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馬に時差ボケがないのはなぜか

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月27日 11時20分

馬に時差ボケがないのはなぜか

黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(12月22日放送)に調教師の矢作芳人が出演。競馬における調教師の仕事について語った。

※画像はイメージです

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。12月18日(月)~12月22日(金)のゲストは調教師の矢作芳人。5日目は、馬の長距離移動と競馬の魅力について—

黒木)2023年8月、北海道・真狩村に矢作さんがプロデュースされた外厩施設「真狩サマーステーブル」が誕生しましたが、どんな施設なのですか?

矢作)大きな括りで言うと牧場です。自分が管理している馬全部を栗東の厩舎に入れることはできないので、夏の間、北海道の涼しい気候のなかでトレーニングするための施設です。

黒木)馬は夏と冬ではどちらが得意なのですか?

矢作)圧倒的に冬が得意です。寒いのが得意で、暑さには弱いです。

黒木)春のG1が終わって、秋のG1が始まるまでの間ということですか?

矢作)そうですね。夏場はローカル競馬と言って、新潟や福島、北海道の函館や札幌で競馬が行われます。その函館・札幌で出走する馬をここに集めるのです。

黒木)関西から北海道への移動はトラックですか?

矢作)トラックです。

黒木)その間、馬の体調管理はどのように行うのですか?

矢作)馬はずっと立っているのですが、最近のトラックは高性能でサスペンションもよく、エアコンでの温度管理もいいので昔と比べて環境がよくなりました。

黒木)ストレスが掛からないように、ということですか?

矢作)それでも我々の本拠地である栗東から札幌競馬場までは、丸1日掛かりますし、フェリーにも乗ります。管理は大変と言えば大変です。

矢作芳人

矢作芳人

黒木)海外に連れて行くときは、もっと大変ですよね。どのように連れて行くのですか?

矢作)貨物便コンテナのようなところに2頭入れます。飛行機のなかでの空調管理など、いろいろと気を遣っていただいています。その代わり高いですね。

黒木)馬専用の飛行機なのですか?

矢作)貨物機のいちばん前に馬を乗せてもらっています。

黒木)飛行中は馬の状態を見ることはできませんよね?

矢作)離着陸以外は近くで見ることができます。離陸と着陸のときは、人間は座ってシートベルトを着用する必要がありますが。

黒木)空の上に行ってからはお世話できるのですね。

矢作)そうですね。輸送中は空の上で点滴をしたり、水を飲ませたり、いろいろなものを食べさせたりしています。

黒木)移動は大変ですね。

矢作)馬はどこに連れて行かれるのか、わかっていないと思うので。

黒木)伝え方はどうするのですか?

矢作)「遠足に行こうね」という感じで言います。

黒木)アメリカに行こうね、サウジに行こうね、とか。

矢作)ただ幸い、人間のような時差ボケが馬にはないのです。

黒木)どうしてわかるのですか?

矢作)馬には昼と夜との区別があまりなくて、立ったままでもうつらうつらと寝ていることが多いので、それほど時間の感覚がありません。時差ボケがないだけでも、人間より元気です。

黒木)競馬の魅力は一言で言い尽くせないとは思いますが、最後にお願いします。

矢作)いまの日本競馬は、世界的にもトップレベルです。それに馬券というギャンブル要素も加わって、エンターテインメントとして非常に優れていると思います。ファンの方には、サラブレッドの美しさを見ていただきたいです。サラブレッドという芸術品を見るような気持ちで、それに賭けていただけたら、我々にとっても最高です。

矢作芳人

矢作芳人

矢作芳人(やはぎ・よしと)/調教師

■日本中央競馬会(JRA)栗東(りっとう)トレーニングセンター・調教師。
■1961年3月20日生まれ。東京都出身。
■開成高校卒業後、1年余りオーストラリアの厩舎、牧場で修行。
■帰国後、大井競馬場の父・矢作和人厩舎を経て、1984年・栗東で厩務員、1986年からは調教助手を務める。
■2004年2月、調教師試験に合格。2005年3月、厩舎を開業。
■2005年3月26日、テンザンチーフで初勝利。2014年、JRA賞(最多勝利調教師)など表彰多数。

■2018年以降、国内外で歴史的活躍馬を送り出し、“世界のヤハギ”と称される。
・国内G1レース4勝、オーストラリア屈指の大レース「コックスプレート」を日本調教馬として初めて制した2019年JRA年度代表馬『リスグラシュー』。
・2020年、史上8頭目の無敗の3冠馬『コントレイル』。
・日本調教馬として世界最高峰のレース「米ブリーダーズカップ フィリー&メアターフ」を初めて制し、日本競馬界の歴史的快挙を成し遂げるなど、海外G1・3勝を達成した『ラヴズオンリーユー』。アメリカの年度表彰で最優秀芝牝馬を受賞。
・日本調教馬として史上初めて「米ブリーダーズカップ ディスタフ」で優勝した『マルシュロレーヌ』。
・世界最高の1着賞金1000万ドル(約13億6000万円)を誇るサウジアラビアのレース「サウジカップ」を日本調教馬として初めて制した『パンサラッサ』(*日本G1の最高賞金は有馬記念とジャパンカップの5億円)。
……など、海外G1をはじめ、日本のホースマンの夢と言われる数々のビッグレースを制してきた日本を代表する調教師。

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