「濃やか」と書いて何と読むのか?
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月12日 11時20分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(12月5日放送)に評論家の宮崎哲弥が出演。『教養としての上級語彙』について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。12月4日(月)~12月8日(金)のゲストは評論家の宮崎哲弥。2日目は、現在の日本人の国語力について—
黒木)『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』(新潮選書)を私も早速読みました。上級語彙についてですが、日常で一般的に使われているのが普通の言葉であって、かしこまった言葉は何と言うのでしょうか?
宮崎)高級語彙という言葉が英語にあるのですが、これは事実上、専門用語のことです。この本で言っている上級語彙というのは、「専門的ではないけれど、日常的に頻繁に使うような言葉でもない」というような表現です。
黒木)この本を読んで自分の人生が知的に、豊かに明るくなると感じました。
宮崎)とは言え、皆さんがお読みになっている夏目漱石や太宰治などの小説には、上級語彙が頻繁に出てくるのですよ。日常だと、それほど使うものではないと思いますが、近代文学を読み解くため、あるいは戦中~終戦直後くらいのメディア、特に新聞を読むためには必須の語彙だと思います。
黒木)そうですよね。
宮崎)ルビの事実上の廃止と漢字制限によって、どんどん使われる語彙が制限されていき、今日に至っては、本当に日本人の国語力が低下してしまった現状があります。それに対して何か抗いたかったのです。
黒木)「カワイイ」とか「ヤバイ」という言葉で済ませてしまわないために、ということですよね。
宮崎)「ヤバイ」も「カワイイ」も多様な意味を詰めてしまっているのですよ。さすがにそれはマズイのではないかと思います。この本でも主張していますし、来年(2024年)に出る、この本の「2」でもはっきりと申し上げていますが、要するに多くの言葉を操れるようになるということが、国語の進化であると考えています。いまの流れは明らかに退化ですよね。
黒木)衰退していますよね。
宮崎)国語力自体が。語彙力は国語力の基礎です。本当はもっと違う言葉で表現したいのに、全部が「カワイイ」などで表現されてしまっている。そのように感じて仕方がないのです。この流れ、トレンドに対して抗いたいという思いがあったのは事実です。
黒木)この本を読んでいると、「へえ!」と思うことがたくさんあります。例えば、「細やか」という言葉です。
宮崎)同じ「こまやか」という読みでも、「細やか」と書くのか、「濃やか」と書くのか。「公文書や国立大学の入試などで、これを目安として使え」とされる「常用漢字表」には、「細」も「濃」も入っているのです。ところが、これを「こまやか」と読むとは書いていませんので、新聞では全部ひらがなにしています。漢字にルビをふっていなければ、普通の人は「濃やか」を「のうやか」と読んでしまいますよね。
黒木)そうですよね。
宮崎)だから、「ルビさえふっていれば」と思うのです。
黒木)そうしたら「こまやか」と読めるのに。
宮崎)そういう言葉はたくさんあります。
黒木)私は「莞爾」という意味にも驚きました。「にこにこ笑みを浮かべる様」と。
宮崎)昔、石原莞爾という軍人がいたのですが、それがこの名前です。「莞爾として笑う」という表現で、この漢字から取ったのです。
宮崎哲弥(みやざき・てつや)/評論家
■慶応義塾大学文学部社会学科卒業。
■政治、経済、宗教、漫画、映画などを対象に評論活動を展開。
■単に政治経済を専門とするだけの評論家とは違い、矢沢あい氏の人気漫画『NANA』に関して評論したり、ヴィジュアル系ロックバンド「LUNA SEA」のヴォーカリスト・河村隆一と対談したり、日本のヒップホップについて語ったりと、サブカルチャーやオタク文化全般に対しても深い理解を示し、好意的なスタンスにある。
■2022年に『教養としての上級語彙 知的人生のための500語』を発売。中学生のころより本や雑誌、新聞からメモしてきた「語彙ノート」の1万語から500余語を厳選。読むだけで言葉のレパートリーが拡がり、それらを駆使できるようになる異色の「文章読本」となっている。
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