対中抑止・対中戦勝利に向け、本気で準備を進める米インド太平洋軍
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月29日 11時30分
政治 岸田文雄首相との会談後、記者団の取材に応じるアキリーノ米インド太平洋軍司令官(右)とエマニュエル駐日大使=3日午後、首相官邸
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が1月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ハワイで行われたシンポジウム「インド太平洋での作戦統合」について解説した。
中国の脅威に本気で対峙する米インド太平洋軍
飯田)中国や日本を取り囲む東アジア情勢を考えると、今月(1月)には台湾総統選がありました。
宮家)順当な結果になったと思います。
飯田)頼清徳さんが当選しました。
宮家)そのあと私は、ホノルルのシンクタンクによる「インド太平洋での作戦統合」というシンポジウムがあったので、ハワイに行きました。アメリカのインド太平洋軍司令部はホノルルにありますが、同軍司令官以下、幹部が出てきていろいろ話すというので、かぶりつきで聞こうと思って行ったわけです。彼らの発言や論文を字で読むのと、実際に行って勢いや語気や情熱を聞くのは、ずいぶん違うなと思いました。
飯田)現地で聞いて。
宮家)アキリーノ司令官は本当にエネルギーがありましたね。アメリカの軍人でも、地域軍の司令官を務めるような人は相当レベルが高いですから。彼の基調講演を聞いていて、「この人は本気だな」と思いました。中国の強力な台頭に対し、「何かしなければいけない」という気持ちは米軍内に前からありましたが、「やらなければ」だけではダメです。具体的に何をするか、どういう方向に進むか、そのために何が必要なのか、そのときアメリカ議会は何をするべきか、アメリカの防衛産業・国防産業は何をするべきか、同盟国は何をするべきかをすべて考えているわけです。
飯田)具体的に計画する。
宮家)要するに、いままでの戦い方ではダメだということ。まずよく考え、すぐに行動して、作戦に移る。これを瞬時にやらなければいけない。それを彼らは「意思決定上の優位」と言っています。
武器を早い段階で生産・調達しなければならない
宮家)要するに「相手より早く相手を見つけ、早く攻撃を決定して、早く行動に移さないと負ける」ということです。そのためには十分な国防予算が必要です。武器をオーダーしても、今回のウクライナ戦争を見てもわかる通り、消耗戦になる可能性がある。そうすると弾がなくなるわけです。だから迅速に生産・調達できなければいけない。
飯田)そうですね。
宮家)さらには、同盟国が同じような武器を持つことで相互運用性が高まり、同時に統合作戦もできる。そうすれば近くにある、あの大きな国を抑止できるという話でした。インド太平洋軍の改革についていろいろ話は聞いていたし、その方向で動いているのはわかっていたけれど、「こもは本気だ」と思えたのが、今回のいちばん大きな成果でした。
ガザ地区での戦闘がエスカレートした場合、インド太平洋軍に財政上・作戦上、どのようなインパクトがあるのか
宮家)私は京都の大学で教えているのですけれど、学生たちには「外国でのシンポジウムなどで『質問のある人』と言われたら、すぐに手を挙げなければいけない」「そうしないと発言の機会はない」と言っているので、私もやらなければと思い、思い切って手を挙げたら当たったのですよ。
飯田)いきなり当たったのですか?
宮家)いきなりではなかったけれど、「いまガザで戦火が拡大しており、下手をすると湾岸地域にも波及します。これがエスカレートした場合、太平洋軍に対して財政上または作戦上、どのようなインパクトがあるのですか?」と聞きました。その質問に彼は、「アメリカ軍は世界規模で展開しているから大丈夫」と。そこまで楽観的ではなかったけれど、そういうことを言ったわけです。
飯田)大丈夫だと。
宮家)そのあと、アメリカの有名な新聞社の記者がハワイに来ていたので「どうだった?」と聞いたら、「いい質問だったよ」と言われました。「でも、まったく答えていなかったね」「プライベートな席でなら違うことを言うかも知れないよ」と言われました。
すべての政治はローカルである
宮家)今回は久しぶりのシンポジウムでしたが、私も若くはありませんから、今回は「以前はこんなことをやっていたな」と感じました。見ていると、アメリカ側の参加者は知らない人ばかりです。「知っている人がいるかな」と思ったけれど、みんな引退してしまった。「これが世代交代なのだな」と思いました。そして、帰ってきたら日本では「派閥解消」が言われていた。少し違うのではないかとも思います。こんなときこそ、日本の内政が安定しないとね。
飯田)きょう(1月26日)の紙面の一部に、「国会で議論すべきだった能動的サイバー防御などが完全に棚上げになってしまった」と指摘する記事がありました。この準備ができている米軍と、我が方との……。
宮家)気持ちはわかります。ただ、英語には“All politics is local(すべての政治はローカルだ)”という言葉があります。確かに国会でしっかりとした安全保障の議論をする必要はある。でも“All politics is local”だから、みんなローカルなことを話すのです。これは世界中、同じですね。
飯田)アメリカもこれから大統領選でローカルになってくる。
宮家)超ローカルですよ。みんなニューハンプシャーでの予備選のことばかり考えているのだから。
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