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桂宮治 コロナ禍で気が付いたお客さんのありがたみ

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月10日 11時20分

桂宮治 コロナ禍で気が付いたお客さんのありがたみ

黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(1月3日放送)に落語家の桂宮治が出演。落語の素晴らしさについて語った。

桂宮治

桂宮治

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。1月1日(月)~1月5日(金)のゲストは落語家の桂宮治。2日目は、コロナ禍で気付いたことについて—

黒木)30歳まで落語を聞いたことがなかったけれど、あるとき「落語なら好きになれる」と思ったそうですね。

桂)YouTubeで本当にたまたま枝雀師匠の「上燗屋」を観たときに、「こんな面白い芸能が世の中にはあるのか」と思いました。それまでは営業マンをやっていて、たくさんのお客さんに集まっていただき、その人たちに商品の説明をしていました。しかし、自分はその方々を幸せにできているのか、いらないものを無理やり買わせようとしているのではないか、という葛藤がありました。

黒木)セールスをされていた時期に。

桂)そのとき枝雀師匠を観て、同じ喋る商売で同じ人間なのに、こんなにいろいろな人を楽しませている。みんな「きょうは枝雀さんに会えてよかった」と思って帰るのだろうなと考えたら、やりたくて仕方がなくなったのです。「お金を稼げなくても、食べられなくてもいいからやりたい」という感情になってしまった。あれが枝雀師匠でなかったら、落語家になっていなかったかも知れません。本当に出会いだなと思います。うちの師匠に出会えたのもそうですし、枝雀師匠の映像を見つけられたことも、「神様ありがとう」という気持ちです。

黒木)しかも奥様の「好きなことをやっていいよ」という一言があった。自分が支えるからと。

桂)ありがたかったですね。いま中学生になった長女も、前座のうちに授かることができました。妻が子育てしながら仕事をしてくれていたのですが、やはり両立が難しかったですね。修業期間で私もほとんど家に居ませんから。前座期間が4年ちょっとあるのですが、3年目ぐらいで妻にも仕事を辞めてもらい、貯金を切り崩しながら生活していました。

黒木)前座時代に。

桂)だから、ひな祭りで娘にひな人形を買うときや、ビデオカメラを買うときなども、「どこからお金を集めてこよう」というような悩みがあったのを覚えていますね。

黒木)真打になったときも、「大丈夫か?」と師匠に言われたそうですが。

桂宮治

桂宮治

桂)神田伯山は同期で、一緒に前座修行をしていた仲間なのですが、どんどんみんなが売れていくなか、「自分は1人でお客さんを埋めることができるだろうか」などと思っていました。でも先輩の師匠方や仲間に支えてもらい、第2次緊急事態宣言が出た時期のコロナ禍でしたが、たくさんのお客さんに集まっていただき、ありがたかったのを覚えています。

黒木)コロナ禍はまったく仕事がなくなってしまったそうですね。

桂)それまでは休みなく毎日、いろいろなところで話していましたが、何もなくなりましたね。久々に家族みんなと家のなかに居られるので、「休め」ということかなと思ってのんびりしていました。でも、さすがに1ヵ月ぐらい経つと、子どもが3人いるので「落語家を辞めなければいけないかな。子どものために別の仕事をしなくてはダメかな」など、かなり考えましたね。夜、眠るのもつらくなった時期もありましたが、「距離を取れば少しずつ人を集めていい」という流れに、徐々になっていきました。

黒木)ソーシャルディスタンスを守ればいいと。

桂)100人ぐらい入るところに20人ぐらいしか入れられず、クリアボードを置いたりしながらでしたが、久々にお客さんの前でやらせていただいて。帰るときに、遠いところからお客さんが「久々に笑ったよ」、「久々にストレス発散できた、ありがとうね」と言ってくれたとき、「辞めちゃダメだな。こんなに喜んで楽しんでくれる人がいるのだから、何があってもこの仕事を続けよう」と改めて思いました。「お客さんって大切だな、ありがたいな」ということに気付かせていただいたので、芸人人生としてはプラスになった部分もあると思います。

黒木)お客様の笑い声は励みになりますからね。

桂)同じ舞台に立つ大先輩として、(黒木さんも)たまらないですよね。

黒木)芝居でも、笑っていただくことはいちばん難しいですから。

桂宮治

桂宮治

桂宮治(かつら・みやじ)/ 落語家

■1976年10月7日生まれ。東京都品川区出身。
■2008年2月、桂伸治(しんじ)門下として2月下席より浅草演芸ホール楽屋入り。
■2008年3月、浅草演芸ホールにて初高座「子ほめ」。
■2012年3月、下席より二ツ目昇進。
■2021年2月、中席より真打昇進。落語芸術協会の落語家としては、春風亭昇太師匠以来、5人抜きでの抜擢真打。
■2022年1月、日本テレビ系『笑点』の新メンバーに就任。

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