本屋大賞受賞作『汝、星のごとく』 著者・凪良ゆうが語る「書くのに勇気が必要だった箇所」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月19日 11時20分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(12月12日放送)に小説家の凪良ゆうが出演。第20回本屋大賞を受賞した著書『汝、星のごとく』について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。12月11日(月)~12月15日(金)のゲストは小説家の凪良ゆう。2日目は、『汝、星のごとく』を書いた経緯について—
黒木)2度目の本屋大賞を受賞された『汝、星のごとく』では、ヤングケアラーやジェンダーなどいろいろな問題が描かれていますが、結局、暁海(あきみ)と櫂(かい)の純粋な恋愛小説を書こうと思ったのですよね?
凪良)江國香織さんや山本文緒さん、山田詠美さんなど、自分が若いころ好きだった作家さんが素敵な恋愛小説を書かれていたので、やはり憧れがあったのでしょうね。1度は挑戦してみたいという気持ちがあったのだと思います。
黒木)もちろん暁海も櫂も出てくるのですが、大人になるまでの15年間ほどの時間が描かれています。いろいろな登場人物が出てきて、それぞれの人生の物語が詰まっていますよね。
凪良)最初は恋愛がメインになるかなと思っていたのですが、15年のなかで人は恋愛だけして生きているわけではないですよね。特に高校生から30歳過ぎくらいまでは、学生から社会人になり、いろいろな変化がある時期だと思うので、恋愛だけではない人生模様がどうしても入ってしまう結果になりました。
黒木)すれ違っていくのですよね。そのすれ違いが、やはり恋愛ドラマには欠かせないすれ違いであって、もどかしいですが、必ず愛がそこに存在している。
凪良)男の子の視点と女の子の視点が交互に書かれているので、読んでいる方には、どうすれ違っているのかがわかるのですけれど、本人たちにはわからないという。
黒木)書いている最中は、すれ違うように書いていくのですか?
凪良)プロットを組み立てているので、そこに沿って書こうとは思うのですが、男の人の思考と女の人の思考は、どんなに合わせようとしても合わないのですよね。1つの物事を挟んで対岸にいる者同士というか……。そこを丹念に追っていくと、どうしてもすれ違っていくことになってしまう。書きながら「双方が努力しないと理解できないよな、男女は」ということに、改めて気付かされました。
黒木)凪良さんの作品で一貫しているのは、誰かと比較しない。「自分の人生を生きていくのだ」というブレない芯のようなものがありますよね。正しくなくてもいい、自分の人生を生きればいい。それから、人に依存しなくていい、利用してもいい。「自立」が根底に流れていますよね。
凪良)そこは自分自身の考え方も出ているところなのかなと思います。女性が経済的に自立するというのは、自由に生きていく上で外せない要素の1つなので、その辺りは主人公・ヒロインの暁海を通して強く書いたところだと思います。現実的には「ちょっとどうなの?」と思われる関係だと思うところもあるので、ここは書くのに勇気が要りました。
黒木)そうなのですね。
凪良)いまの時代、どうしてもデリケートなことなので。読者さんから「どんな反応があるのかな。これは嫌われるかも知れないな」と思ったのですが、自分が書きたいことだったので、どんな反応が返ってきても受け止めようと思いました。
黒木)私は『汝、星のごとく』の1行目から虜になったのですが、「月に一度、わたしの夫は恋人に会いにいく」というところから始まるのですよ。「何これ?」と。
凪良)そうですよね。
黒木)この1行目の書き出しは秀逸ですね。
凪良)ありがとうございます。
黒木)これでもう虜になってしまいました。
凪良ゆう(なぎら・ゆう)/小説家
■2007年、『花嫁はマリッジブルー』で著書デビュー。
■2014年、『美しい彼』を刊行。2021年には連続ドラマにもなった人気シリーズ。
■2017年、BL作品ではない『神さまのビオトープ』が非BL作品として高い評価を受ける。
■2019年に『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。2020年には『流浪の月』で第17回本屋大賞を受賞。2022年には実写映画化。2020年刊行の『滅びの前のシャングリラ』で2年連続で本屋大賞にノミネート。2023年、『汝、星のごとく』で第20回本屋大賞受賞。直木賞候補となった。
■2023年11月、『汝、星のごとく』の続編となる最新作『星を編む』を刊行。
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