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今後は「挑んでみたいもの」から書きたい 湊かなえ

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月19日 11時20分

今後は「挑んでみたいもの」から書きたい 湊かなえ

黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(1月12日放送)に小説家の湊かなえが出演。最新作『人間標本』について語った。

※画像はイメージです

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。1月8日(月)~1月12日(金)のゲストは小説家の湊かなえ。5日目は、『人間標本』に込めた思いについて—

黒木)小説家デビュー15年ということで、湊さんの作品に触れて「自分も小説家になりたい」という方も出てくるのではないですか?

湊)デビュー時にまだ学生さんだった方が、サイン会ごとに「小説を書いています」と報告してくださったりします。

黒木)素敵な小説家が出てきたら嬉しいですよね。ご自分もまた頑張ろうという気持ちにもなれますし。

湊)「ライバルになりましょう」と言っています。

黒木)そんな湊さんの最新作『人間標本』は、読んでいただきたい1冊になりました。

湊)ありがとうございます。「イヤミスの女王」や「原点回帰」というような帯ですが、これまでとは違う本になっています。「ミステリーって、どんでん返しを楽しむだけではなく、そのなかに気持ちが揺さぶられていく要素が入ったら、本を閉じるときにこんな気持ちになるんだ」という新しい気持ちを提供できているのではないかと思います。

黒木)その帯、変えたらどうですか?……私が言うのも変ですけれど。

湊)この帯にしたのは、「『告白』のような振り切れた人間の暗いところや、人間関係を書いたものが読んでみたいです」というデビュー時から応援してくださっている方々のリクエストが多かったので、「帰ってきたよ」という意味でこうしたのです。

黒木)そのような思いを込めて、「お待たせしました」ということなのですね。

湊)そこから広がっていくなかで、次は父と息子の物語など、いろいろと見え方が変わってきて、帯の文章なども少しずつ変えていけたらいいなと思っています。ただ、本が売れないと新しい印刷がないので、増刷されたら新しい帯になります。

湊かなえ 撮影:干川 修

湊かなえ 撮影:干川 修

黒木)よく作家のなかで、「絶対に映像化できないものを書いてやろう」という方がいらっしゃるのですが、『人間標本』も「映像にできるのか、できないのか」という意味では際どいですよね?

湊)私も『告白』を書いたときに、「絶対に映像化できないものを書いてやろう」と思ったのですが、それでも……。

黒木)見事に映像になりましたね。

湊)すごいものを撮ってくださいました。監督やつくり手の方々は「できないぞ、難しいぞ」というようなものの方が、「挑んでやる」という……。

黒木)ハードルが高い方が。

湊)ご自分のアイデアを発揮してくださるのではないかな、と思いました。

黒木)もちろんミステリーだけではなく、親子の愛や他人を想う気持ちなど、「人はちょっとのことですれ違っていくのだ」と立ち止まっていろいろ考えさせられました。すごくドラマチックでしたね。

湊)「人間について掘り下げる」、「ミステリーとして面白い」という2つの要素をどのような配分で融合させるか、すごく考えたので、「最後に泣いた」と言っていただけたのが本当に嬉しかったです。

黒木)最後の2ページで泣いてしまいました。心が見えたのですよね。意外性に泣いたのではなく、その心に泣いてしまいました。もちろん前提には意外性もあるのですが。そのような心をこれからも書き続けていくのでしょうけれど、「こんなものを書いてみよう」という考えはあるのですか?

湊)いままでは、「これを書くにはまだ技術が追いついていないかな」とか、「周りに配慮しないといけないかな」という気持ちがありましたが、引退するまでに何冊書けるか考えてみると、書きたいもの、挑んでみたいものから書こうと思っています。

湊かなえ 撮影:干川 修

湊かなえ 撮影:干川 修

湊かなえ(みなと・かなえ)/小説家

■1973(昭和48)年、広島県生まれ。
■2007(平成19)年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。
■2008年、「聖職者」を収録した『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。
■2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。2018年『贖罪』がエドガー賞ベスト・ペーパーバック・オリジナル部門の候補となる。
■その他の著書に『Nのために』『母性』『高校入試』『絶唱』『リバース』『未来』『ブロードキャスト』『落日』『カケラ』『ドキュメント』『残照の頂』など。
■2023年12月13日、KADOKAWAから15周年記念書下ろし作品『人間標本』が出版。

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