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日本に“食べられるウエディングケーキ”を広めたい! 元・ラガーマンのパティシエが一念発起

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月29日 12時0分

日本に“食べられるウエディングケーキ”を広めたい! 元・ラガーマンのパティシエが一念発起

株式会社アニバーサリーの代表取締役でパティシエの本橋雅人さん、ブランドマネージャーの前島ゆみさんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)にゲスト出演。本橋さんが、ラガーマンからパティシエに転身した経緯や、1年がかりで準備しているというクリスマスケーキ作りについて語った。

パティシエ・本橋雅人さんは、埼玉県のラグビーの名門高校の出身で、そのまま大学でもラグビーを続けていたら、日本代表にもなれただろう、と言われるようなラガーマンだったが、心機一転。『パティシエになろう!』と決意して高校卒業後はラグビーをやらず、「スリジェ」「マルメゾン」「銀座 カフェブラン」のチーフパティシエを経て、1987年に単身渡英。

イギリスの伝統工芸菓子・シュガークラフトなどの技術を学び、帰国後、1990年に東京都目黒区にウエディングケーキの専門店「アニバーサリー」をオープンした。

日本に、食べられるウエディングケーキを!

上柳:パティシエの本橋さんの指を見ますと、ゴツゴツとしていて『ラガーマンの指だな』と思うんですが、ケーキに飾るバラの形のデコレーションや、クリームの飾りつけなどを見ると、本当に信じられないような細かい作業をされていて。

前島さん:そうですね。今でも衰えず、すごく細かい作業をしていますね。本人も、細かい作業がすごく好きだと話しています。

上柳:1980年代、90年代のウエディングケーキというと、ケーキ入刀でナイフを入れるところだけが本物のケーキで、あとは食べられない作り物なんですよね?

前島さん:そうですね、当時のウエディングケーキといえば、イミテーションだったんです。なので、本橋はイギリスに行って『食べられて、それでいて美しいウエディングケーキを日本で広めたい』と思い、食べられるウエディングケーキを広めました。

上柳:イギリスの方ですと、3段のウエディングケーキにはそれぞれ意味があって、一番下はご列席いただいた皆さんとシェアして食べるもの。2段目は、列席できなかった方に後で配るもの。一番上は何年か後に食べるものだそうですね。

前島さん:はい、そういう伝統となっています。

上柳:だから一番上は、お砂糖の成分が多いので何年も保存ができると。この食べられて美しいウエディングケーキ、最初はなかなか理解してもらえず苦労されたそうですが、今は多くの方に知られていますよね。

なぜ、ラガーマンからパティシエに転身?

上柳:本橋さんは、埼玉のラグビーの名門校で、とにかくラグビー、ラグビー、ラグビー……という生活をしていて、しかも「そのまま行ったら日本代表になれただろう」と言われていたほどだったそうですが、なぜケーキ作りの道を選ばれたのですか?

本橋さん:ラグビーは、一つのレールが引かれたんです。

上柳:はい。

本橋さん:大学ラグビー、その次に社会人ラグビーという道ができたんです。もちろん、それも凄く魅力的だったのですが、『自分の力で、個の力で何ができるかな?』ということに目覚めまして、職人の道、お菓子の道に進みました。

上柳:なるほど。ただ、「職人の道」は分かりますが、「お菓子の道」はちょっと飛躍というか、不思議だなと感じます。

本橋さん:お菓子って、楽しい時に食べますよね。他の職人さんのところでは、悲しい時とか、冠婚葬祭などもあるんですけど、お菓子は唯一、楽しいときに食べるんだなと感じまして。そういったことを自分も仕事にしてみたいな、という思いからお菓子を選びました。

上柳:その選択が、本橋さんの人生を大きく変えたわけですね。

クリスマスケーキ作りは「1年前」から準備が始まる

上柳:今日のこの収録は12月13日に行っているのですが、クリスマスケーキ作りでものすごく忙しい時じゃないですか?

本橋さん:そうですね、ちょうど予約も終わったので、作る体制を作っているところです。

上柳:なるほど。作る前に、「作る体制」を作るのですね。クリスマスケーキはどういう風に作っていくのですか?

本橋さん:5~6名のチームを、4~5チーム作って、ケーキをサンドしながらクリームを塗って、飾って、箱に入れていくんです。

上柳:いろんな方が自分の役割をどんどん果たしていって、あの小さな空間に色どりを加えていくわけですね。

本橋さん:そうです。残った子たちも、イチゴを切ったり、生クリームを準備したり、また別のプティガトーを作ったり、いろんな作業をしています。

上柳:東京のほかに北海道にもお店がありますが、全店舗で何台ぐらいのクリスマスケーキを作られるのですか?

本橋さん:クリスマスケーキのほかにも、冷凍ケーキも作っていますので、全部で6千台を超えます。

上柳:ものすごい数ですね……。保管はどうされているんですか?

本橋さん:大きな冷蔵庫もありますし、あとは大きな冷蔵車を借りて、そこに全部ストックします。

上柳:アトリエアニバーサリーさんの、クリスマスケーキ用パンフレットを見せていただきましたが、これはもう芸術品ですよね。例えば、このリボンのケーキはどういう工夫があるのですか?

本橋さん:まずは、形がすごく立体的になっているところと、生クリームを、ピスタチオを加えてグリーンにしたり、イチゴを加えてピンクにしたり。ケーキ1台1台にいろんな“絞り”をほどこしていますので、その辺りが特徴かなと思います。

上柳:絞り、というのは生クリームを絞る作業のことですか?

本橋さん:そうです。

上柳:全部、手作業でされているんですね。

本橋さん:この絞りが、熟練した者じゃないとできないから、本当に大変で。ですから毎回クリスマスに向けて、春から人を育てていくんです。1年かけながら。

上柳:クリスマスケーキの企画も、春から始めているそうですが、職人さんも1年前から訓練が始まるわけですか?

本橋さん:そうなんです。日々の中で、育成しています。

ケーキ職人の8割は女性

上柳:職人さんは若い方が多いんですか?

本橋さん:今は若い人が中心ですね。

上柳:私はよく、渋谷スクランブルスクエアにあるアトリエアニバーサリーさんに行きますが、 店舗の横がガラス張りになって、職人さんがケーキを作っていて。注文して待っている間、それを見てるのがすごく楽しいんですが、ほとんど女性の方だな、と思っていまして。

本橋さん:はい、8割は女性です。

上柳:えっ、そうだったんですね。

本橋さん:大体3年ぐらいで、ある程度できるように育てています。

上柳:とにかく、実際にたくさんのケーキを作ってもらうと?

本橋さん:そうですね、数をこなすということです。クリスマスだけでなく、日々の中で、バースデーケーキを1日100~150台ぐらい作っていますので、たくさんの経験をしてもらっています。

一番怖いこと

上柳:どのケーキも、食べるのがもったいないなと思うぐらいなんですが、これを崩さないように、お店に持っていく、そしてお店からお客さんが自宅に持っていくわけですが、大変なのでは?

本橋さん:そうですね、これが一番怖いんですよ……。移動中、ちょっとでも角をぶつけてしまうだけで、中のケーキが破損してしまうので、そういった場合には一台一台、全部チェックします。

上柳:冷蔵車とか冷凍車というのは、踏み切りだってまたぐでしょうし、ドキドキしますね。これ、届ける方も本当に大変でしょうね。

本橋さん:クリスマスシーズンは、やはり、配送業者さんも冷凍物の荷物が多いんですよ。

上柳:そうですよね。

本橋さん:ですが、そこで倒されてしまうと、すべてが終わりになってしまうので……。箱にいろいろと注意書きのシールを貼って、気を付けていただいています。

――クリスマスや誕生日、結婚式など、ケーキは特別な日に食べることが多い。見た瞬間、食べた瞬間から幸せな気持ちになるが、実は1年がかりで準備をされていたり、職人さんたちの日々の修業、出来上がったケーキを丁寧に運ぶなど、想像以上に多くの人が関わり、思いが込められたことを想像すれば、より特別感を味わえるかもしれない。

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