「学校公演」はサケの養殖をしているようなもの 落語家・桂宮治
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月11日 11時20分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(1月4日放送)に落語家の桂宮治が出演。落語の素晴らしさについて語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。1月1日(月)~1月5日(金)のゲストは落語家の桂宮治。3日目は、子どもと落語について—
黒木)桂さんはお子さんが3人いらっしゃいますが、お子さんに落語を聞かせることはあるのですか?
桂)学生に落語を聞いてもらうのが好きなので、小学校から高校まで、全国各地に1人で行くのですが、うちの子どもたちには意外と聞かせたことはないですね。真打昇進披露興行でも、40日間のうち、うちの家族は1日も来ていないのです。
黒木)ええ!?
桂)パパはパパ、仕事の桂宮治は桂宮治という感じです。1回だけ子どもを寄席に連れてきたことがあるのですよ。いちばん後ろの席に座って、他の子どもたちはすごく笑ってくれるのですが、うちの子どもたちは始まって10~15分ぐらいでロビーに出ていってしまいました。理由を聞いたら「家に居るパパと一緒だ」と言われてしまって、「これはもう呼ばなくていいな」と思いました。いつも家でキャッキャしているパパが、座布団に座って何かを喋っているから、珍しくないと。
黒木)照れくさいのですかね?
桂)そうかも知れません。だから、いろいろな学校に行きますが、うちの子どもの通っている小学校だけはやめようと思っていたのです。パパがそんなことをやって、お友だちにいじられたりするのも嫌だなと思って。でも、数年前にどうしても行かなければならない理由があって、1度だけうちの子どもたちが通う学校で学校公演をやったのですが、帰ってきたら長女も次女もすごくご機嫌でした。みんなに「パパすごく面白いね、楽しいね」と言って貰えたようです。誇らしげに帰ってきてくれたので、「行ってよかったのだ」と思ったことをいまでも覚えています。
黒木)他のエンターテインメントはご覧になるのですか?
桂)映画も観ますし、テレビでやっているドラマも大好きです。あとは舞台でお芝居をやりたいと思っていた時代があるので、舞台ですね。俳優さんたちが舞台の上で、いい間の掛け合いをしているのを見ると、「かっこいいな」と思います。また、観ると刺激になります。落語の場合、誰の間も気にすることなく自分ですべてを決められるから、主役も脇役も演出家も、何なら脚本家としても途中で話を変えることができるのです。
黒木)そうですよね。
桂)「お芝居を観てきたからこそ落語ができている」というありがたみを感じることもできるので、いろいろなものを観て勉強させてもらい、刺激を受けることもありますね。
黒木)落語家は何役もやらなければいけませんが、こんがらがったりしないのでしょうか?
桂)落語は想像力で見ていただくので、女性を演じているから、おじいさんを演じているから「ここまで芝居をしなければいけない」というものがないのです。多少はしますが、少し雰囲気を変えるだけで、お客さんが勝手にいろいろなことを想像してくれます。本当にお客さんに助けてもらいながらやっているのです。
黒木)学校回りのときも、「想像力で見るのだよ」とおっしゃっていますね。
桂)子どもは擦れていないので、単純にすごい想像力で観てくれます。「子どもに落語なんてわからない」と思っている大人もいるようですが、子どもは信じられないくらい笑います。小学生の子が笑い転げてくれます。
黒木)お蕎麦を食べるだけですごく笑っていましたものね。
桂)みんなの想像力があるから、本当はできないのに「こんな食べ方ができるんだよ」というだけでも笑ってくれます。学生のうちに1度でも2度でも落語に触れてもらえると、将来、大人になったときに落語に対するハードルが下がるのです。私からすれば学校公演に行くのは、サケの養殖をしているようなものです。
黒木)サケの養殖。
桂)「そのうち寄席に戻って来てね」ということです。だから今後も精力的にやっていきたいと思います。落語は古典芸能ではなく、大衆芸能なので、誰が聞いても面白いと思ってもらえる芸能です。
桂宮治(かつら・みやじ)/ 落語家
■1976年10月7日生まれ。東京都品川区出身。
■2008年2月、桂伸治(しんじ)門下として2月下席より浅草演芸ホール楽屋入り。
■2008年3月、浅草演芸ホールにて初高座「子ほめ」。
■2012年3月、下席より二ツ目昇進。
■2021年2月、中席より真打昇進。落語芸術協会の落語家としては、春風亭昇太師匠以来、5人抜きでの抜擢真打。
■2022年1月、日本テレビ系『笑点』の新メンバーに就任。
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