いま台湾と断交し、中国と国交樹立する島国ナウルの「計算」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月16日 12時5分
「烈士記念日」の式典に臨む中国の習近平国家主席(左)=30日、北京の天安門広場(共同)
東大先端科学技術研究センター准教授で軍事評論家の小泉悠が1月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。台湾と断交し、中国との国交を樹立する声明を発表したナウルについて解説した。
ナウルが台湾と断交し、中国と国交樹立へ
飯田)ナウルが台湾と断交し、中国と国交を結ぶという声明を出しました。ナウルは南太平洋の島国です。台湾からの引き剥がしのような状況が続いているなか、このタイミングで声明を出しましたが、前々から準備していたのでしょうか?
小泉)この話は以前から政治問題としてありました。ナウルは日本人観光客も年間に数人しか行かないような小さな国ですが、国連に行けば当然、1票があるわけです。そのような国が中国のターゲットになると考えると、ある意味では賢い戦略だと思います。
飯田)そうですね。
小泉)かつてのソ連の第三世界進出を思わせるところもあります。「経済を支援するから」とか、「インフラをつくってあげるから」などと言って、国を取り込んでいくわけです。冷戦時代にもグローバルサウスをめぐる戦いはありましたが、それと同じようなことが「再び太平洋で起こっているな」と感じます。
台湾総統選の直後のタイミング
飯田)手法としても、ソ連型のやり方を中国が真似する部分はあるのでしょうか?
小泉)中国の手口がどういったものかはわかりませんが、それと日本のODA(政府開発援助)外交はどう違うのかと言われると、外見上はそれほど変わらないと思います。どこの大国も必ずやるような取り込み策です。しかし、中国独自の部分もきっとあるのでしょうね。
飯田)台湾総統選が終わった直後ですが、このタイミングを狙っていたところはあるのでしょうか?
小泉)それはあると思います。ここまであからさまなタイミングもなかなかないですし。逆に中国が、ナウルが台湾と断交するタイミングに対し、影響力を与えていたかどうかも考えますよね。もし、そこまで影響を与えていたのであれば、相当なものだと思います。
小国は小国なりの利益を必ず考える ~中国の大戦略の「何がうまくいっていないのか」
小泉)他方、国際関係論などを専門にしている人たちが必ず強調するのは、小国であっても決して、ただの大国の駒ではないということです。小国であれ、中規模国であれ、必ず自分たちの利益を考えるわけです。そのなかで駆け引きを行う。ナウルのような国が、アメリカや中国の間で取り合われているという視点だけだと、見誤る可能性が出てきます。必ずそこにはナウル側の計算もあり、おそらく中国も思い通りにできていない部分はきっとあるでしょう。
飯田)ナウルの計算がある。
小泉)中国の大戦略のようなものは注視しつつ、中国の大戦略の「何がうまくいっていないのか、なぜうまくいっていないのか」という部分も同時に見れば、また新しい視点になると思います。
飯田)確かに、総統選も(中国は)あれだけ国民党を推していましたが、結局は頼清徳氏になりましたね。
小泉)そうですね。
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