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「需給ギャップ」の数字を低く見積もる内閣府の「策略」 高橋洋一が解説

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月10日 17時40分

「需給ギャップ」の数字を低く見積もる内閣府の「策略」 高橋洋一が解説

数量政策学者の高橋洋一が1月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。1月5日に発表された12月の米雇用統計について解説した。

※画像はイメージです

アメリカの12月の雇用統計、就業者数が21万6000人増加

米労働省が1月5日に発表した2023年12月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から21万6000人の増加となり、17万人程度を見込んでいた市場予想を上回った。また、失業率は前月と同じ3.7%だった。

飯田)これで円安に振れるなど、いろいろあったようですが、アメリカの景気はまだまだ強いのでしょうか?

重要なのは「失業率の下限を達成しているか、していないか」 ~下限を達成していればあとは賃上げだけ

高橋)NAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment)という概念があります。「インフレを加速しない失業率」という言い方をしますが、簡単に言うと「失業率の下限」というような話です。「下限はどこか」を見ながら金融政策を行うのですが、アメリカの場合、普通に計算すると4%を切るぐらいのところが失業率であれば、「NAIRUになっている」と計算できるのです。この数字は中央銀行の人に聞けば、「いくらです」と必ず答えるような話なのです。

飯田)NAIRU(インフレを加速しない失業率)。

高橋)このぐらいになると、さすがに雇用がよくて賃金が上がります。だから日本もその数字を計算して、目指せばいいのです。日本だとだいたい2.5%を少し切るぐらいでしょうか。日本の場合、もう少し景気対策や金融緩和を行えばいいと思います。もうすぐ到達する手前になっているのだけれど、なぜか躊躇しているのです。このNAIRUという考え方は普遍的だから、これで説明したらいいのですよ。要するに「失業率の下限を達成しているか、していないか」です。下限を達成していれば、あとは賃上げだけです。

インフレを加速しない最低の失業率 ~その数字に近いアメリカ

飯田)失業率が下がっていくということは、裏を返せば人手不足なのですよね。あまり下がりすぎると、今度は人手が本当に足りず、賃金が上がり、それによって物価が上がってしまう。

高橋)その境界線であり、NAIRUの“Non-Accelerating”は「インフレを加速しない」ということです。「インフレを加速しない最低の失業率」なのです。

飯田)インフレが加速せずに失業率が下がれば、いちばん居心地がいい状態だと。

高橋)そこを狙うのが普通です。そう考えると、アメリカはいまNAIRUに近い。日本の場合、「もう少しプッシュしないとダメ」と読めます。アメリカはすごくいい数字なので、「アメリカはFRBがうまいことやったな」という感じがしますよね。

財政でもう少しプッシュすればNAIRUを達成できる日本

飯田)財政を「ドン」と出して、インフレは一時的に上がったけれど、ブレーキを掛けてちょうどいい具合になってきた。

高橋)上がったけれど大したことはなかったですね。ブレーキをあまり掛けませんでした。インフレ率が4~5%くらいになってから、ようやくブレーキを掛け始めた。「ビハインド・ザ・カーブ」と言って、「遅れて金融政策を行う」というのが鉄則なのですが、その通りでしたね。日本の場合は、すぐ利上げや正常化の方向に走るでしょう。それではダメですね。日本だとインフレ率が4~5%になってからそういう議論になります。

飯田)いまインフレ率は4%まではいっていない。

高橋)全然いきません。2%少しでしょう。このくらいだと何もしてはいけないのですよ。

飯田)こういうときのインフレ率、物価上昇率というのは、エネルギーや生鮮食品を除いた数字ですか?

高橋)どれで見てもいいです。どれもみんな3%のレベルですから。誤差の範囲で、実はインフレ目標を達成しているようなレベルです。「達成したときに動いてはいけない」というのが鉄則だから、どちらかと言うと「財政の方でもう少しプッシュすれば、簡単にNAIRUを達成できるのに」と思います。そうすれば、すぐにインフレ率を超えた賃上げになります。

現在の需給ギャップの15兆円を財政出動でプッシュすればアメリカのようになる

飯田)今年(2024年)の春闘で「賃上げだ」と盛んに言われますが、いまの状態だとどうなりますか?

高橋)賃上げしてくれる企業もありますが、「みんなが」という感じはないですね。掛け声など、どうでもいいのです。失業率を下げて人手不足感が出れば、みんな賃上げするのです。

飯田)否が応でも。そうしないと人材が確保できないのですか?

高橋)そうです。企業家の方は安く集めたいだろうけれど、関係ありません。とにかくお金を出さないと集められない状態にするのです。

飯田)そこまで行くには、日本の場合は「まだあと一歩」というところですか?

高橋)そういうところを需給ギャップで見ればいいのですが、たぶん15兆円ぐらいあるのです。そこを財政出動でプッシュすればいいと思います。

「需給ギャップは15兆円もない」という内閣府の信用できない計算

飯田)15兆円ぐらいの需要不足があるということですね。

高橋)これを言うと、すぐ「内閣府の計算ではそんなにない」と言われるけれど、あれは信用できない計算ですから。

飯田)内閣府の計算は、かなり渋めに見積もっているのですか?

高橋)「潜在GDP」が天井なのだけれど、それを低めに見積もっているから「需給ギャップがない」という計算になってしまう。過去のデータを見ても、それを超えて2%ぐらい超過需要になったことがあるのですよ。そのときも全然賃金が上がっていないのです。2%ではなく、たぶん2.5%ぐらいですよ。内閣による計算の需給ギャップに2.5%ぐらい足すと、ちょうどいい数字になる。

内閣府が需給ギャップの天井を低く見積もる理由

飯田)本来なら、潜在GDPを超えれば実力以上だから「そんなものつくれるわけがないだろう」となるけれど。

高橋)あり得ないのですがね。ものすごくインフレになってしまいます。実は過去を見ても、2%くらいになっても全然びくともしていないのですよ。

飯田)本来だったらインフレが加速してしまいがちなはずなのに。

高橋)全然していない。だから私は「天井が違う」と判断していましたし、安倍元総理にも「これは嘘です」と言っていました。

飯田)天井を低く見積もるメリットがあるのですか?

高橋)そうすれば「需給ギャップがなくなって財政出動しなくていい」というロジックになり、マスコミはすぐそれに乗るから。

飯田)目標値が違えば、というところですか。

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