをふっていこうという「ルビフル」を合言葉に財団をつくり、1つの社会運動にしようとなさっている。それに深く共鳴し、2週に渡って紹介させていただきました。
黒木)私もそれを2週に渡って聴いていたのですが、「なるほど」と思いました。本が好きなので、読んでいると、何となく読めている気がするのです。本当は間違っているかも知れないのに、そのまま流していたということは多々あります。
宮崎)そのようなことが多々あるので、(作家の方たちが)あまり難しい漢字を使わなくなってしまったところがあると思います。先般、ある高名なアナウンサーの方が、陸上選手について「もともとは他の領域のスポーツをやっていたけれど、高校の先生がその人の才能を見出して陸上に導いた」という話をしたとき、「たいした『すいがん』だったのですね」とおっしゃっていました。本当は「すいがん」ではなく「慧眼(けいがん)」なのです。慧眼というのは「本質を見抜く眼力」という意味なのですが、それがネットニュースにもなって、アナウンサーの方が訂正することになりました。
黒木)ネットニュースになって。
宮崎)その方は50歳なのですが、50年間、ずっと「慧眼」という字にルビが振っていなかったので、「すいがん」と読んでいたのです。子どものころに「すいがん」と覚えてしまい、そのまま言ってしまった、ということだそうです。私は慧眼という言葉を使おうとする姿勢はとても尊いものだと思うのですが、惜しむらくは読み方を間違えてしまった。私もこれはルビがなかったからだと思います。ルビが事実上、廃止されてしまった戦後の国語教育の犠牲者であると思っています。
黒木)ラジオで宮崎さんが、「実はこのような本が出たのですよ」とおっしゃったのが、新潮選書から出ている『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』という本です。そのあとすぐに買いました。
宮崎)ありがとうございます。
黒木)読み始めたら本当に面白くて、「この字は知ってる。あ、でもこういう意味だったんだ」とか。いまも手もとにあります。
宮崎)付箋まで貼っていただいて、ありがとうございます。
黒木)例えば「目眩(めくるめ)く」という言葉は、「まばゆい」でも「まばゆく」でもなく、「めくるめく」と読むんだ、と思って。
宮崎)これまで、お芝居などで「目眩く」という言葉は使いませんでしたか?
黒木)ひらがなで出てきます。
宮崎)そうですよね。普通はひらがなですよね。ルビを使わなければ、ひらがなで表記するしかない。普通の人は読めないですよね。
宮崎哲弥(みやざき・てつや)/評論家
■慶応義塾大学文学部社会学科卒業。
■政治、経済、宗教、漫画、映画などを対象に評論活動を展開。
■単に政治経済を専門とするだけの評論家とは違い、矢沢あい氏の人気漫画『NANA』に関して評論したり、ヴィジュアル系ロックバンド「LUNA SEA」のヴォーカリスト・河村隆一と対談したり、日本のヒップホップについて語ったりと、サブカルチャーやオタク文化全般に対しても深い理解を示し、好意的なスタンスにある。
■2022年に『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』を発売。中学生のころより本や雑誌、新聞からメモしてきた「語彙ノート」の1万語から500余語を厳選。読むだけで言葉のレパートリーが拡がり、それらを駆使できるようになる異色の「文章読本」となっている。
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