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湊かなえが「イヤミス」と言われるなかで自らに課しているもの

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月15日 11時20分

湊かなえが「イヤミス」と言われるなかで自らに課しているもの

黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(1月8日放送)に小説家の湊かなえが出演。最新作『人間標本』について語った。

湊かなえ 撮影:干川 修

湊かなえ 撮影:干川 修

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。1月8日(月)~1月12日(金)のゲストは小説家の湊かなえ。1日目は、『人間標本』で原点回帰した理由について—

黒木)湊さんの作品である『落日』で、WOWOWの連続ドラマWに出演させていただきました。

湊)大畠凜子先生ですね。

黒木)『落日』も刊行時に買って読んでいて、そのあとプロデューサーから『落日』をやりたいと伺いました。

湊)役をつくり上げてくださっていると事前に伺っていたので、「原作を読んで膨らませてくださっていたのだ」と、いますごく感激しています。

黒木)その『落日』の舞台挨拶のときに、湊さんに初めてお目にかかりました。小説から受けるイメージと、ご本人から受けるイメージが(異なり)、とてもチャーミングな方ですね。人の心臓をぐっと掴むような湊さんの作品の大ファンです。

湊)ありがとうございます。『落日』のときは皆さん、普段は主役を務めるような方ばかりが登壇されていて、「私のようなものが同じ台に立たせてもらっていいのかな」と、右手と右足が一緒に出るような状態でした。きちんと挨拶もできず申し訳ありませんでした。

黒木)2023年12月に、最新刊となる『人間標本』を出されました。これまでの作品とはまったく違いますね。

湊)2023年がデビュー15周年だったのです。デビュー作が明るい読後感ではない『告白』という作品だったので、今回は原点回帰というところでしょうか。デビュー作は人に読まれることを意識しないまま、書きたいものを書きました。デビュー当時は「そのあとどう思われても構わない」と思っていたのです。

黒木)デビューしたときは。

湊)当時は子どもが小学校1年生だったのですが、「子どもの同級生もやがて小説を読むようになっていくのか、ママ友も読んでいくのか」と思い、(その後は)あまり過激なものや暴力性の高いものは避けておこう、もっと希望が見えるラストにしておこうと、「決まった枠のなかで面白い作品をつくろう」ということに挑むようになりました。

黒木)そうだったのですね。

湊かなえ『人間標本』KADOKAWA

湊かなえ『人間標本』KADOKAWA

湊)でも、子どもも大学4年生になり、成人もしているし、もう15周年だし、もう1回やりたいことをやろうと、ブレーキをかけずに自転車で坂道を「ワーッ」と下っていくような話を書いてみたいと思ったのです。『人間標本』というタイトルも、少し江戸川乱歩を彷彿とさせるおどろおどろしいものにしました。

黒木)『黒蜥蜴』を思い出してしまいました。インタビューでは「イヤミス(読後、イヤな気持ちになるミステリー)ファンの皆さん、お待たせしましたという思いだ」と言われています。イヤミスと言えば、真梨幸子さんやまさきとしかさん、沼田まほかるさんなど、いろいろな方がいらっしゃいますよね。でも、私は『人間標本』をイヤミスとしては読みませんでした。確かに、「ここから先はそのように読めるかな」というところはあるのですが、最後の2ページは泣きました。

湊)ありがとうございます。

黒木)何となく「こうなっていくのだろうな」と展開を予想しても少し裏切られ、また予想すると少し裏切られる。そして、最後にまた裏切られて……。少し辛かったのですが、人を思いやる心が詰まった本だな、と受け取りました。

湊)「読後感が悪い」と言われながらも、自分のなかで1つルールを課しています。悪いことをした人が高笑いして終わるような読後感の悪さではなく、また、傷付けようとか陥れようとしているわけでもなく、むしろ相手のことを思っていたり、大切な人なのにボタンの掛け違いで取り返しのつかないことが起きてしまう……そのようなことを意識しています。

湊かなえ 撮影:干川 修

湊かなえ 撮影:干川 修

湊かなえ(みなと・かなえ)/小説家

■1973(昭和48)年、広島県生まれ。
■2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。
■2008年、「聖職者」を収録した『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。
■2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。2018年『贖罪』がエドガー賞ベスト・ペーパーバック・オリジナル部門の候補となる。
■その他の著書に『Nのために』『母性』『高校入試』『絶唱』『リバース』『未来』『ブロードキャスト』『落日』『カケラ』『ドキュメント』『残照の頂』など。
■2023年12月13日、KADOKAWAから15周年記念書下ろし作品『人間標本』が出版。

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