これほどまでに間違っている「石破発言」 専門家が解説
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2023年12月26日 17時40分
元日本銀行政策委員会審議委員でPwCコンサルティング合同会社チーフエコノミストの片岡剛士が12月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。「本来の資本主義に戻す」とする石破元幹事長の発言について解説した。
自民党の石破氏が、自身が目指す経済政策について「本来の資本主義に戻す」と述べる
日本経済新聞によると、自民党の石破茂元幹事長はインタビューのなかで、以下のように発言した。
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『自民党の石破茂元幹事長は24日配信のラジオNIKKEIのポッドキャスト番組に出演しました。自身が目指す経済政策について「本来の資本主義に戻す」と述べました。財政や金融政策の正常化の重要性を訴えました。社会保障をはじめ政策に取り組む際は「必ず財源(の確保)とセットだ」と強調し「その議論がどこかにいってしまったのは自民党のあるべき姿だと思わない」と話しました』
~『日本経済新聞』2023年12月24日配信記事 より
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飯田)「本来の資本主義」という発言について、どうご覧になりますか?
石破氏と岸田総理の言う「資本主義」とは何なのか?
片岡)それらしく言うとそれらしく聞こえる言葉の1つとして、「資本主義」というものがあります。岸田総理も「新しい資本主義」と言い、石破さんは「本来の資本主義に戻す」と話している。問題なのは、ご両人がおっしゃっている「資本主義とは何なのか」というところが、聞いている方にはわからないことです。
飯田)資本主義というのが。
片岡)例えば「社会保障をはじめ、政策に取り組む際は必ず財源の確保とセットだ」と示していますが、私はこれを聞いて「石破さんは少し甘くないか?」と思いました。ご本人が言いたいのは財源の確保ではなく、「増税と歳出削減をセットで」ということですよね。
政策は財源の確保とセットで行われている ~将来の子どもに関する政策は国債で手当てするべき
片岡)それを「財源の確保とセットだ」と言うのは、緊縮派の政治家の風上にも置けない言動で、もっとはっきり言うべきです。私自身はこういった話はまったくの論外だと思います。財源を確保するときには国債を発行する手段もあるので、現状の岸田政権もそうですが、政策は財源の確保とセットで行われているわけです。
飯田)岸田政権も。
片岡)そうでないと政策はできません。ただ、彼らが言いたいのは、国債の発行は除外しているということなので、そこが問題だと思います。異次元の少子化対策などの話がありますが、特に将来の子どもに関する政策については、将来返せる、負担能力があるという意味において、国債で手当てするのがまともな方法だと思います。
飯田)国債で。
片岡)そういった議論を抜きに「お金が四六時中足りない」という前提で、あっちを立てたらこっちが立たず、社会保険料を増額したり、その財源を使って異次元の少子化対策を行うような方向になっている。そのようなやり方から、いい加減に脱却したらいいのではないかと思いますね。
可処分所得が実質でマイナスが続くような状況で消費が増えることはない
片岡)石破さんの発言には、さまざま突っ込みどころが満載なのですが、どこから話しましょうか。
飯田)増税に関しては「きちんと使ってくれるという安心感が政府にあるか」ということですが……。増税して社会保障が盤石になれば、安心してお金を使うというような論は、いろいろなところで言われています。
片岡)安心で消費が増えたらこれほど楽なことはないわけです。ご自身の状況も振り返っていただきたいのですが、政府の動きが安心だからと言って、消費するでしょうか?
飯田)どうでしょうね。
片岡)私自身はそもそも所得が足りていないような気がします。むしろその辺りを充実させてから、それでも消費しないのであれば、そこで初めて考えればいい論点だと思います。可処分所得が実質でもマイナスが続くような状況のもとで、消費を増やせというのは無理な話です。
飯田)「若い人は車を持たない」などと言われますが、そもそも可処分所得がこれだけ減っており、その上、増税や社会保険料が上がるとなると、みんな生活防衛に走りますよね。
経済が拡大してデフレから脱却するまで金利を上げるのを待つのが、金利が早く上がる経済に戻すための必要条件
片岡)「おかしいと言えない組織に永続性はない」とも言っているようです。
飯田)派閥の政治資金問題に関連してということですね。
片岡)石破さんは完全に「おかしい」と言っているので、そのような石破さんが自民党におられるということは、自民党は永続性のある組織だと言いたいのかなと思います。
飯田)なるほど。
片岡)労働分配率を正常にしなくてはいけない、金利が上がるような経済にしなくてはいけないというのは、まさにその通りです。デフレから完全に脱却できれば、物価だけでなく金利も上がる状況になります。労働分配率自体も、いまの日本は企業全体では最低ラインになっていますが、賃上げなどの動きが拡大していけば分配率が上がります。
飯田)賃上げが拡大すれば。
片岡)しかし、石破さんの発言の問題は「金利を上げたら、金利が上がる社会になる」というように勘違いしているところです。金利は物価が正常化して経済が正常化されたら、自然と上がるものです。経済が拡大してデフレから完全に脱却するまで金利を上げるのを待つのが、金利が早く上がる経済に戻すための必要条件なのです。
飯田)デフレから脱却するまで金利を上げるのを待つ。
片岡)最初に金利を上げてしまったら、経済成長はしません。かつて「利上げして経済成長を」とおっしゃる人はいましたが、それがいかに間違いであったかは歴史が実証しています。石破さんがご自分の主張を通したいのであれば、ご自身が考えることの逆をやればいいと思います。
飯田)早急な利上げはせず、財政を拡大させた上で、最後に果実を採るということですね。
片岡)それなら「本来の資本主義」に戻せるのではないでしょうか。
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