「いい意味でのダイハツ色」が薄れる懸念も ダイハツ認証不正
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月26日 11時35分
ダイハツ工業本社 ロゴ=21日午前9時53分、大阪府池田市のダイハツ工業本社
元日本銀行政策委員会審議委員でPwCコンサルティング合同会社チーフエコノミストの片岡剛士が12月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ダイハツ工業の車両認証試験をめぐる不正問題について解説した。
ダイハツ、国内すべての工場を稼働停止へ
ダイハツ工業の車両認証試験をめぐる不正問題で、同社は12月26日までに国内4つの工場すべてを停止する。工場勤務の従業員に対しては、賃金補償をすることで労働組合と合意した。
飯田)国内の生産をすべてストップするという方針で、規模が大きくなってきました。
片岡)今回の問題は内部通報がきっかけでした。問題が発覚してから第三者委員会が報告書を出しましたが、直近だけではなく1989年以降から起きており、とても長い話だということがわかりました。
飯田)ここ30年余り。
片岡)一時的なことではなく、構造的に虚偽記載されていた。そのため工場を閉めるなど、抜本的な対策を取るという方向なのだと思います。
関連会社への影響も大きい
飯田)自動車産業は裾野も広いですよね。直接経営している工場に関しては、賃金補償を行うようですが……。
片岡)これが長期化すると、取引先などに対しては直接補償できませんので、悪影響が生じる可能性もあります。ことと次第によっては、自動車業界全体に対しても一定程度の下押し圧力が掛かるかも知れません。
飯田)そうですよね。
片岡)今年(2023年)、アメリカで賃上げ交渉のストライキがありました。大きな会社だったので、自動車生産への影響が大きかったわけですが、今回のことも長期化すればするほど影響は広がるため、規模が大きくなることは容易に予想されますね。
車両の認証試験そのものに問題があるかどうかを検証する必要がある
飯田)この先どうなっていくのか。車両の認証試験をめぐる不正については、以前にも、例えば三菱自動車などがありましたよね?
片岡)そのときに、なぜ「自社は大丈夫なのか?」という発想がなかったのか。認証試験そのものについて、私はよく存じ上げていませんが、認証試験をきちんとクリアできるような形に変える必要があるかも知れません。これだけ不正が広がっているということは、認証試験そのものに問題があるような気もしますので、その辺りの確認も大事だと思います。
飯田)本来であれば、国の機関が認証するところをメーカーに委託している部分があり、仕組み全体がどうなのか。
片岡)それが企業にとって、「きちんと行わなくてもいい」というインセンティブを与えている部分もあるのかも知れません。
なぜ、「悪いことは悪い」と指摘できる風土をつくらなかったのか
片岡)問題の根が深いこともあり、余計そうだったかも知れませんが、全体的にダイハツの対応はスムーズで早かったと思います。
飯田)報告書を受けて記者会見も行いました。そのなかで、ダイハツはトヨタの完全子会社でもあり、「トヨタイズム」をもっと浸透させていくという話が出た。ダイハツに勤めていた方からは、「ダイハツはトヨタの関連ではあるけれど、いままで独自路線で頑張ってきたのに、内部の人たちの士気が下がらないか心配」という指摘もあります。風土の問題は難しいですよね?
片岡)しかし、これだけ問題が大きくなってしまうと、問題解決においてトヨタに依存せざるを得ないところはあるわけです。いい意味でのダイハツ色が薄れる懸念はありますね。
飯田)商品開発とはまた別に、不正の部分の膿は出し切らなくてはならない。そこへトヨタのメソッドを使っていくのでしょうか?
片岡)なぜ「悪いことは悪い」と指摘できる風土をつくらなかったのか。よくある話なのですが、「問題が起きたらすぐに報告してくれ」と上の人は言うけれど、問題が起こった瞬間に袋叩きにされるとなると、報告できないわけです。
飯田)下としては、「俺の手元で何とかなるのなら、何とかしてしまいたい」と考える。
片岡)失敗を過度に「お前のせいだ」と責めると、結局は失敗を隠す風土につながりかねないので、この辺りは私自身も、自分の仕事などに関して気をつけなければと思いますね。
飯田)マネジメントですね。
他企業にも起こる可能性のある問題
飯田)今回の報告書はダイハツのホームページに出ています。概要版を見ているだけでも、納期が迫るなかで「お前のせいで失敗したらどうするのだ」というようなプレッシャーから、不正に手を染めたところがあるのではないかと指摘されていました。
片岡)お客さんのためを思えば、安全確認を含めて手続きをしっかり踏むことが大事なのですが、納期を早くあげるなど目先のサービス充実のため、本質的に大事なことをないがしろにしがちな問題がある。それはダイハツに限らず、さまざまな企業の問題として起こっています。「もって他山の石とする」というような気持ちが大事だと思います。
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