国連総会でガザ「即時停戦決議」採択 「国際世論の反対」こそがハマスの思うツボ

パレスチナ自治区ガザ南部ラファで、イスラエルによる爆撃を受け上がる煙。

内閣官房参与の宮家邦彦と数量政策学者の高橋洋一が12月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。イスラエルが侵攻するパレスチナ自治区ガザの情勢について解説した。

パレスチナ自治区ガザ南部ラファで、イスラエルによる爆撃を受け上がる煙。＝2023年12月12日　AFP＝時事　写真提供：時事通信

国連総会の緊急会合、ガザ即時停戦決議を採択

パレスチナ自治区ガザの情勢を協議する緊急特別会合で、人道目的の即時停戦と、すべての人質の解放を求める決議案が採択された。加盟193ヵ国のうち、日本を含む153ヵ国が賛成、イギリスなど23ヵ国が棄権。反対はアメリカやイスラエルなど10ヵ国だった。

飯田）今回の結果をどう見ればいいでしょうか？

宮家）アメリカのバイデン大統領が、イスラエルに「このままだと国際世論の支持を失うぞ」と警告を発し、まさにその数字が出ているのです。ただ、即時停戦や休戦などと言っているけれど、イスラエルには自衛権があるから、日本も含め、ハマスを取り締まることについては認めています。

国際世論が反対し、中途半端な軍事作戦しかできないイスラエルの状況こそがハマスの思う壺

宮家）停戦になると、イスラエルは戦争を止めなければいけなくなります。だからNOなのです。休戦というのは、休戦協定というように停戦よりも長い。いまやろうとしているのは戦闘の休止なのです。その意味では、もしかしたら言葉の混乱が投票にも影響したかも知れません。しかし、全体の流れとして、イスラエルが上手くいっていない状況なのは間違いない。これこそハマスが望んでいることであり、彼らの思う壺です。

飯田）ハマスの思う壺。

宮家）こうやって国際世論が反対し、結局は中途半端な軍事作戦しかできない。そうしたらハマスは生き残ります。生き残れば次がある。そういう悪循環を止めるためには、本当に停戦が正しい決断なのかどうか。個人的には疑問を持っています。

今後、数ヵ月はイスラエルの侵攻が続く

飯田）しかし、イスラエルが「これで止まるか」と言うと、止まるわけではないですよね。

宮家）止まるわけがありません。おそらくあと数ヵ月はやるでしょう。あれだけの長いトンネルがあり、物資と人がなかにいるわけですから。人質を解放しなければいけませんが、ハマスは当分、人質を返す気はないでしょう。あと数ヵ月続くと覚悟した方がいいと思います。

情報戦となっている

飯田）ガザでは既に、南部の中心都市まで侵攻が進んでいるようですが、全土まで及ぶことになりますか？

高橋）インターネット上では、支援物資をハマスが奪っているというような情報がどんどん出てきています。プロパガンダ的にはイスラエルの方が不利なのですが、本当はハマス側が残虐なことをしていたり、支援物資を奪って、最後に少しだけ与え、義賊のように見せていることが世界では明らかになっています。しかし、マスコミはそういうことを報道しません。ネットの方がいろいろな話がわかるのです。私はイスラエルの国防省と、アルジャジーラの両方とも見ていますが、全体の雰囲気が世界の報道と少し違います。

飯田）もはや情報戦という形になっていますね。

宮家）国連総会の動きは、完全に情報戦です。国際的な法的拘束力がないのだから。

飯田）イメージをどうつくるかという話になってきている。