3季目の「ジャパンラグビーリーグワン」が開幕 なぜ世界のスーパースターが日本に集結するのか?
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月11日 17時20分
話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、大盛り上がりのなか開幕を迎えた国内ラグビー最高峰リーグ「ジャパンラグビー リーグワン2023-24」にまつわるエピソードを紹介する。
3季目を迎えた「ジャパンラグビー リーグワン」が開幕した。ディビジョン1開幕節6試合の平均観客数は1万1763人。昨季開幕時の8552人と比較すれば大幅増だ。昨季、シーズン全体で70万人超の観客を動員し、「次は100万人突破を!」と目論むリーグとしても上々の立ち上がりだったのではないだろうか。
なかでも最も観客動員が多かったのは秩父宮ラグビー場で行われた昨季王者クボタスピアーズ船橋・東京ベイと昨季4位だった東京サントリーサンゴリアスの一戦。1万8110人のファンが詰めかける盛り上がりようだった。
筆者も秩父宮ラグビー場で取材をしたが、スタジアムの向こうに見える神宮外苑名物の銀杏並木の紅葉色と、スピアーズカラーのオレンジ、サンゴリアスカラーの黄色とびっしり埋まったスタジアムとのグラデーションが何とも言えず美しかった。
開幕からここまでの盛り上がりを見せたのは、もちろんこの秋行われたラグビーW杯で奮闘した日本代表の影響が大きい。ただ、日本代表メンバーは33人。それだけで各スタジアムがこぞって盛況となるわけではない。
今季の注目度の高さの背景には、W杯で活躍した世界各国のスーパースターたちがリーグワン各チームに加入した影響が非常に大きい。特に、決勝戦でぶつかった南アフリカとニュージーランド(オールブラックス)の2チームからは、計15人もの選手がリーグワンに在籍しているのだ。
上述したサンゴリアスには、オールブラックス主将のサム・ケインと、小柄ながらも「ポケットロケット」と呼ばれる爆発的なスピードを武器に南アフリカのW杯連覇に貢献したチェスリン・コルビが新加入。コルビは開幕戦でいきなりプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝く活躍を見せた。
開幕戦で12トライ80点を挙げて大勝したコベルコ神戸スティーラーズでは、オールブラックスのブロディ・レタリックがゲームキャプテンを任され、先制トライを含む2トライ。同じくオールブラックスからの新加入組で、W杯決勝翌日に発表された2023シーズンの世界最優秀選手賞に輝いたアーディ・サベアも2トライと、早くも存在感を見せつけた形だ。
日本代表キャプテン姫野和樹を擁するトヨタヴェルブリッツには、世界最優秀選手賞に2度も輝いた実績を持つオールブラックスのボーデン・バレット、同じくオールブラックスの世界最高峰スクラムハーフ、アーロン・スミス、W杯決勝でマン・オブ・ザ・マッチに輝いた南アフリカ代表ピーターステフ・デュトイが新加入。8番にデュトイ、9番にスミス、10番にバレットが並ぶ中軸は豪華絢爛だ。
新加入組以外でも、南アフリカ代表の司令塔で、昨季もリーグワンのベスト15に輝いたファフ・デクラークは今季も横浜キヤノンイーグルスでプレー。同じく南アフリカの連覇に貢献したクワッガ・スミスは今季も静岡ブルーレヴズのキャプテンに就任している。
彼らスーパースターがこぞって来日し、リーグワンでプレーする理由はさまざまだ。金銭的な部分も大きいだろうし、子育てをする上での治安面を語る選手もいる。ただ、明確なのはリーグワンのレベルが上がり、彼らスターがプレーするに足り得るリーグになってきた、という点も大きい。
サンゴリアスに加入したチェスリン・コルビは、リーグワンへの移籍をどのように決断したかについて、入団会見で次のように語っていた。
「リーグワンでは日本のトッププレーヤーのみならずインターナショナルな選手たちも数多く顔を揃えている。自分自身の学びにつなげ、成長につなげることができると思いました」
同じように、サム・ケインもリーグワン在籍が自身のキャリア形成においてマイナスにはならないと、こう続けた。
「日本のリーグでパフォーマンスを残すこと。その上で本国に戻り、さらにオールブラックスとして働くこと。それらをやりきることで自分自身のラグビーをさらによりよく表現できると思う。それこそが自分に課せられたミッションだと考えています」
そして、彼らスーパースターの存在は日本選手のレベルアップにも当然つながっていく。昨季のトライ王、サンゴリアスのウィング尾崎晟也は、世界屈指のウィングであるチェスリン・コルビの加入で受けた刺激について、「もう体格を言い訳にはできない」とこう語る。
「初めてコルビ選手がチームに合流したときに感じたのは、自分が思っているよりも小さい(172cm)ということ。自分自身もサイズは大きくない(174cm)ので、あのサイズでも世界で戦えるというのは、希望じゃないですけどやる気が出るというか、学ぶ部分がたくさんあります。合流して期間はまだ短いですけど、一緒に練習するなかで教えてくれることも多いので、全部盗もうと思っています」
コルビ効果とは言い過ぎかも知れないが、尾崎晟也は開幕戦でいきなりのハットトリック。2季連続トライ王へ最高のスタートを飾った。
振り返れば、2015年W杯で盛り上がった直後、当時のトップリーグはその時勢を集客に結びつけることができず、選手からも失望の声が上がったほど。また、2019年W杯後の盛り上がりはコロナ禍で失速する不運に見舞われた。
過去、2度のW杯での準備不足や不運を重ね、迎えた今回のアフターW杯。日本ラグビーが本当のラグビー大国を目指す上で試金石となりそうな重要なシーズンだけに、開幕後もこの盛り上がりが続くのか。スーパースターたちの存在をどう活用していくのか。しっかり追いかけていきたい。
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