桂宮治がサイン色紙に「明るい所に花は咲く」と書く本当の理由
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月12日 11時20分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(1月5日放送)に落語家の桂宮治が出演。落語の魅力について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。1月1日(月)~1月5日(金)のゲストは落語家の桂宮治。4日目は、落語の魅力と今後について—
黒木)落語を聞いたことがない方のためにも、ムチャ振りしていいですか?
桂)いやです。何ですか? 怖いです。
黒木)大衆娯楽として、文化として続いている落語を、ぜひいまからお願いします。
桂)古典落語は小噺がたくさんあり、いろいろな落語家さんがやる「The 古典の小噺」があります。これはとあるご家庭なのですが、80歳をとうに超えるおばあさんがいて、その人が無料のスイミングスクールに通い始めたのが幕開きです。そこのお嫁さんが先生のところに行くのですよ。
—–
先生「あのおばあちゃんのところのお嫁さんじゃございませんか。どうしたんです?」
嫁「何でうちのおばあちゃん、80をとうに超えるのにこちらのスイミングスクールに通っているんですか?」
先生「動機を聞いてませんか? 何でもね、伺いましたらお亡くなりになったあと、三途の川を渡るのに、渡し賃がもったいないから自分で泳いで渡りたい、ってんで来ているみたいなんですよ」
嫁「そうなんですか。けちなおばあちゃんなんですよ。実際、泳げるようになったんですか?」
先生「すごい才能ですよ。2キロでも3キロでも4キロでも泳げるようになったんです」
嫁「そんなに泳げるようになっちゃったんですか? 先生に1つだけお願いがあるんです」
先生「何ですか?」
嫁「おばあちゃんにターンだけは教えないでください」
—–
桂)……という小噺です。これも「古典あるある」のもので、誰でもやっているやつですが。
黒木)面白いですね。ターンだけは教えないでくれ。
桂)お婆ちゃんに帰ってきてもらいたくなかったと。落語のなかには、こういう小噺がたくさんあります。
黒木)急にムチャ振りしても、急にできてしまうものなのですね。
桂)ちょこちょこいろいろなことをやっているので。
黒木)多様化するエンタメですが、落語はどのような存在であり続けたいと思いますか?
桂)皆さんが疲れたとき、ストレスを発散したとき、笑いたい・泣きたいと思ったときに、「ちょっと落語に行ってみようかな」と。そのようなとき、なくならずに寄席や落語会があるように、一生懸命頑張っていきたいなと思います。「パッ」と来て、「落語を初めて観たけれど面白かった、楽しかったな」と思ってもらえるように努力を続けていきたいですね。無理に「来てください、お願いします」というよりも、「フラッ」とたまたま出逢う瞬間があると思うので、その瞬間まで落語という芸能がなくならないように、ずっと続けて頑張っていきたいと思います。
黒木)いま聞いただけでもおかしいですものね。
桂)ありがとうございます、嬉しいです。
黒木)しかも宮治さんは、本当にオーラが華やかですから。
桂)いや、そんな、やめてください。
黒木)登場なさるだけで、「おお」というオーラがありますね。
桂)YouTubeで落語を初めて聞いてから入門するまでの間、半年ぐらいしかなかったので、お客さんだった時代がすごく短いのですよ。でも、そこからいろいろな寄席や落語会に行かせてもらったとき、「面白い」と思った人は、出てきた瞬間から「あ、この人は大丈夫だ」というオーラがあります。
黒木)やはり、そうですか。
桂)出てきた瞬間、お客さんに「この時間内は楽しめるのだろうな」とわかってもらえるような雰囲気は出していきたいと思っています。まあ、自分で考えて出せるものではありませんが。
黒木)仕事への原動力は奥様や家族でしょうか?
桂)家族があってくれるからこそ仕事もできますし。あと、「そんなこと言うなよ」と思われるかも知れませんが、目の前にお客さんがいてくれて、笑ってくれる、泣いてくれる、楽しんでもらえるという、それがいちばん励みになりますよね。舞台に立っていてよかったと感じます。
黒木)今後の夢や目標はありますか?
桂)自分の時間があるときに、たまたま近い現場にいたら「落語会があれば来てください」というくらいですかね。我々は定年退職がないので、座布団の上まで歩いていけて、戻ってこられる限り、仕事ができます。最後の最後になるまで絶対に高座で手を抜かない、「その日の100%を出す」という努力だけは続けていきたいと思います。
黒木)サイン色紙にはいつも「明るい所に花は咲く」と書かれるのですよね。いい言葉ですね。
桂)内面が意外とネガティブで暗いので、自分に対する戒めでもあるのです。「きちんと明るくいなさいね」という。
桂宮治(かつら・みやじ)/ 落語家
■1976年10月7日生まれ。東京都品川区出身。
■2008年2月、桂伸治(しんじ)門下として2月下席より浅草演芸ホール楽屋入り。
■2008年3月、浅草演芸ホールにて初高座「子ほめ」。
■2012年3月、下席より二ツ目昇進。
■2021年2月、中席より真打昇進。落語芸術協会の落語家としては、春風亭昇太師匠以来、5人抜きでの抜擢真打。
■2022年1月、日本テレビ系『笑点』の新メンバーに就任。
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