後味悪い年の瀬……政治資金問題まだまだ続く?
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月18日 17時20分
「報道部畑中デスクの独り言」(第350回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、自民党派閥パーティの政治資金問題について—
今年(2023年)も半月を切りました。本来は年内の仕事を整理し、年明けに向けた準備を進め、年賀状も書き始める……慌ただしいなかでも「今年もお疲れさまでした」と、心穏やかな時期のはずですが……例年になく後味の悪さが残る年の瀬です。
自民党派閥パーティの政治資金問題、とりわけ最大派閥の安倍派については、パーティ券の販売ノルマを超えた議員に対し、還流=キックバックが行われていたと言います。さらに、それは政治資金収支報告書に記載されず、「裏金化」しているという疑惑が噴出しました。その額は最近5年間で約5億円に上るとされています。
東京地検特捜部が関係者から事情を聴いているという情報が流れるなか、当の政治家は軒並み口をつぐみました。特に内閣のスポークスマンであるべき、松野博一官房長官(当時)に至っては、毎日午前・午後の2回の記者会見があるにもかかわらず、「政府の立場」「事実確認中」「捜査中」を強調。一貫して明言を避け続けたまま、事実上の更迭となりました。
国会の答弁も同様でした。もっとも、野党の質問は報道ベースにしたもので独自の“爆弾”はなく、壁を打ち崩すには至りませんでしたが、会期末ギリギリの12月13日、立憲民主党は岸田内閣の不信任決議案を提出。日本維新の会、国民民主党なども賛成に回りました。
「珍しく野党一致でこれは賛成しようということになった。政治不信の極みと言われる状況で賛成せざるを得ない。信頼なくして政治は前に進まない、政策も前に進まない」(日本維新の会・遠藤敬国会対策委員長)
野党が久々に一致結束したわけです。不信任案は与党の反対多数で否決され、国会は閉幕したものの、今後の捜査が現職の議員に及ぶのかどうかは不透明な状況です。
臨時国会閉幕後、13日夕方には岸田文雄首相の記者会見が行われました。
「政策集団の活動、自民党の政治活動に、政治資金の観点から厳しい目が向けられ、国民から疑念を持たれる事態を招いていることは極めて遺憾だ。信なくば立たず。国民の信頼なくして政治の安定はあり得ない」
政治資金問題について切り出し、党全体として強い危機感を持って一致結束した対応を図る考えを示しました。
「国民の信頼回復のために『火の玉』となって自民党の先頭に立ち取り組む」
会見では時に遠くを見るような目で顔を上げ、口を固く結ぶ表情を見せました。ただ、首相は派閥という二文字は使わず「政策集団」で貫きました。
ちなみに、この間の松野氏は首相が政治資金問題に言及したとき、まばたきが若干多くなりましたが、その後は表情をほとんど変えず。両手を膝に置いては、時折手を組む、その繰り返しでした。その無表情さはある意味、手の内を知られない政治家の「資質」かも知れません。
この半月あまり……気になったのは、問題に対する議員の当事者意識です。
12月4日、自民党役員会後の茂木幹事長の記者会見で、今回の問題は議員自身が当事者意識をもって向き合うべきか、事務方の問題に過ぎないのかを尋ねました。回答は次のようなものでした。
「決して事務方の問題とは思っていない。政策グループだけではなく、党に対しても厳しい目が向けられている」
一方、実際はどうでしょうか。内閣不信任決議案を審議する衆議院本会議を記者席からみて、強い違和感がありました。自民党議員の反対討論で、野党からは「15分もしゃべれるのか!?」「裏金説明しろよ」「責任はどうするんだ」というヤジが飛ぶなか、討論後、与党から割れんばかりの拍手が起こったのです。
通常であれば、与党議員の発言に身内から拍手が起きるのは不思議なことではありませんが、いまは盛り上がっている場合なのだろうか……議員1人1人に、この問題に対する当事者意識があるのか疑問に思わざるを得ませんでした。
今回の裏金問題、当該議員の立場で考えてみれば、「キックバックがあるのは、パーティ券を売る“営業力の高さ”の表れで、むしろ評価されるべきこと。それがなぜ?」。松野氏の立場になって考えれば、「慣例に沿って忠実にやってきただけなのに、何でいまになって、官房長官の私が矢面に立たねばならないのか」……これが本音なのかも知れません。だとしたら、救いようがありませんが……。
キックバックの慣例は約20年前から続いていたという指摘もあります。今回の問題について、口を開く議員も出てきました。
「派閥の方からかつて収支報告書に記載しなくてよいという指示があった。そういうもんなのかな、というふうにしか思わなかった。大丈夫かなと思ったが、長年やってきているんだったら適法なのかなと」
「しゃべるな、しゃべるな、これですよ。派閥の方から(しゃべるなと)指示があった。(資金を)やましい思いで使っている人はいないはず。早く身の潔白を証明したい、多くの議員はそう思っていると思う」
安倍派の宮沢博行防衛副大臣は、具体的な人物は明かさなかったものの、収支報告書不記載の指示、問題発覚後に派閥から“かん口令”が敷かれたことを認めました。
この問題は根深く続いていたのでしょう。本来は誰が指示したか、大本を突き止める必要がありますが、時効の問題もあり、容易ではなさそうです。仮に現在の安倍派の実力者が立件されたとしても、大きな視点で見れば「トカゲのしっぽ切り」で終わるのかも知れません。
「政治とカネの問題」は古くて新しい問題です。そのたびに法律の改正が行われてきましたが、必ず法の抜け穴を思いつき、網の目をくぐる輩が出てきます。世の中は結局「カネ」……そんな風潮が続く限り、問題が尽きることはないでしょう。
いわば「性悪説」に立った上で、国民が監視し続けるしかない……そんな“諦観”を岸田政権は裏切れるでしょうか。(了)
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