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韓国・李在明氏が襲撃されたことで「共に民主党」の支持率が上がる可能性も

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月4日 17時30分

韓国・李在明氏が襲撃されたことで「共に民主党」の支持率が上がる可能性も

ジャーナリストの佐々木俊尚が1月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。韓国最大野党「共に民主党」の李在明代表が刃物で襲撃された事件について解説した。

韓国与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道(キョンギド)知事=2021年11月25日、ソウル外信記者クラブ 写真提供:産経新聞社

韓国与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道(キョンギド)知事=2021年11月25日、ソウル外信記者クラブ 写真提供:産経新聞社

韓国最大野党代表・李在明氏、刃物で襲撃され病院に搬送

1月2日午前、韓国最大野党「共に民主党」の李在明代表が訪問先の南部・釜山で報道陣に対応中、刃物を持った60代の男に襲撃され、病院に搬送された。聯合ニュースによると、李在明氏は釜山大病院で応急治療を受け、ヘリコプターでソウル大病院に搬送。内頸静脈の損傷が確認され、約2時間にわたって手術を受け、現在は回復中。

飯田)サインを求める支持者を装って接近し、20~30cmの刃物で犯行に及んだということです。

佐々木)日本でも安倍さんの暗殺、そして岸田さんの暗殺未遂など政治家・要人へのテロが相次いだので、嫌な感じですよね。日本の事件に影響された可能性もあるかも知れません。

飯田)今年(2024年)は韓国も総選挙を間近に控えていますが。

佐々木)日韓関係や韓国世論にどんな影響があるのか気になります。「共に民主党」は去年(2023年)の大統領選では激しく戦いましたが、李在明氏は「韓国のトランプ」と言われていて、ポピュリズム寄りの人です。対日政策も、現政権は親日的で「日本と共に安全保障を確立しましょう」という感じですが、日本寄りになっていることに批判的で、「屈従外交だ」などと言っています。

飯田)屈辱的な従属、「屈従」。

佐々木)怪我されていて申し訳ないけれど、これで「共に民主党」の支持率が上がってしまうと、それはそれで日本としては困るところもあり、難しい微妙な話ではあります。

飯田)尹錫悦大統領は報道官を通じて、「いかなる場合にもこうした暴力行為は許されない」と表明しています。

テロリストを物語化したがるメディア

佐々木)テロが世論を動かしてはいけないのだけれど、日本の場合は安倍元総理の暗殺事件もそうでしたが、メディアが世論を動かしてしまったところがあり、禍根を残したと思います。韓国でも同じように、これで世論が動くような方向になって欲しくありませんね。

飯田)マーガレット・サッチャーなども言っていましたが、テロや暴力行為を報じる、あるいはそれに味をつけて報じることによって、テロは完成してしまう。

佐々木)安倍元総理の事件もそうでしたが、テロリストを過剰に物語化することで、その記事を読んで英雄視する人が現れてしまう。ニュージーランドのアーダーン首相は、「テロリストの名前を今後一切口にしない」と言っています。

飯田)ニュージーランドのクライストチャーチで銃撃事件があったときですね。

佐々木)物語化しないことは大原則だと思うのですが、メディアは過剰に物語化したがる。それが1つの病弊としてあると思います。

事件が起こると「社会の責任だ」としてしまうメディア

飯田)容疑者を生んだ社会の病理を、この事件から報じるのだと。

佐々木)80~90年代はグリコ・森永事件や神戸連続児童殺傷事件など、劇場型犯罪が多かったではないですか。当時、私は新聞記者でしたが、あまりにも社会に対するインパクトが強すぎるので、犯人像から社会を逆批評するような取材手法が流行った傾向がありました。「社会が悪いのだ」という方向に無理やり持っていくようなメディアの風潮は、あの時期にできたのではないでしょうか。

飯田)80~90年代に。

佐々木)未だにそれを引きずっている部分があって、何か事件が起こると、「これは我々の社会の責任なのだ」としてしまう。もちろん背景事情としてはあるのですが、それを言い出したら「すべての犯罪は社会に責任があって、犯罪者には責任がない」となりかねません。あまり過剰に「社会の責任だ」と言わない方がいいと思うのですが、この辺りの話はメディアの人には通用しない感じがするのですよね。

事件に対してロジックをつくって納得したがるメディアと社会

飯田)他方で、社会全体としても何かロジックをつくって納得したい欲求があるのでしょうか?

佐々木)でも犯罪者は、よくわからない衝動に突き動かされて事件を起こす人も多いのです。

飯田)佐々木さんご自身も社会部で取材していると、そういう人に出会うことが多かったですか?

佐々木)当時は「モンスター」と言っていましたが、「なぜこんなことをするのかわからない」という人が一部いました。「そんなものまで社会の責任にしていたら、社会の方はたまったものではない」と思いましたが、それだと飯田さんがおっしゃったようにロジックがないではないですか。そのため、「だからこういうことをしてしまった」という物語をつくりたいのです。

飯田)理解しがたい不確定的なものをそのままにしておくのは、人間の生理として難しいところがあるのでしょうか?

佐々木)映画やドラマのように納得したいのですよね。映画やドラマだと説明されるではないですか。

飯田)筋書きがしっかりあって、最後にオチまで持っていく。

佐々木)それを現実の事件にも当てはめたいという気持ちがあるのではないかと思います。

いろいろなことが複合的に重なって事件が起きる

飯田)でも、現場で見ていると世の中は不条理というか……。

佐々木)複合要因の場合が多いのです。例えば昔、ゲーム機を取り上げた親を殺すというような事件がありましたが、あれも別にゲーム機を取り上げられたから殺したわけではなく、それまでにいろいろなものが積み重なって、最後に起爆剤になって暴発したところがゲーム機だったということです。そこに至るまでをすべて取材して説明するのは無理だと、当時思いましたね。

飯田)紙面には限りがあるし、放送にも時間の限りがある。

佐々木)裁判を待って、弁護人と検察官のやり取りのなかでさまざまな証拠が出され、ようやく判決どきぐらいにおぼろげながら浮かび上がってくるのではないかと思います。メディアは社会正義に基づいて、自分たちのロジックで組み立てたがる傾向があると思います。

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