台湾総統選 前回のようなミスを犯さぬよう巧妙に動く中国
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月14日 11時55分
17日、第30回APEC非公式首脳会議で重要演説を行う習近平氏。中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席は17日、米サンフランシスコで開かれた第30回アジア太平洋経済協力会議(APEC)非公式首脳会議に出席し、「初心を堅持し団結協力、手を携えてアジア太平洋の質の高い成長を共に促進」と題する重要演説を行った。(サンフランシスコ=新華社記者/李学仁)= 配信日: 2023(令和5)年11月18日、クレジット:新華社/共同通信イメージズ
内閣官房参与の宮家邦彦と数量政策学者の高橋洋一が12月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。台湾総統選について解説した。
台湾総統選まで1ヵ月、最大野党結束で追い上げ
2024年1月13日の台湾総統選まであと1ヵ月となった。与党、民主進歩党(民進党)の頼清徳副総統がリードしているが、対中融和路線の最大野党、国民党の侯友宜・新北市長が党内を固めて急速に追い上げ、接戦となる可能性が出てきた。同時に実施される立法委員(国会議員)選挙で民進党が過半数を維持できるかどうかも焦点となる。
飯田)来年(2024年)、年明けすぐに総統選があります。
高橋)ある人から台湾へ一緒に行こうと言われているのですが、どうなってしまうのか。心配ですよね。
飯田)結果次第ですか?
高橋)結果次第で日本の安全保障に影響してくるでしょう。「台湾有事は日本有事」と言った安倍さんも、そういうことを見越して言ったのだと思います。連動しているのですよね。
前回のようなミスを犯さないように巧妙に動く中国
飯田)現在の情勢はどうですか?
宮家)もともと3すくみ、4すくみだったところを、与党・民進党の頼さんが少し抜け出した。それに対して、2位・3位の野党連合で巻き返そうとしたのですが、目論見は失敗しました。失敗したけれども、国民党の侯さんが巻き返している。正直言ってわかりません。変な言い方ですが、日本よりもはるかに民主的なところがあって、本当に拮抗しているから。ただ、いままでの台湾選挙を見ていると、拮抗するのだけれど、中国が対応を間違え、進歩系が勝ってしまうというケースが何度かあるわけです。例えば、李登輝さんが出てきた最初の民選で中国がミサイルを撃ってしまったため、李登輝さんが勝ったのです。
飯田)そうですね。
宮家)蔡英文さんだって、前回の選挙は本当に接戦でした。しかし、中国が香港で締め付けを厳しくしたために抗議デモが起き、彼女が勝ったのです。おそらく今回中国は同じようなミスをしないよう、巧妙に動いていると思います。つまり非常に見にくく、わかりにくい。ただ、普通は2位・3位の候補が統一できなかったとなると、野党系は割れるから、本当は与党に有利なのです。しかし、わかりません。
日本への影響力も大きい注目すべき総統選
飯田)2位・3位連合、国民党の侯友宜氏と民衆党の柯文哲氏を一本化しようとして、一本化するところまでは合意したけれど、「誰がトップに立つか」というところで揉めた。
宮家)それは合意していないということです。
飯田)最後までは詰められなかった。また、選挙戦からは撤退した形になっていますが、鴻海精密工業の創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)氏もいました。この方は一定の人気があるわけですか?
宮家)もともと中国に近いと言われていた人がこういう形で動き、逆に中国にとって不利な状況が生まれたのも事実です。いい意味で民主主義が機能していますから、おそらく直前まで接戦が続くのだと思います。日本にとって注目すべき選挙です。
中国の選挙工作
飯田)中国の選挙工作があるのかどうか。前回の選挙でもそういう話がありました。
高橋)「工作がない」と前提を置く方が難しいです。
飯田)言語も同じですものね。
高橋)関係者も入り込めます。だから「何もしない」とは考えにくいですね。
宮家)ミサイルを撃つよりは、認知戦を行い、フェイクニュースやサイバー攻撃をかける方がはるかに効果的です。いままさにやっていると思います。
飯田)以前の地方選挙でも、いろいろなことがあったと報道されました。
宮家)中国は必死ですよ。
中国からと思われる詐欺メールも日本語のレベルが上がっている
高橋)日本でもやっているでしょうね。
宮家)やっていますよ。
飯田)かつては言語の違いがあるから難しいなどと言われていましたが。
高橋)いまは関係ないですね。
宮家)たまに中国から発信される変なメールが届きますが、最近は偽メールの日本語が上手になっています。フォントもしっかりしているし、「普通だったら間違えるだろうな」というレベルまで上がっている。
飯田)昔は、部首の使い方などでわかりましたね。
宮家)フォントや文法が違ったりしていましたが、いまは見事ですよ。気を付けないといけません。
飯田)AI技術なども入っているのでしょうか?
高橋)私は解析で発信地までわかるため、全部排除しています。表面上はわかりません。以前は見るだけですぐにわかったけれど、いまは内部を解析しないとわからなくなってきています。
サイバーも「やられてもやり返さない」日本
宮家)恐ろしい時代になりましたね。こちら側もやれたらいいのだけれど。
高橋)そのためにデジタル庁をつくったのだと思っていましたが、そうではないのですね。
宮家)安全保障の発想はありません。
高橋)変なものを推奨したりしています。
宮家)安全保障が「スコン」と抜けている。企業の利益、技術や情報をどう守るかについては一生懸命なのですが、国益をどう守るかという視点が抜けていると思います。
飯田)「アクティブディフェンス」などと言いますよね。こちらから情報を取りにいき、策源地を先に叩くとか。
宮家)日本はサイバーでも専守防衛なのですが、それではダメです。
飯田)専守防衛、やられたらやり返すというような。
宮家)やられてもやり返さないし、守るしかないわけです。やり返すのであればいいのですよ。
飯田)やり返せば抑止力になりますが、そこまでいかない。
宮家)守るだけです。それだと、やったもの勝ちではないですか。
憲法の「通信の秘密」とバッティング
飯田)サイバー空間で情報を取るにも、憲法の「通信の秘密」などとバッティングするというような話を聞きます。
宮家)その通りです。だから根は深いのです。
高橋)海外では関係ないのにね。民間であれば、専守防衛でも仕方ないけれど、政府は違うでしょう?
飯田)「情報空間にまで国境が」というような話はありますが、本来はないですよね。ないけれど、やはり憲法を守る形で動いてしまう。
宮家)清く正しく美しいだけではダメです。
飯田)平和を愛する諸国民なだけでは。
宮家)平和は愛しますけれどね。
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