北朝鮮の人々の「恐るべき勤勉さ」 中小国が取るべき核戦略を忠実に実行 ~極超音速ミサイル試射
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月16日 17時35分
![北朝鮮の人々の「恐るべき勤勉さ」 中小国が取るべき核戦略を忠実に実行 ~極超音速ミサイル試射](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/nipponhoso/nipponhoso_489494_0-small.jpg)
14日に北朝鮮が実施したとする固体燃料式の中長距離弾道ミサイルの発射実験
東大先端科学技術研究センター准教授で軍事評論家の小泉悠が1月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北朝鮮の極超音速ミサイル試射について解説した。
![2024年1月14日に北朝鮮が実施したとする固体燃料式の中長距離弾道ミサイルの発射実験 朝鮮通信=時事 写真提供:時事通信](https://news.1242.com/wp-content/uploads/2024/01/jpp047624706RS.jpg)
2024年1月14日に北朝鮮が実施したとする固体燃料式の中長距離弾道ミサイルの発射実験 朝鮮通信=時事 写真提供:時事通信
北朝鮮のミサイル発射をめぐり日米韓の高官が電話協議
北朝鮮の朝鮮中央通信は、ミサイル総局が固体燃料式の中長距離弾道ミサイルの発射実験を1月14日に実施し、成功したと伝えた。これについて日米韓3ヵ国の高官は15日に電話で協議し、発射を強く非難するとともに国連での対応など緊密に連携していくことを改めて確認した。
飯田)固体燃料式の中長距離弾道ミサイルに、極超音速弾頭を装着して発射したそうですが、技術が相当伸びているのでしょうか?
「中小国が取るべき核戦略」を忠実に行っている北朝鮮の勤勉さ
小泉)極超音速ミサイルに関しては北朝鮮がこの数年、熱心にやりたいと言っており、発射実験も何回か行っていますし、国防5ヵ年計画にも入っています。以前から思っていましたが、北朝鮮の人たちはお勉強が好きなのだと感じるのです。
飯田)お勉強が好き。
小泉)核戦略理論の教科書や、権威ある核戦略理論の書に出てくる「中小国が取るべき核戦略」を忠実に行っているのです。北朝鮮がアメリカを滅ぼすような規模の核を持つことは、絶対に無理だと思います。だから少数の核をサバイバブルに扱い、一撃でやられないように残存性を高くする。あるいはアメリカのミサイル防衛システムを突破できるようなシステムをつくり、それを「どのように使うか」という基準を対外的にどう公表するかなど、核戦略理論家たちが論じてきた「北朝鮮のような国はこうするしかない」ということを、教科書通りにやっていると思います。恐るべき人々、勤勉な人々だなと思いますね。
情報に食い違いがあるにせよ、日米韓で弾道ミサイル情報が共有できるようになったことは重要な一歩
小泉)気になるのは昨年(2023年)、北朝鮮のミサイル脅威に対処するため、日米韓で「弾道ミサイル情報を即時共有する」という方針にしたはずなのです。ところが今回のミサイル発射に対して、韓国は「約1000キロ飛んだ」と言っているけれど、日本は「約500キロ飛んだ」と言っており、大幅に違います。従来であれば、地球は丸いので韓国から見えるものと日本から見えるものには食い違いがある、ということで済んでいましたが、ミサイル情報を共有してもなお、両国から出た情報が食い違っている。システムに不具合があるという話は聞かないので、システムの共有はできているはずです。もし日本の防衛省のなかで、まだ「これは韓国の情報だから日本の見解としては発表できない」というような相互不信が残っているのだとしたら、システムの有用性がもったいないなと思います。
飯田)北朝鮮が着々と技術を進めているなかで、日本や韓国、アメリカを含め、抑止力の体制があまり変わらない。その上、アメリカは中距離ミサイルを持っていませんし、「どうするのだ」という話になりますよね?
小泉)まだ相互不信などがあるにせよ、とにかく日米韓で弾道ミサイル情報が共有できるようになったのは、重要な一歩だと思います。アメリカはいまヨーロッパで身動きが取れなくなっており、中東でも戦争が起きているなかで、東アジアにおけるアメリカの抑止力は非常に危うくなっているわけです。
日米韓の関係が良好なうちに制度化するべき
小泉)そのようなときに、日米韓で連携があるのはとても重要だと思います。ミサイル情報の共有に加え、去年(2023年)は一緒に空軍演習も行えましたし、雰囲気がいいうちに制度化してしまうべきです。今後、政権が交代しても簡単にあと戻りできないようにしておくことが大事だと思います。
飯田)韓国も政権が代わるたびにさまざま変わっていますから、日本もそうなるかも知れませんよね。
小泉)その際、意外なことに、最大の不安要素がアメリカになるのです。仮にトランプ政権が復活すれば、トランプ氏の本来の思想や彼を支持する人々の思想からすると、「なぜ東アジアなどに首を突っ込むのだ」という考えになりかねない。そうなると、なおさら東アジアの域内や、オーストラリアまでを含めたインド太平洋で抑止力を保つ必要が出てきます。
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