“困ったときの林さん” 官房長官就任の林芳正氏 この状況下での起用、並みの人では務まらない
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月20日 18時30分
衆院予算委で答弁する林芳正外相=22日午後、衆院第1委員室
キヤノングローバル戦略研究所主任研究員でジャーナリストの峯村健司と東京大学先端科学技術研究センター准教授で軍事評論家の小泉悠が12月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。松野官房長官ら安倍派の閣僚4人交代という事実上の更迭人事について解説した。
岸田総理、4閣僚を更迭
飯田)自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー裏金問題をめぐって、松野博一官房長官をはじめ4閣僚が交代。後任については、官房長官に林芳正さん。いろいろな名前が取り沙汰されましたが、顔ぶれを見ると経験者ばかりですね。
峯村)困ったときの林さんという感じですね。危機のときには必ず呼ばれる。安定性を重視したのでしょう。これでまた舌禍でどうのとなっても、もう次はないですから、妥当な人選です。齋藤さんもそうですよね。
飯田)経産大臣の後任には斎藤健さんです。
官房長官に林芳正氏 不本意に外務大臣を外されたと思う本人への懐柔的な意味も
峯村)林さんに関して周りの人に話を聞くと、前回、外務大臣を解任されたことを不本意に思っていたようです。
飯田)今年(2023年)秋の内閣改造で解任されました。直前にウクライナのキーウに行っていましたよね。
峯村)ご本人は外務大臣を解任されることを知らなかったらしいですね。そういう意味では、同じ派閥内でも軋みが出ていたという話もあるので、懐柔的なところもあったのではないでしょうか。
飯田)(林氏は)そのあとのG7外相会合も含め、気合いを入れていたという話も聞きますからね。
峯村)ただ、ご本人が本当に官房長官になりたかったのかどうか。このタイミングで官房長官を務めることが嬉しいかと言うと、微妙ですよね。大変です。
飯田)官房長官は、日に2回は会見を行いますからね。
小泉)しかも、いま官房長官として会見に立てば、飛んでくる質問は厳しいものだと思います。並みの人では務まらないのでしょう。
飯田)林さんは宏池会(岸田派)派閥の座長でもありますが。
峯村)宏池会もまったく問題がないわけではないと思います。
飯田)過少申告の話が出ています。
峯村)そうなると、厳しい対応が求められますね。
台湾有事「2024年危機説」 民進党・頼清徳候補と国民党・侯友宜候補どちらが総統になっても大変なことが起こる
飯田)この問題が外交に与える影響はどうですか?
峯村)2020年の時から申し上げていますが、「2024年危機説」に備えなけばなりません。台湾総統選が1月に控えており、どうなるかわかりません。最新の調査を見ると、ほぼイーブンです。民進党の頼清徳候補と国民党の侯友宜候補の差は2ポイントくらいしかありません。どちらが当選しても大変なことが起こりそうな予感がします。また、プーチン氏も一応、来年(2024年)は選挙があります。
小泉)3月17日にあるだろうと言われています。
峯村)圧勝ですか?
小泉)プーチン氏が出ると言うからには、もう「圧勝すること」が決まっているのです。ロシアの政治に関しては、いい方向にも悪い方向にも、ほぼ、このまま進むことが見えてしまっています。もしかするとアメリカはトランプ政権になるかも知れないという話なので……。
峯村)そこですよ。
ウクライナと停戦する余地のないロシア
小泉)2024年は、なかなか厳しい1年になりそうだなと思います。
峯村)当然、プーチンさんはいま、トランプさん待ちですよね?
小泉)完全にトランプさん待ちだと思います。よく「ウクライナに圧力を掛けて、そろそろ停戦させたらどうか」という議論があります。わからなくもないのですが、いまの状況では、そもそも侵略しているロシア側に停戦する余地はないと思うのです。その状況下でウクライナへの支援を減らし、「停戦の話をさせろ」と言っても、あまり意味がないと思います。
国民へのアピールの仕方を変えるプーチン大統領
飯田)プーチン大統領は毎年、カレンダーで肉体美を披露していたではないですか。でも、今回はそうではないようです。以前は上半身裸で馬に乗っているような写真を使っていましたが、何か心境の変化があったのでしょうか?
小泉)プーチン大統領も今年で71歳になりましたからね。さすがに70にして肉体を見せつけるのもどうかという気がします。
峯村)プーチンにそんな恥じらいがありますか?
小泉)実際、体は衰えてきたのではないでしょうか。国民へのアピール材料として「筋肉はもう使えないな」と思ったとすると、「ビシッ」とスーツを着たり、軍の幹部を前に強いプーチン像を見せる。あるいはロシアの伝統的価値観を守るというような、保守的指導者としての側面を全面に出している感じがします。
飯田)肉体よりも思想のマッチョという感じなのですね。
小泉)かつては「肉体的にマッチョで頭もキレキレ」というリーダーのイメージだったわけですが、少なくとも、肉体に関しては使えなくなってきた。それと、3年前の憲法改正もそうですが、全体的に保守的指導者という方向にシフトしようとしていますね。
峯村)古い写真も出しているではないですか。最近、影武者説が言われますが、「影武者だから贅肉があって出せないのかな」と思いました。
小泉)影武者もいるかも知れないですね。ただ、カレンダーに出ているプーチン大統領は、おそらく本物の鍛えているプーチン大統領だと思います。
国内問題を早く収束させて「2024年危機」に備えるべき
飯田)最高指導者の年齢面では、ロシアもそうですし、アメリカはバイデン氏・トランプ氏ともに高齢です。
峯村)そのなかで最も若いのが習近平国家主席です。若いと言っても70歳ですから、プーチンさんより少し若いくらいですが。終身制にシフトするのではないかという話もありますし、後継者もいません。各国、高齢化と終身制というような話になっていくのでしょうね。
飯田)逆説的に日本の総理は若い方に入るということですね。
峯村)それはアリだと思います。
飯田)岸田総理も60代ですし。
峯村)若手や女性など、それでコントラストを出すのもいいと思います。
飯田)来年は、日本でも自民党総裁選がありますからね。
峯村)大事な年なので、早く国内問題を収束させ、国を挙げて「2024年危機」に備える必要があります。それを願ってやみません。
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