「乗員乗客全員」生還させたJAL乗務員の適切な避難誘導 羽田事故

C滑走路脇に横たわる日航機の残骸の前では現場検証が行われている＝４日午前９時３１分、羽田空港（酒巻俊介撮影）

航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏が1月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。羽田空港で発生したJAL機と海保機の衝突事故について解説した。

C滑走路脇に横たわる日航機の残骸の前では現場検証が行われている＝2024年1月4日午前9時31分、羽田空港（酒巻俊介撮影）　写真提供：産経新聞社

国交省、羽田事故の交信記録公表　海保機侵入許可の形跡なし

国土交通省は1月3日、羽田空港で2日に衝突した日本航空（JAL）の航空機と海上保安庁の航空機との管制官の交信記録を公表した。交信記録では、管制官は海保機に滑走路手前の停止位置まで進むよう指示しているが、滑走路内への侵入や離陸を許可した形跡はなかった。一方、JALは機長らが「海保機を視認できなかった」と話していることを明らかにした。

飯田）交信記録が公表されましたが、どうご覧になりますか？

鳥海）最初のニュース速報が出たときには、JAL機が単独で燃えているのかと思いましたが、映っていたのは海上保安庁の飛行機でした。衝突してからJAL機が止まるまで約1キロ移動していますので、海上保安庁の飛行機とJAL機は1キロ離れており、そのあとにJAL機の映像が出てきました。

乗務員による避難誘導が適切だった

鳥海）交信記録などが出てきているなかで、管制塔からの指示の解釈の違いなのか、行き違いが出ています。私は午後8時ごろに羽田空港へ入りましたが、海外メディアがとても多かったですね。15年ほど取材していますが、これほど多くの海外メディアが空港で取材していたのは初めてです。それだけ今回の事故に対して、海外メディアの関心が大きかったということですね。

飯田）そうですか。

鳥海）報道で映像が出たときは、「ある程度の怪我人が出るのではないか」と感じた方も多かったと思いますが、民間機であるJAL機の方は重傷者も出なかったので驚きました。昨日（1月3日）の記者会見によると、体が不自由な車椅子の方が2人いらっしゃったそうです。脱出方法までは公表されませんでしたが、全員が脱出できたということは、乗務員による避難誘導が適切に行われた結果だと思います。

飯田）そうですよね。

鳥海）航空会社の客室乗務員は1年に1回、必ずエマージェンシー訓練を行いますが、それを通過しないと乗務できません。訓練のときは、長年乗務されている方でも緊迫感があるそうです。その訓練を受けたことが今回、短時間で全員脱出できた結果につながったのではないでしょうか。

C滑走路が閉鎖され、実質的には半分の収容能力となった羽田空港

鳥海）今回の事故でC滑走路が閉鎖されましたが、羽田空港にとって、滑走路が1本ないということは大変なのだと思い知らされました。

飯田）海側の大型機も離陸できる滑走路が使えなくなった。

鳥海）昨日のような北風が吹くなかでの運用になると、基本的に第1ターミナルと国際線の第3ターミナルの間にあるA滑走路が着陸に使われます。そして最も新しく、海側にあるD滑走路が離陸に使われます。C滑走路は北向きの北海道などへ行くときの離陸・着陸に使うのですが、そこが使えなくなった。一般的には4本のうち3本が使えないと、4分の3の状態のように考えますが、B滑走路については昨日の夜は使っていたけれど、横風用のB滑走路は使わない運用のようなので、実質半分の収容能力だったということです。羽田へ帰る便は減らさないというなかで、最終便が羽田空港に到着したのは午前3時14分でした。那覇からの便で、那覇を出発したのは午前1時6分でした。

飯田）羽田がさばき切れないから出発を遅らせて、何とか午前1時に出して午前3時に着いた。

鳥海）深夜1時台、2時台に着いた便だけで20便以上が出ていますから。

欠航119便、約2万人以上に影響

鳥海）福岡空港では、夜9時半ぐらいの段階で5～6便を全部欠航させました。福岡空港は本来10時までで、昨日はそれを11時ぐらいまで延長していましたが、それでもさばき切れなかった。

飯田）羽田空港は24時間運用ですが、行った先の空港に門限がある場合、間に合わないとキャンセルになってしまうのですね。

鳥海）特別に延ばしてはいたのですが、朝の段階で54便が欠航し、約1万1000人に影響が出ると報道されていました。今朝（4日）の発表では、最終的に国内線と国際線合わせて119便が欠航し、約2万人以上に影響が出たということです。65便の欠航が追加で発表されており、その方たちはきょうも飛行機が取れず帰れないのです。新幹線が通っていれば新幹線で帰れる方もいらっしゃいますが、新幹線が通っていない沖縄などは難しいですよね。

飯田）沖縄は、基本的には飛行機で帰ることになりますからね。

鳥海）週末まで帰れないのではないでしょうか。事故原因を究明しつつC滑走路を早くオープンさせないと、この状況は変わらないかも知れません。

対応が心配な外国人観光客

鳥海）きょうはこの状況が間違いなく続くと思いますので、飛行機に乗る方は、時間に余裕を持っていただきたいですね。また、外国人観光客の方は何が起こっているのか把握しにくいですよね。

飯田）各国の大使館も「アシストします」というようなポストを出しています。