インド人民党が抱える「ポスト・モディ問題」 インド総選挙2024
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月23日 18時35分
インドのモディ首相(インド・ニューデリー)
戦略科学者の中川コージが1月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。4月に始まるインドの総選挙について解説した。
選挙イヤーの2024年、インドでは総選挙開催
インドでは2024年の4~5月の数週間にわたって総選挙が実施され、モディ首相と与党・インド人民党が3期目の政権獲得を目指す。インドの最新の世論調査では下院の543議席のうち、与党・インド人民党が308~328議席を得るとの予測がある。303議席を獲得した2019年の前回選挙からさらに議席を伸ばし、単独過半数を維持するとの見方が強い。
飯田)モディ首相はG20をやって……。
2024年はインド人民党が強いが、将来への「ポスト・モディ問題」も
中川)強いですが、南の方の州は左派が強いので、モディさんは右派ですから、弱い地域もあります。しかし、全体的に見ればモディさんの人気はすごいですね。
飯田)演説で「3期目の任期ではGDPを第3位にする」と言っていましたが、「放っておけばなるだろう」と思いつつ、そういうところがうまいなと感じました。
中川)経済成長率7%ですから、当然ながら強い。開発独裁的なことをやらなくてもあれだけ強いのです。そのなかで「経済改革は道半ば」とだけ言っていれば、地盤はあるので勝ちやすい。
飯田)地盤はある。
中川)ポイントは、ポスト・モディ問題です。どれくらい揺り戻しがあるのか。ある意味でヒンドゥー・ナショナリズムのような形で強硬右派が強まってしまうと、反動が確実にあります。国民会議派にそれができるかどうかは別にしても、単純に組織論的な流れとして、片方に強い引力が働いてしまうと、もう片方には斥力が働きます。2024年はおそらくモディ首相のインド人民党が強いでしょうが、次は警戒すべきところです。我々はインド人ではないので、長期目線で反動を見ておく必要があると思います。
法制度が整備されておらず、政治的な問題が宗教と絡むことから外資が引き気味 ~RCEPからも離脱
飯田)インドは有望な投資先だと言われますが、一方で難しい面もあるのですか?
中川)GDPが7%くらいという話をしましたが、GDPのなかでも第二次産業は12%くらいで伸びています。直近の四半期ベースのデータでも、GDP内の押し上げ要因は第二次産業や鉱工業ですので、今後はそこを伸ばしていけば、インドの産業も足腰の強いものになると思います。
飯田)第二次産業や鉱工業を伸ばせば。
中川)ただ、破産倒産法ができたのが2016年ですし、法制度がいろいろな意味で整理されていません。ヒンドゥー・ナショナリズムが強いなど、政治的な問題が宗教と絡んでいます。そういう意味では外資が引き気味だと言われています。また、RCEPから出てしまったこともあり、自由貿易にも消極的です。その辺りで「インドは大丈夫なのか?」と思うところはあります。それでも「伸びるだろう」という予想のもとに動いていく感じだと思います。
貧困問題が大きいインド
飯田)インドに対して影響力の強い国はあるのですか?
中川)インドが南インドでジャイアニズムを発揮してしまい、「インドはちょっと鼻につく」と思われているのです。中国もアメリカもジャイアンですが、インドもジャイアンなのです。
飯田)ジャイアンですか。
中川)したたかにやっていれば、違う超大国になっていくのかも知れませんが、超大国がみんなジャイアニズムを発揮している状況です。外交的にはジャイアン同士の戦いが怖いし、内政的には揺り戻しが怖い。あとは貧困問題もあります。中国も習近平政権になって貧困問題を解決しようとしていますが、李克強首相が「解決されていない」と言って対立になりました。また、インドの貧困問題も大きいです。
「ハッカソン」という新しいテクノロジーを使って事業の種にしていく
中川)ノーベル平和賞を受賞したバングラデシュのユヌス氏は「グラミン銀行」を創設しましたが、それがインドにもあります。グラミン銀行とIIMインド管理大学が協調して「ハッカソン」という新しいテクノロジーを使い、事業の種にしていくという話があります。
飯田)ハッカソン。
中川)ICTを使って貧困のなかから事業を生み出していこうというものです。もともとあったグラミンのマイクロファイナンスと、ICTを使って新しい事業を生み出していく。また、インドでの新しい投資をつなげていく。もしかすると貧困問題を解決するような展開になっていくかも知れません。
飯田)その取り組みに、日本からの出資もつなげていくのですか?
中川)インドが出るにあたって、既に大きいところに投資しても仕方がないですから。グラミンとIIMが協調してフィルタリングが掛けられたところに、日本企業が投資するのが最もいい状況だと思います。
飯田)いきなり投資しても、海のものとも山のものともわからない。
中川)IIMが入ってフィルタリングし、グラミンやマイクロファイナンスも入った状態で、投資として日本が入ってくるといいのではないかと思います。政治的にもテクノロジーの力を使って、補助金や助成金ではなく、仕事を生み出すことによって貧困問題を解決していく考えはあるようですね。
ビジネスの視点も入ったハッカソン
飯田)もともとグラミン銀行やムハマド・ユヌス氏が進めていた手法がマイクロクレジットです。農村の女性にお金を貸す形で、自分でできる事業をまず立ち上げさせるところから始めるものですね。
中川)お金の発想はよかったのですが、「実際の仕事はどうなのか?」というのがグラミンの思想には欠けていたのです。
飯田)ビジネスの視点ですね。
日本が参加することでWin-Winの関係を築く
中川)それに対して、ハッカソンはビジネスもつくり、グラミンのマイクロファイナンスも入るので、非常によい仕組みではないかと思います。そこに日本も一枚噛むという構想があります。
飯田)そういうところで日本とインドをつなぐ、または政治面でつなげるような人材が少ないわけですね。
中川)あと、日本のブランドが使えるのです。他の先進国は「もう日本は微妙だ」と思っているのですが、インドは日本の技術を高く評価しています。一般の人に聞いても「日本の新幹線はすごいよね」と言います。消費財マーケットにおいて、「日本が参加する」というのはかなりプラスになるのです。そういう意味ではWin-Winの関係を築けると思います。
飯田)チャンスもたくさんある。
中川)インドでは反中感情が高いので、中国資本が入れないのです。そこへ日本資本が入ることで、稼げる市場になるのではないかと思います。ものづくりではなく、ファイナンスとしてだけでもいいのではないでしょうか。
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