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なぜ同性愛者の私が僧侶の修行を受けたのか メイクアップアーティスト・僧侶 西村宏堂

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年1月31日 11時20分

なぜ同性愛者の私が僧侶の修行を受けたのか メイクアップアーティスト・僧侶 西村宏堂

黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(1月24日放送)にメイクアップアーティストで僧侶の西村宏堂が出演。LGBTQ+(プラス)として生きていくことについて語った。

西村宏堂

西村宏堂

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。1月22日(月)~1月26日(金)のゲストはメイクアップアーティストで僧侶の西村宏堂。3日目は、僧侶の修行を受けるまでの経緯について—

黒木)同性愛者という、どちらかと言えばネガティブに捉えられがちなことと、僧侶というポジティブに捉えられることのアンバランスさで多くの方に伝えたいことがあるのですよね?

西村)僧侶は「ご住職」、その子どもである私は「ご子息」と呼ばれて育ちました。一方で、同性愛者の人は差別的に呼ばれることもあります。「その2つのアイデンティティが一緒になったらどうなるのだろう」と、社会の偏見を試すようなことをやってみたいなと思ったのです。

黒木)僧侶と同性愛者という。

西村)お寺に生まれて、同性愛者であるということは、選んだことではありませんが、お坊さんたちは「お坊さん」と呼ばれて崇められ、雲の上の人というように扱われる。それを必ずしも安らかな気持ちで思っているわけではないのです。「お坊さんらしくしなければいけない」というストレスを感じるのを私は見てきたし、同性愛者の人たちは、ありのまま自分たちのよさを見て貰えず、ストレスを感じているところもあると思います。

黒木)どちらもストレスを感じている。

西村)肩書きやセクシャリティではなく、心のなかを見て欲しいという気持ちがあります。私は僧侶と同性愛者という立場をミックスして、自分が同性愛者であるのを悩んでいたことや、みんなが尊重される大切さを話したいと思うようになりました。

黒木)浄土宗に入るときも、最初はあまり好きではなかったけれど、「知りもしないのに嫌いになるのはおかしいでしょう?」とお母さまに言われたと聞きました。

西村)私はディズニープリンセスが大好きだったので、髪を長く靡かせていたかったのですが、髪の毛を剃らないと修行に入れないのでハードルが高かったのです。私の母はピアニストなのですが、作曲の勉強をしていたときに、もし「モーツァルトの曲が嫌いだ」と思ったらモーツァルトの作曲法を勉強し、ピアノを弾いてみる。いろいろな作曲を勉強して、初めて「モーツァルトのここが好きではない」と感じたのであれば意味のある批判だけれど、少し聴いただけで「嫌だ」というのは意味のない意見なのだと言われました。それが偏見や差別につながる。きちんと知らずに「多分こうなんだろう」とみなしてしまう。

黒木)そうですね。

西村宏堂

西村宏堂

西村)私も仏教に対して同じことをしていたのかな、と思いました。だから「どんな修行で、どんなことを勉強できるのだろう」と、スパイのような気持ちで「見てみよう」と思いました。

黒木)とにかく学んでみようと。

西村)学んでみていちばん嬉しかったことは、私は「同性愛者である」ということで悩んでいたけれど、浄土宗では「月の光が町全体を照らして、眺める人みんながその美しさを味わえるのと同じように、仏教ではみんなが同じように救われる。どんな人も、どんなことをした人も」という教えでした。いちばん悩んでいたところを励ましてくれた教えだったので、「行ってみてよかったな」と、あとで思いました。

黒木)「赤い花は赤く光り、青い花は青く光る。みんなそれぞれでいい」ともおっしゃっていますよね。

西村)「極楽には蓮の花が咲いている池があって、赤い蓮の花は赤く輝き、青い蓮の花は青く輝く。いろいろな色の花がそれぞれの色で輝くということは、それぞれの人がそれぞれの色で輝く。それが美しいのだ、と仏教は言っているのですよ」と先生に教えてもらって、とても励まされました。

黒木)生きていく上でのバイブルのようなものでしょうか?

西村)そうですね。2500年くらい歴史のある教えなので、説得力があるのです。日本だと「男性はこういうもので、女性はこうあるべき」と考えるのが楽だから、みんなそう思っているのかも知れませんが、「個々が生き生きすることが社会にとってもよい」ということを伝えていきたいと思います。

西村宏堂

西村宏堂

西村宏堂(にしむら・こうどう)/メイクアップアーティスト・僧侶

■1989年・東京生まれ。実家は都内にある浄土宗寺院。
■ニューヨークのパーソンズ美術大学を卒業後、ミス・ユニバース世界大会などで各国代表のメイクを行うなど、メイクアップアーティストとして活動。ハリウッド女優やモデルも担当し、世界的な活躍を続ける。※日本での美容師免許は取得していない。
■2015年、僧侶として修業し、浄土宗の認定を受ける。
■LGBTQ+の当事者でもあり、自分の経験を活かし、ニューヨーク国連本部やイェール大学で講演。啓発のためのメイクアップセミナーを行うなど幅広く活動。NHKや英BBCでも紹介されるなど、国内外から注目を集めている。2021年にはアメリカの雑誌『TIME』で「次世代リーダー」21人に選出された。
■2022年末には「紅白歌合戦」の審査員として出演し、話題を集めた。
■2023年9月号の『VOGUE JAPAN』で、コロンビア人の男性とパートナーシップを結んだことを発表。

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