島国・ツバル、台湾と断交の可能性 “経済大国”中国の交渉には屈服せざるを得ない
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月23日 17時35分
中国の習近平国家主席=2022年10月、北京の人民大会堂(共同)
戦略科学者の中川コージが1月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。台湾と断交し、中国と国交を結ぶ可能性があると報じられた南太平洋の島国・ツバルについて解説した。
南太平洋の島国ツバルが台湾と国交断絶か
オーストラリアの全国紙、オーストラリアン紙が1月19日、台湾と外交関係を有する南太平洋の島国ツバルが今後、外交政策を転換して台湾と断交し、中国と国交を結ぶ可能性があると報じた。
飯田)ツバルの駐台大使が語った内容として報じられました。先日もナウルが台湾と断交し、中国との国交を結んでいます。
中国から1対1で交渉に臨まれると屈服せざるを得ない
中川)ナウルの断交情報も台湾の選挙後に出てきました。当然、事前に話し合われて、当てつけのようにあのタイミングで出したことは明らかなわけです。インターネットのドメインが「tv」ということで話題になりましたが、皆さんあまりツバルを知らないかも知れません。
飯田)ツバルについて。
中川)ツバルが断交すると、台湾の外交パートナーは世界で11ヵ国になるのですが、近年の動きを見ていると、中国が展開している「一つの中国」としての外交政策が功を奏してしまっている。中国と国交を結ぶのと、台湾と国交を結ぶのとでは、明らかに経済的なメリットが違ってきます。経済規模から考えても、小さい国にとって1対1で交渉に臨まれたら屈服せざるを得ないですよね。
モルディブとの関係を格上げ ~インドへの牽制のためにも取り込みたい
飯田)王毅外相がアフリカ・中南米を訪問していますが、あの辺りも台湾と国交のあるところが多いので、切り崩しにかかっているのではないかとも言われています。
中川)北京から東西南北で見るとわかりやすいのですが、北のロシアに関しては、ウクライナ・ロシア戦争でロシアは中国の弟分になってしまった。それ以外の方角を見ると、東側にはアメリカと日本があるので、そこまでくさびを打てるわけではない。これ以上増やせもしないし減らせもしない。エネルギーを割いていくけれど、ある意味では動かないわけです。投資した上で回収しやすいのが南、東南アジアです。
飯田)中国にとって。
中川)西にはもともと中東がありますが、中東は混乱しているので、いまは難しい。おそらく、「ここは東南アジア・南アジア・中南米に投資していこう」という動きだと思います。そのなかにツバルがあった。しかし、さらに注目したいのはモルディブです。モルディブのムイズ大統領が北京を訪問して、包括的戦略協力パートナーシップを結びました。いままでは友好パートナーシップでしたが、2段階格上げされたのです。
飯田)2段階格上げなのですね。
中川)2段階です。ツバルやナウルも含めてシーレーンの話が出ていますが、中国はインドとの関係が悪いなかで、いかにスリランカやモルディブを獲るか。スリランカとは政治的問題があるため、どちらかと言えばモルディブだろうと考えて、モルディブを大歓待した。外交的にもパートナーシップを格上げし、インドを牽制するためにも、モルディブを取り込みたいのです。
飯田)モルディブは政権が代わったばかりですよね。
中川)モルディブはインドに領内からの軍撤退を求めています。それに対してモディ首相は「モルディブに行くくらいなら自国の南の島に行こう」というキャンペーンを行ったのです。しかし、その写真は自国ではなく、実はタイの写真だった。閣僚がそれをXにポストして炎上していました。
飯田)そうだったのですか。
中川)印中対立の流れの方がより重要だと考えると、スリランカやモルディブの方に注目すべきでしょう。もちろんツバルやナウルも重要ですが、あの辺りはもともとソロモン諸島も含めて、中国の庭と化しているところがあります。この流れは止められないと考えると、牽制が効いているのはオセロのひっくり返しで、アメリカではなくインドだろうと思います。
中国の外交リソースの割合
飯田)台湾総統選がありましたが、あの結果も織り込み済みなのでしょうか?
中川)日本が間違えてはいけないのは、中国に10の外交リソースがあるとすると、5~6くらいを台湾に割いており、それ以外のところは2~3なわけです。確かにウエイトは大きいのですが、アメリカにも5~6の外交リソースを出させて均衡させている。そう考えると、他のところには2しか投じていなくても、相手が1だとすると中国が強くなるのです。
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